都立看護専門学校 ダメ小論文の例2:R8年度過去問イ「成長するために必要なこと」都立看護 社会人入試

【都立看護専門学校 小論文ダメな例②】去年の「成長するために必要なこと」で落とし穴だらけの答案を書いてみた
都立看護専門学校の社会人入試では、令和8年度に次の小論文が出題されました。
「都立看護専門学校では、社会のニーズに即した看護の役割を果たすために発展させたい力の一つとして『成長する力』を掲げています。『成長するために必要なこと』について、経験を踏まえたあなたの考えを1,200字程度で述べなさい。」
2025年9月28日に実施された社会人入試の実際の問題です。
一見すると、ものすごく書きやすそうです。
「自分が成長した経験を書けばいいんでしょ?」
こう思った人。
ただのBakaです。
この問題は「あなたが成長した経験について述べなさい」ではありません。
聞かれているのは、
「成長するために必要なことは何か」
です。
経験は答えそのものではありません。自分の主張が正しいことを説明するための材料です。
ここを間違えると、1,200字しっかり埋めても幼稚園生の「体験作文」(笑)で終わります。
では、実際にありがちなダメ答案を書いてみます。
❌ダメな例
私は、成長するためには努力を続けることや失敗を恐れず挑戦すること、周囲の人の意見を聞くことが大切だと考える。人は一人では成長することができず、様々な経験をすることで成長していくからである。私自身もこれまで様々な経験を通して成長してきた。
私は高校時代、バスケットボール部に所属していた。入部したばかりの頃は経験者との差が大きく、なかなか試合に出ることができなかった。しかし、試合に出たいと思い、毎日練習を続けた。部活動が終わった後にも自主練習を行い、シュートやドリブルの練習を繰り返した。また、先輩や顧問の先生にも自分に足りないところを聞き、アドバイスしてもらった。その結果、二年生になる頃には試合に出られるようになった。この経験から、努力を続ければ結果につながることを学んだ。
また、私は社会人になってから仕事で失敗した経験がある。入職したばかりの頃、仕事の内容を十分に理解しておらず、上司から注意を受けた。その時は落ち込んだが、このままではいけないと思い、分からないことがあれば周囲に質問するようにした。また、同じ失敗を繰り返さないよう、メモを取ることも心掛けた。その結果、少しずつ仕事にも慣れ、周囲から仕事を任せてもらえるようになった。この経験によって、失敗を恐れずに挑戦することも成長するためには必要だと考えた。
そして、成長するためには周囲とのコミュニケーションも重要である。自分一人だけでは分からないことも、他人の意見を聞くことで新しいことに気付くことができる。仕事でも、周囲の人と協力することで多くのことを学ぶことができた。そのため、人との関わりを大切にすることも成長につながると考える。
このように、私は様々な経験を通して成長することができた。努力をすること、失敗を恐れず挑戦すること、周囲の意見を聞くことは、どれも成長するためには大切だと考える。看護学校へ入学した後も様々な困難があると思うが、努力を続け、周囲と協力しながら乗り越えていきたい。そして、患者に寄り添い、信頼される看護師へ成長していきたい。
これ、何がダメなのか?
「いや、普通に書けてない?」
と思った人ほど注意してください。
文法が完全に崩壊している答案ではありません。だがしかし、私のようなプロが見るとこうなる。
❌1 最初から答えを三つも四つも出している
冒頭で、
「努力を続ける」
「失敗を恐れず挑戦する」
「周囲の人の意見を聞く」
と三つの答えを並べています。
さらに後半では「コミュニケーション」まで登場します。
1,200字しかない答案で論点を増やせば、一つひとつの説明は当然薄くなる。
❌2 「成長した経験」を書くことが目的になっている
ここが最大の問題だ。
この設問は、
「あなたが成長した経験を述べなさい」
ではない。
「成長するために必要なこと」について聞いている。
ところが、この答案の大部分は、
部活動を頑張った。
↓
試合に出られた。
仕事で失敗した。
↓
仕事を任せてもらえるようになった。
という経験の報告になっています。
重要なのは経験そのものではありません。
例えば「自分に不足している点を把握し、それに応じて行動を修正することが成長には必要である」と主張するのであれば、部活動の経験はその主張を証明するために使います。
経験が主役ではありません。
主張が主役です。
❌3 「努力すれば結果につながる」で終わっている
これは「成長」の説明になっているでしょうか。
努力した。
↓
試合に出られた。
これは成果です。
しかし、「試合に出られた=成長した」とは限りません。
何が以前と変わったのか。
技術なのか。
自分の課題を把握する力なのか。
他者の助言を行動へ反映する力なのか。
ここまで掘らなければ、「成長するために必要なこと」の説明にはなりません。
❌4 具体例と段落の主張がズレている
二つ目の経験では、
「失敗を恐れずに挑戦することも成長するためには必要だ」
と結論付けています。
しかし、書かれている内容は、
仕事で失敗した。
↓
分からないことを質問した。
↓
メモを取った。
↓
同じ失敗を防いだ。
です。
これ、何かに「挑戦」していますか?
むしろ具体例が証明しているのは、
「失敗した原因を振り返り、行動を修正すること」
ではないでしょうか。
具体例から証明できない主張を後から付け足してはいけません。
❌5 突然「コミュニケーション」が生えてくる
二つの経験を書いた後、突然、
「そして、成長するためには周囲とのコミュニケーションも重要である。」
と第三の論点が始まります。
しかも、その後には具体的な経験がほとんどありません。
なぜここで新しい論点を増やすのでしょうか。
1200字を埋めるために新しい話を足しているように見えます。
小論文は、話題を増やせば充実するわけではありません。
むしろ一つの論点を最後まで掘り下げた方が、論理は強くなります。
❌6 「考える」が多い
冒頭から、
「大切だと考える」
途中でも、
「必要だと考えた」
さらに、
「成長につながると考える」
と続いています。
「私は○○だと考える」と書かなくても、自分の答案なのだから、書かれている内容が自分の主張です。
「私は努力が必要だと考える」
ではなく、
「成長するためには、課題を把握して行動を修正することが必要である。」
と内容そのものを書けばよいのです。
❌7 「様々」が便利ワードになっている
「様々な経験」
「様々な経験を通して」
「様々な困難」
具体的に何なのかが分かりません。
抽象語を置けば文章らしく見えます。
しかし、採点者が知りたいのは中身です。
❌8 結論で突然「患者に寄り添う看護師」が登場する
最後に、
「患者に寄り添い、信頼される看護師へ成長していきたい。」
とあります。
看護学校の試験だから、とにかく最後は看護師につなげればよい。
これは危険です。
本文では「患者に寄り添うこと」も「信頼」も一度も論じていません。
結論で突然出てきた言葉です。
設問は「どのような看護師になりたいか」ではありません。
「成長するために必要なこと」です。
最後までその問いに答えればよいのです。
この問題で本当にやるべきこと
最初に、
「自分にとって成長とは何か」
を整理します。
そのうえで、
「その成長のために何が必要なのか」
を二つ程度に絞ります。
例えば、
「自分の課題を把握すること」
「振り返った内容を次の行動へ反映すること」
と決めたのであれば、経験もこの二つを証明する材料として選びます。
経験を書いてから、
「この経験から努力の大切さを学びました」
と後付けするのではありません。
順番は逆です。
主張を決める。
↓
その主張を証明できる経験を選ぶ。
↓
経験によって何が変化したのかを書く。
↓
最後にもう一度「成長するために必要なこと」へ戻す。
これが小論文です。
「経験を踏まえて」と書いてあるから、経験をたくさん書けばよいわけではありません。
都立看護専門学校の社会人入試で求められている1,200字は、あなたの人生を1,200字で紹介するためのスペースではありません。
「私はこう考える。なぜなら、この経験からこう説明できる」
これを論理的に証明するための1,200字です。
しかし、この例はそれ以前の基礎ルールが全くダメダメな小論文です。
