遠賀中央看護助産学校 助産学科|過去問再現50問+予想問題100問/解説講義付き/4万字

遠賀中央看護助産学校の助産学科を受験する方からよく聞かれるのが、「看護学は何を勉強すればいいですか?」という質問です。
助産学校なのだから母性看護学を中心に勉強すればよいのか、それとも看護師国家試験の問題集を一通り解いた方がよいのか。実際、この判断はかなり難しいと思います。
結論から言えば、遠賀中央看護助産学校の看護学を単純な「看護師国家試験の縮小版」と考えるのは危険です。もちろん看護師として知っておくべき基礎的な内容は必要ですが、実際の受験者から残してもらった出題記録を整理してみると、この学校にはかなり特徴があります。
今回、その出題記録をもとに問題を再構成し、日本産科婦人科学会、厚生労働省、こども家庭庁、WHO、JRCなどの一次情報と照合しながら確認していきました。その結果、市販の問題集をただ大量に解くだけでは、遠賀中央対策としては効率が悪いと感じています。
遠賀中央の「看護学」は母性だけではない
助産学科を受験するとなると、どうしても母性看護学へ意識が向きます。もちろん母性は重要ですし、重点的に勉強する必要があります。
ただし、「母性をやっておけば大丈夫」という考え方はおすすめできません。
遠賀中央看護助産学校の助産学科では看護学が試験科目となっており、これまでの募集情報では基礎看護学、母性看護学、小児看護学を含む形で示されています。
つまり、妊娠や分娩だけを勉強すればよい試験ではありません。新生児、小児、感染管理、医療安全、救命処置など、看護師として身につけているはずの基礎的な知識も必要になります。
一方で、すべての領域を同じ比率で勉強するのも効率的ではありません。ここが遠賀中央の対策を難しくしているところです。
過去の出題を見ると、生理学の理解がかなり重要
今回、実際に受験した方から残してもらった記録を見ていて最も気になったのは、生理学的な仕組みを理解しているかを確認する問題が多く含まれていることでした。
単純に「このホルモンの名称は何か」と答えるだけではありません。そのホルモンがどこから分泌され、何に作用し、その結果として身体にどのような変化が起こるのかまで理解していなければ、出題形式を少し変えられただけで対応できなくなります。
また、胎児期と出生後では循環の仕組みそのものが変化します。胎児期に存在していた特殊な循環経路が、出生して呼吸を開始することによってどのように変化するのか。こうした内容も、名称だけを丸暗記するより、その理由まで理解しておいた方が圧倒的に強いです。
助産師を目指す受験生にとっては当然ともいえる内容ですが、看護師国家試験の過去問を一問一答の感覚で解いているだけでは、この部分が意外と弱い受験生もいます。
今回の「再現50問」は、実際の問題を丸写ししたものではありません
ここは誤解のないようにしておきます。
遠賀中央看護助産学校が50問分の過去問を公式に公開しているわけではありません。今回使用しているのは、実際に受験した方が試験後に残してくれた出題記録です。
そのため、「本番で出題された文章を一字一句そのまま50問掲載している」というものではありません。
問題形式や語群までかなり詳しく残っているものについては、できるだけ当日の問題構造に近づけています。一方、「この分野が出た」「この用語が聞かれた」という記録だけが残っているものについては、その情報から逸脱しない範囲で問題として再構成しました。
ネット上で見つけた断片的な情報へ適当に四択を付けているわけではありません。再構成した問題についても、現在の一次情報と照らし合わせながら、正答と解説を確認しています。
なお、問題数を50にすることよりも、50問を終えたときに受験生が何を理解できているかを重視しました。
さらに遠賀中央専用の予想問題を100問作成
再現・周辺再構成問題50問に加えて、今回は専用の予想問題を100問作成しました。
ただし、この100問も再現問題を少し変えただけのものではありません。
実際の出題記録から過去の出題から学校が好みそうな知識の聞き方を考え、その周辺へ範囲を広げています。さらに、看護学として求められる範囲を考え、母性だけに偏らないよう小児看護学や基礎看護学まで含めました。
最終的には、再現・周辺再構成問題50問と専用予想問題100問の合計150問です。
この150問で看護師国家試験の全範囲を網羅しようとしているわけではありません。むしろ逆で、遠賀中央の入試対策として優先順位が低い内容まで何問も解くことを避けるために作っています。
看護師国家試験の問題集を全部やればよい、とは考えていません
試験範囲が広いと聞くと、「では看護師国家試験の問題集を最初から最後まで全部やればいい」と考える方もいると思います。
時間に余裕があり、すでに母性や小児の対策が十分できているのであれば、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、助産学校の入試まで残された時間が限られている中で、成人看護、老年看護、精神看護、在宅看護などの細かな疾患まで何千問も解いていくのが最も効率的かといえば、私はそうは考えていません。
まず実際に出題された分野を確認する。そこから関連する知識を広げる。そのうえで、基礎看護学や小児看護学など試験範囲として落とせないところを補う。この順番で対策した方が、遠賀中央に限っていえば効率はよいと考えています。
解説は正答だけを書く形にはしてはいけない
今回の150問では、「正答は2です。○○だからです」で終わる解説にはしていません。
例えばホルモンの問題であれば、その名称だけでなく、どこから分泌されるのか、何が刺激となるのか、どの組織へ作用するのか、妊娠や産褥によってどう変化するのかまで確認できるようにしています。
胎児循環の問題であれば、血管の名前を覚えるだけではなく、なぜ胎児期にはその経路が必要なのか、出生して肺呼吸が始まると何が変化するのかまで説明しています。
一問を解いたことで、その周辺にある知識まで一緒に確認できるようにしたかったからです。
うちの助産師学科対策コースではこれを「リーズニング」と呼んでいます。
入試本番で全く同じ文章が出ることはまずありません。同じ内容でも○×から四択へ変わったり、穴埋めになったり、短い記述になったりします。そのため、正答番号だけを覚える勉強では対応できません。
2027年度入試なので、古い基準のままにはしていません
医療系の受験対策では、ここもかなり重要です。
一度出版された看護師国家試験対策本や過去問題集は、そのまま数年間使われることがあります。しかし、診療ガイドラインや検査時期、予防接種、蘇生、新生児管理などは都度更新されます。
今回の150問を作成する際にも、古い教材に掲載されている内容と現在の基準が異なるものがありました。そのため、数字や診断基準を含む問題については、できる限り現在の日本産科婦人科学会、厚生労働省、こども家庭庁、WHO、JRCなどの一次情報まで戻って確認しています。
最新の入試を受験するのであれば、数年前の問題集に書かれている数字をそのまま覚えるのではなく、現在どの基準が使われているのかを確認しておいた方が安全です。最重要です。
150問は「答えを覚えるための問題集」にするな
この問題集を使う場合、正解できたかどうかだけを確認するのはもったいないです。
例えばホルモンの問題に正解したら、そのホルモンがどこから分泌されるのか、何に作用するのか、反対に働くホルモンは何かまで説明できるか確認してください。
胎児循環の問題であれば、血液がどこからどこへ流れるのかを頭の中で説明できるか。出生すると何が変化し、なぜその循環路が閉鎖するのかまで説明できるか。この確認をするだけで、同じ150問でも得られる知識量は大きく変わります。
遠賀中央の過去の出題記録を見る限り、単語そのものを知っている受験生よりも、その前後まで理解している受験生の方が対応しやすい試験だと考えています。
この先の有料部分について
ここから先では、遠賀中央看護助産学校の助産学科対策として作成した「再現・周辺再構成問題50問」と「専用予想問題100問」を掲載しています。
合計150問です。
再現問題については、受験者から残してもらった出題記録をもとに、情報が詳しく残っているものは可能な限り元の構造に近づけ、論点だけが残っているものは現在の一次情報を確認しながら問題として再構成しました。
予想問題については、過去に出た内容の言い換えだけで100問を作るのではなく、実際の出題から次に問われてもおかしくない領域へ広げています。また、母性看護学だけでなく、小児看護学、基礎看護学についても落とせない内容を入れています。
遠賀中央の看護学について「結局どこまで勉強すればいいのか分からない」という方は、まず150問を一通り解いてください。
そのうえで、正解した問題についても解説の内容を自分の言葉で説明できるかを確認してみてください。そこまでできれば、単純な丸暗記から一段上の状態で本番に臨めます!
遠賀中央看護助産学校 助産学科
専用予想問題1〜25
第1回 生殖内分泌・母乳分泌・胎児新生児循環
【○×問題】
問題1 原発性無月経
日本産科婦人科学会では、満18歳を過ぎても初経が発来しないものを原発性無月経と定義している。
○か×か。
解説講義 正答:○
日本産科婦人科学会では、満18歳を過ぎても初経が起こらないものを原発性無月経としている。ただし、実際の診療では18歳になるまで何もしないという意味ではない。乳房発育など第二次性徴の状態によっては、もっと早い段階から精査を開始する。
遠賀中央対策では「原発性無月経」という単語だけでは不十分で、初経が一度もない=原発性、以前は月経があった=続発性まで区別する。
問題2 続発性無月経
これまで月経があった女性で、月経が2か月停止した場合を続発性無月経という。
○か×か。
解説講義 正答:×
続発性無月経は、これまであった月経が3か月以上停止した状態である。したがって「2か月」は誤り。
ここは数字問題として非常に作りやすい。
原発性無月経 → 初経そのものがない
続発性無月経 → あった月経が3か月以上停止
この対比で覚える。
問題3 更年期
更年期とは、閉経後の5年間だけを指す。
○か×か。
解説講義 正答:×
更年期とは、閉経前5年間+閉経後5年間の合計10年間を指す。
つまり「閉経した瞬間から更年期になる」のではない。卵巣機能が低下し始める閉経前からホルモン環境が大きく変化する。
今回の過去問記録に「更年期女性」がある以上、この定義そのものは十分予想できる。
問題4 閉経
日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後であり、12か月以上月経がないことを確認してから、最後の月経を振り返って閉経と診断する。
○か×か。
解説講義 正答:○
日本産科婦人科学会では、日本人女性の平均閉経年齢を50歳前後としている。また閉経は「今日から閉経」とその日に診断するものではなく、月経が1年以上来ないことを確認した後、最後の月経時点を閉経と判断する。
この「後から振り返って診断する」というところが重要。
問題5 閉経とゴナドトロピン
卵巣機能が低下してエストロゲンが低下すると、FSHなどのゴナドトロピンは上昇する。
○か×か。
解説講義 正答:○
これが「高ゴナドトロピン」の本質。
卵巣機能低下
↓
エストロゲン低下
↓
視床下部・下垂体への負のフィードバックが弱くなる
↓
FSH・LHが上昇
つまり、
高FSH+低エストロゲン → 卵巣機能低下を考える
という流れで覚える。JSOGガイドラインでも、高ゴナドトロピン・低エストロゲンでは卵巣機能低下を考えるとしている。
問題6 月経困難症
子宮内膜症などの器質的疾患によって生じる月経困難症を、機能性〈原発性〉月経困難症という。
○か×か。
解説講義 正答:×
逆である。
機能性月経困難症
→ 明らかな器質的疾患がない。
器質性月経困難症
→ 子宮内膜症、子宮腺筋症などの疾患が背景にある。
機能性月経困難症では、子宮内膜で産生されるプロスタグランジンなどが関与して子宮収縮が強くなり、月経痛を生じる。
問題7 排卵
排卵を直接引き起こす主要なホルモン変化はFSHサージである。
○か×か。
解説講義 正答:×
排卵直前に起こるのはLHサージである。
FSH
→ 主として卵胞の発育を促す。
LH
→ 急激な上昇〈LHサージ〉によって排卵を誘発し、その後の黄体形成にも関係する。
JSOGも不妊症検査の説明で、FSHを卵胞発育、LHを排卵に関係するホルモンとして整理している。
問題8 黄体期
排卵後の黄体期にはプロゲステロン分泌が増加し、基礎体温は高温相となる。
○か×か。
解説講義 正答:○
排卵後、破裂した卵胞は黄体となり、プロゲステロン分泌が増える。
プロゲステロンには体温上昇作用があるため、
卵胞期 → 低温相
排卵
黄体期 → 高温相
という二相性を示す。
遠賀中央なら「プロゲステロン」という単語だけではなく、黄体→プロゲステロン→高温相までつなげておく。JSOGも月経周期とホルモン評価、基礎体温を一連の生殖内分泌評価として位置づけている。
問題9 高プロラクチン血症
プロラクチンが病的に高値となると、排卵障害や無月経を生じることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
プロラクチンが過剰になると生殖内分泌系が抑制され、排卵障害を起こすことがある。そのため無月経の評価ではPRLも測定する。
JSOGでも無月経の評価項目として、FSH、LH、E2だけでなくPRL、TSHなどを測定することを示している。高PRLを治療すると排卵周期が回復する例もある。
問題10 閉経と生活習慣病
閉経後は脂質異常症や心血管疾患のリスクが低下する。
○か×か。
解説講義 正答:×
逆である。
卵巣機能低下・閉経に伴ってエストロゲン作用が低下すると、脂質代謝などにも変化が起こり、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの心血管リスクを評価する重要性が高くなる。
【選択・穴埋め問題】
問題11 視床下部―下垂体―卵巣系
月経周期を調節する経路として正しいのはどれか。
1.卵巣 → GnRH → 視床下部 → FSH・LH
2.視床下部 → GnRH → 下垂体前葉 → FSH・LH → 卵巣
3.下垂体後葉 → GnRH → 卵巣 → FSH
4.卵巣 → FSH → 視床下部 → LH
解説講義 正答2
まずここを一本の線にする。
視床下部
↓ GnRH
下垂体前葉
↓ FSH・LH
卵巣
↓ エストロゲン・プロゲステロン
子宮内膜
遠賀中央の過去問を見ると、このような「ホルモン名だけではなく、どこから出てどこへ作用するか」が非常に重要。JSOGでも「視床下部―下垂体―卵巣系―子宮内膜変化の関連」は生殖内分泌の基本事項として明示されている。
問題12 排卵
成熟卵胞からの排卵を誘発する直接的なきっかけはどれか。
1.プロラクチン低下
2.プロゲステロン低下
3.オキシトシン上昇
4.LHサージ
解説講義 正答4
正答はLHサージ。
卵胞が発育
↓
エストロゲン上昇
↓
一定以上の高値が持続
↓
LHが急上昇
↓
排卵
という流れ。
「FSH=卵胞」「LH=排卵」と丸暗記して終わらず、前後関係まで理解しておく。
問題13 プロラクチン
母乳産生に直接関与するホルモンと主な分泌部位の組合せで正しいのはどれか。
1.プロラクチン ― 下垂体前葉
2.プロラクチン ― 下垂体後葉
3.オキシトシン ― 下垂体前葉
4.エストロゲン ― 下垂体前葉
解説講義 正答1
プロラクチン=乳汁を作る。
乳頭・乳輪への吸啜刺激
↓
神経刺激が脳へ
↓
下垂体前葉からプロラクチン
↓
乳腺胞で次の授乳に向けた乳汁産生
WHOも「prolactin=milk production」と明記している。
問題14 オキシトシン
授乳時の射乳反射について正しいのはどれか。
1.プロラクチンが乳腺の筋上皮細胞を収縮させる。
2.オキシトシンは下垂体前葉から分泌される。
3.オキシトシンによって筋上皮細胞が収縮し、乳汁が押し出される。
4.エストロゲンが乳汁を乳管へ押し出す。
解説講義 正答3
ここは母乳問題の最重要対比。
プロラクチン=作る
オキシトシン=出す
オキシトシンは下垂体後葉から血中へ放出され、乳腺胞周囲の筋上皮細胞を収縮させて射乳を起こす。また子宮も収縮させるため、授乳時に後陣痛が強くなることがある。
問題15 分娩後の乳汁分泌
胎盤娩出後に母乳分泌量が増加していく機序として最も適切なのはどれか。
1.プロラクチンが完全に消失する。
2.エストロゲンとプロゲステロンが急速に低下し、プロラクチンの乳汁産生作用が発揮されやすくなる。
3.FSHが著明に増加するためである。
4.胎盤からオキシトシン分泌が増えるためである。
解説講義 正答2
妊娠中もプロラクチンは高い。しかし胎盤から大量に分泌されるエストロゲン・プロゲステロンの影響によって、本格的な乳汁分泌は抑えられている。
胎盤娩出
↓
エストロゲン・プロゲステロン急低下
↓
プロラクチン作用が前面に出る
↓
乳汁分泌増加
ここまで説明できると、記述問題にも対応できる。
問題16 胎児循環
胎児循環の中で最も酸素化された血液を胎盤から胎児へ運ぶのはどれか。
1.肺動脈
2.臍帯動脈
3.動脈管
4.臍帯静脈
解説講義 正答4
胎児では肺ではなく胎盤でガス交換を行う。
胎盤
↓
臍帯静脈
↓
胎児
したがって、臍帯静脈血の方が臍帯動脈血より酸素分圧が高い。
「静脈=酸素が少ない」という成人循環の感覚を胎児循環へそのまま持ち込むと間違える。厚労省の助産師国家試験でも繰り返し問われている。
問題17 出生直後の肺循環
出生して肺呼吸が開始した直後に起こる変化として正しいのはどれか。
1.肺血管抵抗が低下し、肺血流量が増加する。
2.肺血管抵抗が上昇し、肺血流量が減少する。
3.卵円孔を通る右左シャントが増加する。
4.胎盤血流が増加する。
解説講義 正答1
胎児では肺胞が液体で満たされ、肺血管抵抗が高いため肺血流は少ない。
出生
↓
第一呼吸・肺胞拡張
↓
肺血管抵抗低下
↓
肺血流増加
↓
左房へ戻る血液増加
ここから卵円孔閉鎖につながる。厚労省の国家試験でも「出生後、肺血管抵抗は低下する」が基本となっている。
問題18 卵円孔
出生後に卵円孔が機能的に閉鎖する主な機序はどれか。
1.右房圧が左房圧より高くなる。
2.肺血流量が減少する。
3.左房圧が右房圧を上回る。
4.胎盤血流が増加する。
解説講義 正答3
出生後、
肺血管抵抗↓
→ 肺血流↑
→ 肺静脈から左房へ戻る血液↑
→ 左房圧↑
一方、臍帯が遮断されることで右房へ戻る胎盤由来血液は減少する。
結果、
左房圧 > 右房圧
となり、卵円孔弁が押しつけられて機能的に閉鎖する。
問題19 動脈管
出生後の動脈管閉鎖を促す重要な変化はどれか。
1.PaO₂の低下
2.PaO₂の上昇
3.肺血流量の低下
4.胎盤循環の増加
解説講義 正答2
出生して肺呼吸が始まると動脈血酸素分圧〈PaO₂〉が上昇する。この酸素分圧上昇が動脈管収縮を促す重要な刺激となる。
厚労省国家試験でも、
「動脈管は出生後、血中酸素分圧の上昇に反応して収縮する」
という内容が直接問われている。
【記述問題】
問題20 母乳分泌のメカニズム
次の語句をすべて用いて、母乳分泌のメカニズムを説明しなさい。
「乳頭刺激、視床下部、下垂体前葉、下垂体後葉、プロラクチン、オキシトシン、乳汁産生、射乳」
解答例
児の吸啜による乳頭刺激は神経を介して視床下部へ伝わる。その結果、下垂体前葉からプロラクチンが分泌され、乳腺で乳汁産生が促進される。同時に下垂体後葉からオキシトシンが放出され、乳腺胞周囲の筋上皮細胞が収縮して射乳が起こる。
解説講義
この学校なら、ここを「プロラクチン」「オキシトシン」の二語だけ書かせるのではなく、
刺激→中枢→下垂体→ホルモン→乳房での作用
まで書かせる可能性を想定したい。
最重要対比は、
前葉=プロラクチン=産生
後葉=オキシトシン=射乳
である。WHOの乳房生理資料でも同じ経路が示されている。
問題21 胎児循環から新生児循環への変化
出生後、胎児循環から新生児循環へ移行する機序を、「肺血管抵抗」「肺血流」「左房圧」「卵円孔」「PaO₂」「動脈管」の語句を用いて説明しなさい。
解答例
出生して呼吸が開始すると肺血管抵抗が低下し、肺血流が増加する。肺静脈から左房へ戻る血液が増えて左房圧が右房圧を上回り、卵円孔が機能的に閉鎖する。また、肺呼吸によるPaO₂上昇は動脈管を収縮させ、胎児循環から新生児循環へ移行する。
解説講義
これも丸暗記ではなく、因果関係の順序が重要。
第一呼吸
↓
肺血管抵抗↓
↓
肺血流↑
↓
左房圧↑
↓
卵円孔閉鎖
さらに、
PaO₂↑
↓
動脈管収縮
となる。
厚労省の国家試験でも、この因果関係そのものが問われている。
問題22 閉経と高ゴナドトロピン
閉経に近づくとFSHが上昇する理由を説明しなさい。
解答例
加齢に伴って卵巣機能が低下するとエストロゲン分泌が低下する。その結果、視床下部・下垂体に対する負のフィードバックが弱まり、下垂体からのFSH分泌が増加するため、高ゴナドトロピン状態となる。
解説講義
ここは非常に遠賀中央らしい予想。
覚え方は、
卵巣が働かない
→ E2が作れない
→ 下垂体がもっと卵巣を刺激しようとする
→ FSHが上がる
と考えるとよい。
だから、
低FSH+低E2
→ 視床下部・下垂体系を考える。
高FSH+低E2
→ 卵巣機能低下を考える。
この区別までできれば強い。
問題23 思春期の続発性無月経
17歳。過度なダイエットによって半年間で10kg体重が減少し、その後月経が停止した。無月経となる機序を説明しなさい。
解答例
過度な体重減少やエネルギー不足によって視床下部機能が抑制されると、GnRH分泌が低下する。その結果、下垂体からのFSH・LH分泌が低下し、卵胞発育や排卵が障害され、エストロゲンも低下して無月経となる。
解説講義
これも遠賀中央でかなり狙いやすい。
体重減少
↓
視床下部
↓ GnRH
FSH・LH低下
↓
卵巣刺激低下
↓
E2低下
↓
排卵停止・無月経
JSOGガイドラインでも、摂食障害・過剰運動・ストレスなどによる排卵障害ではE2低値、LH・FSH低値となる群が示されている。
問題24 月経困難症
機能性〈原発性〉月経困難症と器質性〈続発性〉月経困難症の違いを説明しなさい。
解答例
機能性月経困難症は子宮内膜症などの明らかな器質的疾患を認めず、プロスタグランジンなどによる子宮収縮亢進が疼痛に関与する。一方、器質性月経困難症は子宮内膜症や子宮腺筋症などの疾患を原因として生じる月経困難症である。
解説講義
「月経痛が強い=全部同じ」ではない。
特に、
若い頃から月経開始とともに痛む → 機能性を考える
一方で、
以前より月経痛が増悪している、性交痛・排便痛・慢性骨盤痛などを伴う
なら子宮内膜症など器質性疾患も考える。
JSOGによれば子宮内膜症では月経痛だけでなく、慢性骨盤痛・性交痛・排便痛、不妊なども問題となる。
問題25 子宮体がんと女性ホルモン
子宮体がんの発生とエストロゲン・プロゲステロンとの関係を説明しなさい。
解答例
エストロゲンには子宮内膜細胞を増殖させる作用があり、プロゲステロンにはその増殖を抑制する作用がある。両者のバランスが崩れ、プロゲステロンによる抑制を伴わないエストロゲン作用が長期間続くと、子宮内膜増殖症を経て子宮体がんの発生リスクが高まる。
解説講義
今回の過去問記録に「子宮体がん」が入っているので、単に好発年齢を聞くだけでなく、なぜ女性ホルモンと関係するのかまで広げておきたい。
JSOGは、
エストロゲン
→ 子宮内膜細胞の増殖
プロゲステロン
→ 内膜増殖を抑制
と説明している。
また子宮体がんで最も多い自覚症状は不正性器出血であり、更年期・閉経後の出血は特に注意が必要である。
女性のライフサイクル・生殖内分泌】
問題26 平均閉経年齢
日本人女性の平均閉経年齢は、およそ50歳である。
○か×か。
解説講義 正答:○
日本産科婦人科学会では、日本人女性の平均閉経年齢を50歳前後としている。ただし個人差が大きく、40歳代前半で閉経する女性もいれば、50歳代後半まで月経が続く女性もいる。
問題3では「閉経をどう診断するか」を扱ったが、ここでは閉経する年齢を問う。
したがって、
平均閉経年齢=50歳前後
閉経の診断=1年以上月経がないことを確認
を混同しないことが重要である。
問題27 更年期障害
更年期障害では、ほてり、のぼせ、発汗などの血管運動神経症状を認めることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
更年期障害の原因には、卵巣機能低下に伴うエストロゲンの大きな変動と低下が関係している。
日本産科婦人科学会は更年期症状を大きく、
ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗などの血管運動神経症状、めまい・動悸・頭痛・関節痛などの身体症状、気分の落ち込み・イライラ・不眠などの精神症状
に分類している。
問題7では「更年期の定義」を聞いた。こちらでは更年期に何が起こるのかを問っているため、知識は重複していない。
問題28 更年期障害とHRT
子宮を有する女性にホルモン補充療法〈HRT〉を行う場合、一般にエストロゲンだけではなく黄体ホルモンを併用する。
○か×か。
解説講義 正答:○
これはエストロゲンと子宮内膜の作用を臨床へつなげる問題。エストロゲンには子宮内膜を増殖させる作用がある。そのため、子宮を有する女性へエストロゲンだけを長期間投与すると、子宮内膜増殖症や子宮内膜がんのリスクが問題になる。
そこで通常は、
エストロゲン+黄体ホルモン
を使用し、子宮内膜への影響を抑える。
一方、子宮摘出後で子宮内膜が存在しない女性では、黄体ホルモンを併用する必要はない。これはJSOGの一般向け現行解説にも明記されている。
問題29 閉経後の骨
閉経後は骨粗鬆症および骨折のリスクが増加する。
○か×か。
解説講義 正答:○
エストロゲンは骨代謝にも関係している。そのため、閉経によってエストロゲンが低下すると骨量減少が進みやすくなる。日本産科婦人科学会の2025年改定専門研修到達目標でも、閉経・加齢に伴う健康問題として、心血管リスクだけではなく骨粗鬆症による骨折リスクの増加が明記されている。
問題10の「脂質異常症」と対にして、
閉経後
→ 心血管リスク↑
→ 骨折リスク↑
まで押さえておく。
問題30 FSH
卵巣で卵胞の発育を促進する主要なゴナドトロピンはどれか。
1.FSH
2.LH
3.プロラクチン
4.オキシトシン
解説講義 正答1
FSHは卵胞刺激ホルモンであり、その名の通り卵巣の卵胞発育に関与する。
日本産科婦人科学会も、
FSH=卵胞の発育を促す
LH=排卵を促す
と説明している。
問題8では「高FSH=卵巣機能低下」というフィードバックを扱った。ここでは、そもそもFSHが正常では何をしているホルモンなのかを確認している。
問題31 LH
成熟卵胞から排卵を起こす際に重要なホルモンはどれか。
1.プロゲステロン
2.プロラクチン
3.LH
4.オキシトシン
解説講義 正答3
排卵前にはエストラジオールが上昇し、その後LHサージが生じて排卵へ至る。
日本産科婦人科学会も、LHを「排卵を促すホルモン」として説明している。また厚生労働省資料の月経周期模式図でも、排卵期にはLHに大きなピークがみられる。
したがって、
FSH=卵胞発育
LH=排卵
が基本となる。
問題32 黄体期
排卵後にはプロゲステロンが上昇し、子宮内膜は分泌期へ移行する。
○か×か。
解説講義 正答:○
排卵後、排卵した卵胞は黄体へ変化し、プロゲステロンを分泌する。
厚生労働省の月経周期資料でも、プロゲステロンは排卵後に上昇し黄体期で高値となることが示されている。
流れとしては、
卵胞発育
→ エストロゲン上昇
→ LHサージ
→ 排卵
→ 黄体形成
→ プロゲステロン上昇
となる。
問題9の「エストロゲン=内膜増殖」に対して、こちらでは排卵後のプロゲステロン作用まで完成させる問題である。
問題33 高プロラクチン血症
プロラクチンの病的な高値は、排卵障害や無月経の原因となることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
プロラクチンは授乳には必要なホルモンだが、妊娠・授乳と関係なく病的に高値になると、生殖内分泌系を抑制して排卵障害や無月経を生じることがある。JSOGの2025年改定専門研修到達目標でも、続発性無月経に関連して乳汁漏出性無月経、薬剤性高PRL血症、下垂体腫瘍などを重要事項としている。また無月経の内分泌評価にはPRLも含まれる。
ここは後の母乳問題とつながる。
生理的なPRL上昇=授乳に必要
病的なPRL上昇=排卵障害の原因にもなる
という二面性を理解する。
【母乳分泌のメカニズム】
問題34 初乳と乳汁分泌開始
初乳は児の出生後になって初めて乳房内で作られ始める。
○か×か。
解説講義 正答:×
初乳は出生した瞬間から作り始めるものではなく、出生時にはすでに乳房内に存在している。
WHOの母乳育児教材では、妊娠中から乳房は初乳を作り始め、出生後に妊娠関連ホルモンが低下するとプロラクチンの作用が前面に出て、大量の乳汁分泌へ移行すると説明している。
大量の乳汁が作られるまでには、一般に出生後30〜40時間程度かかるとしている。
したがって、
妊娠中=初乳の形成開始
出生時=初乳はすでに存在
産後=乳汁分泌量が増加
という順序になる。
問題35 プロラクチンの作用時期
授乳によって分泌されたプロラクチンの重要な作用は、主として「現在児が飲んでいる乳汁を押し出すこと」である。
○か×か。
解説講義 正答:×
「今ある乳汁を押し出す」のはオキシトシン。
プロラクチンは、児が吸啜した後に上昇し、主として次の授乳に向けた乳汁を産生する。
WHOは、プロラクチン濃度が授乳開始約30分後に高くなり、その主要な働きは次回授乳用の乳汁を作ることだと説明している。
したがって、
オキシトシン=現在ある乳汁を出す
プロラクチン=次の乳汁を作る
まで理解すると、単なる「作る・出す」より一段深い。
問題36 夜間授乳とプロラクチン
プロラクチンは夜間にも多く分泌されるため、夜間の授乳は乳汁分泌を維持するうえで意味がある。
○か×か。
解説講義 正答:○
WHOは、プロラクチン分泌が夜間に多くなることを説明しており、夜間授乳は乳汁分泌を維持するうえで有用としている。
つまり「一日の授乳回数」だけを見るのではなく、吸啜刺激がどれだけ繰り返されているかも乳汁分泌に関係する。
遠賀中央の「母乳分泌メカニズム」が深掘りされた場合には、この程度まで押さえておきたい。
問題37 オキシトシン反射と心理状態
強い痛み、不安、ストレスは、一時的にオキシトシン反射を抑制して乳汁を流れにくくすることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
これは乳汁産生そのものと射乳を区別するための重要問題。
WHOは、強い痛み、不安、心配、ストレスなどによりオキシトシン反射が一時的に抑制され、乳汁が流れにくくなることがあると説明している。乳房で乳汁が全く作られなくなったわけではない点が重要である。
つまり、
ストレス
→ オキシトシン反射抑制
→ 射乳しにくい
であって、
ストレス
→ 直ちに乳汁産生が完全停止
ではない。
厚生労働省の助産師国家試験でも、「母親の不安はオキシトシン分泌を低下させる」という知識が問われている。
問題38 乳房内での乳汁産生調節
乳汁が乳房内に大量に残り続けても、乳汁産生量には影響しない。
○か×か。
解説講義 正答:×
乳汁産生はプロラクチンだけで決まるわけではない。授乳が確立してくると、乳房内には局所的な乳汁産生調節機構が働く。WHOは、乳汁が乳房内に多く残ると乳汁中のfeedback inhibitor of lactation〈FIL〉などによる局所調節が働き、乳汁産生が抑えられると説明している。
逆に乳汁を吸啜や搾乳によって取り除けば、乳汁分泌は再び促される。
つまり、
乳汁を出す
→ また作られる
という需給調節が存在する。
これは問題14〜17では扱っていなかった別の機序である。
問題39 授乳と排卵
頻回な授乳は、視床下部―下垂体―卵巣系を介して排卵および月経を抑制することがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
吸啜刺激はプロラクチン分泌だけに影響するわけではない。
WHOは、授乳による内分泌変化によってGnRH、FSH、LHなどの生殖内分泌系が抑制され、排卵と月経が抑制されることを説明している。
したがって、
吸啜
→ 神経内分泌刺激
→ PRL上昇など
→ 性腺系抑制
→ 排卵抑制
という関連がある。
ここで問題33の「高PRLと無月経」が母乳分泌の知識と一本につながる。
ただし、「授乳していれば絶対に妊娠しない」という意味ではないので注意する。
問題40 初乳
初乳は成熟乳と比べて感染防御に関係する成分が乏しい。
○か×か。
解説講義 正答:×
初乳には感染防御に関係する成分が豊富に含まれている。
WHOも出生後1時間以内の早期授乳を推奨する理由の一つとして、児が防御因子を豊富に含む初乳を受け取れることを挙げている。
したがって初乳を、
「量が少ないから価値が低い」
と考えてはいけない。
量だけではなく、出生直後の児に適した組成を持つ乳汁として理解する。
問題41 早期母子接触
出生直後の母児のskin-to-skin contactは、授乳開始を妨げるため原則として避ける。
○か×か。
解説講義 正答:×
母児の状態が安定している場合、出生直後のskin-to-skin contactはむしろ早期授乳を促す方向に働く。
WHOは、出生後早期のskin-to-skin contactが早期授乳の開始を助け、母乳育児の継続にも好影響を与えることを示している。
また母親が児を見る、触れる、声を聞くといった刺激もオキシトシン反射を促しうる。
つまり母乳分泌は単なる乳房の機能ではなく、母児の相互作用を含む神経内分泌現象である。
【胎児循環・出生後循環】
問題42 臍帯血管
正常な臍帯には、通常、臍帯動脈2本と臍帯静脈1本が存在する。
○か×か。
解説講義 正答:○
胎児循環の基本構造として、
臍帯動脈=2本
臍帯静脈=1本
である。
重要なのは本数だけではない。
臍帯静脈
→ 胎盤から胎児へ酸素化された血液
臍帯動脈
→ 胎児から胎盤へ酸素化の低い血液
を運ぶ。
厚生労働省の助産師国家試験出題基準にも、臍帯・臍帯血・臍帯血管は胎児生理の基本項目として明記されている。
問題43 臍帯動脈
胎児循環では、臍帯動脈は胎児から胎盤方向へ血液を運ぶ。
○か×か。
解説講義 正答:○
成人循環で「動脈=酸素が多い」と覚えていると混乱しやすい。
動脈と静脈は酸素量ではなく、心臓から出るか心臓へ戻るかという血流方向で分類される。
胎児から胎盤へ向かうのが臍帯動脈、胎盤から胎児へ戻るのが臍帯静脈である。
実際、厚生労働省の国家試験では、胎児循環の選択肢として臍帯動脈と臍帯静脈の酸素分圧の違いが繰り返し問われている。
問題44 静脈管
胎児の静脈管〈ductus venosus〉は、胎盤から臍帯静脈を通ってきた血液の一部を下大静脈へ導く。
○か×か。
解説講義 正答:○
胎盤で酸素化された血液は臍帯静脈を通って胎児へ入る。
その一部は肝臓へ流れるが、一部は静脈管を通って下大静脈へ流れる。
日本循環器学会のガイドラインでは、胎盤から来た血液のおよそ半分が静脈管を介して下大静脈へ入り、酸素分圧の高い血液が右房へ運ばれる循環を説明している。
厚生労働省の国家試験でも、「Arantius静脈管は下大静脈に流入する」という胎児循環の知識が出題されている。
問題45 酸素化された血液の経路
胎盤から胎児脳へ比較的酸素化された血液を送る経路として最も適切なのはどれか。
1.臍帯静脈→静脈管→下大静脈→右房→卵円孔→左房→左室→上行大動脈
2.臍帯動脈→右房→右室→肺動脈→肺
3.臍帯静脈→右室→動脈管→下行大動脈
4.臍帯動脈→静脈管→左房→左室
解説講義 正答1
胎児は酸素化された血液を優先的に脳や心臓へ送るような循環になっている。
主な流れは、
胎盤
→ 臍帯静脈
→ 静脈管
→ 下大静脈
→ 右房
→ 卵円孔
→ 左房
→ 左室
→ 上行大動脈
→ 冠循環・脳
となる。
日本循環器学会も、静脈管を通ってきた酸素分圧の高い血液が卵円孔を介して左心系へ流れ、上行大動脈から脳・上半身へ供給されることを示している。
これは「卵円孔=右→左」という一語より一段上の理解である。
問題46 右室からの胎児血流
胎児では右室から肺動脈へ拍出された血液の多くが、動脈管を介して下行大動脈へ流れる。
○か×か。
解説講義 正答:○
胎児では肺がまだガス交換を担当しておらず、肺血管抵抗も高い。
そのため右室から、
右室
→ 肺動脈
へ出た血液の多くは肺へ入るのではなく、
肺動脈
→ 動脈管
→ 下行大動脈
へ流れる。
日本循環器学会の胎児循環ガイドラインでもこの経路が説明されている。
問題22では「動脈管が何と何をつなぐか」を聞いたが、こちらでは実際にどちらへ血液が流れるのかを問っている。
問題47 臍帯遮断後の循環
出生後、臍帯が遮断されて胎盤循環がなくなると、体血管抵抗は低下する。
○か×か。
解説講義 正答:×
ここは出生後循環を理解するうえで非常に重要。
胎盤は抵抗の低い大きな血管床である。出生後に臍帯が遮断されて胎盤循環が切り離されると、その低抵抗回路がなくなるため、体血管抵抗は上昇する方向へ変化する。
同時に肺では、
呼吸開始
→ 肺血管抵抗低下
→ 肺血流増加
が起こる。
つまり出生時には、
体血管抵抗↑
肺血管抵抗↓
という、胎児期とは逆方向の大きな変化が同時に起こる。日本循環器学会も、出生直後の胎盤循環停止と肺循環確立を胎児循環から胎外循環への中心的変化として説明している。
問題48 動脈管閉鎖とプロスタグランジン
出生後の動脈管閉鎖には、酸素分圧の上昇だけでなく、胎盤循環停止に伴うプロスタグランジンなどの血管拡張物質の低下も関与する。
○か×か。
解説講義 正答:○
問題25では「PaO₂上昇→動脈管収縮」を扱ったが、動脈管閉鎖の機序は酸素だけではない。
胎児期には胎盤由来のプロスタグランジンなどが、動脈管を開存させる方向へ作用している。
出生
↓
胎盤循環停止
↓
プロスタグランジンなど低下
同時に、
肺呼吸開始
↓
PO₂上昇
この両者が動脈管収縮・機能的閉鎖に関与する。日本循環器学会のガイドラインにも明記されている。
問題49 動脈管の機能的閉鎖
満期産児では、動脈管の機能的閉鎖は通常、出生後およそ12〜15時間以内に起こる。
○か×か。
解説講義 正答:○
ここは、最初に提示された受験者記録の**「生後約12〜24時間」**という記憶をダブルチェックした部分。
日本循環器学会の一次資料では、満期産児では動脈管の機能的閉鎖は通常12〜15時間以内に生じると記載されている。
したがって試験対策としては、
出生後、早期に機能的閉鎖が進む
ことをまず理解する。
一方で「機能的閉鎖」と「完全な器質的閉鎖」は同じではない。出生直後に動脈管そのものが線維化して消失するわけではない。
この区別は重要である。
問題50 胎児循環の遺残物
出生後の胎児循環路とその遺残物の組合せで正しいのはどれか。
1.動脈管 ― 動脈管索
2.卵円孔 ― 静脈管索
3.静脈管 ― 動脈管索
4.臍静脈 ― 正中臍索
解説講義 正答1
正答は動脈管→動脈管索。
出生後に不要となった胎児循環路は、閉鎖した後に成人でも遺残構造として認められる。
代表的には、
動脈管 → 動脈管索
静脈管 → 静脈管索
臍静脈 → 肝円索
臍動脈 → 臍動脈索〈遠位部〉
となる。
日本循環器学会の胎児循環図でも、出生後の遺残構造として動脈管索、静脈管索、肝円索などが示されている。
遠賀中央看護助産学校 助産学科
専用予想問題1〜25
生殖・妊娠成立・妊娠初期・母体生理
【不妊・受精】
問題1 不妊症
妊娠を希望する健康な男女が避妊をせずに性交を続けているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合、日本では不妊症と定義される。
○か×か。
解説講義 正答:○
日本産科婦人科学会では、妊娠を望む男女が避妊をせず性交しているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を不妊症としている。
ただし、「必ず1年間待ってから検査する」という意味ではない。排卵障害、子宮内膜症、骨盤腹膜炎の既往など妊娠しにくい要因がある場合や、年齢などを考慮して早めに検査・治療を開始する場合がある。
再現50問では月経・内分泌まで扱ったので、その次に「妊娠しない場合」を聞くのはかなり自然な横展開になる。
問題2 子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査で主に評価するのはどれか。
1.卵子の質
2.卵管の通過性と子宮腔の形態
3.精子の運動率
4.胎児の染色体
解説講義 正答2
子宮卵管造影検査〈HSG〉は造影剤を用いて、卵管が通っているか、子宮腔の形に異常がないかを調べる検査である。
不妊症では、
卵巣 → 排卵
卵管 → 卵子と精子が出会う
子宮 → 胚が着床する
というそれぞれの段階を評価する必要がある。HSGはその中でも主として卵管因子と子宮腔を見る検査である。
問題3 AMH
抗ミュラー管ホルモン〈AMH〉の値から、卵子の「質」を正確に判定することができる。
○か×か。
解説講義 正答:×
AMHは主として卵巣予備能、すなわち卵巣内に残っている卵子の数を推測する指標として利用される。
しかし日本産科婦人科学会は、AMHによって卵子の質を推測することはできないと明記している。
ここは、
AMH=量の目安
AMH≠質の判定
と明確に区別する。
問題4 男性不妊
男性側の不妊因子を最初に評価する代表的検査はどれか。
1.子宮鏡検査
2.子宮卵管造影
3.基礎体温測定
4.精液検査
解説講義 正答4
精液検査では、主に精子数や運動率などを調べる。
不妊症は女性だけの問題ではなく、男性側、女性側、双方、あるいは原因不明の場合がある。したがって男性側の評価も重要である。日本産科婦人科学会も男性側の基本検査として精液検査を挙げている。
問題5 卵管性不妊
クラミジア感染によって卵管炎が起こり、その後の癒着や卵管閉塞が不妊の原因になることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
クラミジア感染では自覚症状が乏しい場合があるが、感染が上行すると卵管炎や骨盤腹膜炎を生じ、癒着・卵管閉塞につながることがある。
卵管が閉塞すると、
卵子
+
精子
が出会えなくなるため、自然妊娠が難しくなる。
JSOGもクラミジア感染歴を卵管性不妊の重要な原因として説明している。
問題6 受精部位
受精が最も起こりやすい部位はどれか。
1.子宮体部
2.卵管峡部
3.卵管膨大部
4.卵巣
解説講義 正答3
受精の代表的な場所は卵管膨大部。
これは厚生労働省の国家試験でも繰り返し確認されている基本事項である。
流れを一本にする。
排卵
→ 卵管采が卵子を取り込む
→ 卵管膨大部で受精
→ 胚が子宮方向へ移動
→ 子宮内膜へ着床
遠賀中央は「メカニズムの順序」を問う傾向が見えるため、この流れは特に重要。
問題7 卵管の役割
卵管は単なる卵子の通り道ではなく、精子と卵子が出会って受精し、胚が子宮へ移動する経路でもある。
○か×か。
解説講義 正答:○
日本産科婦人科学会は、卵管を精子と卵子の通り道であり、受精の場でもあると説明している。
受精卵はその後子宮方向へ移動し、子宮内膜へ着床することで妊娠が成立する。
ここでは「卵管=管」とだけ覚えず、受精から着床までの連続した役割として理解する。
【妊娠成立・hCG】
問題8 hCG
妊娠成立後にhCGを分泌するのはどれか。
1.絨毛細胞
2.下垂体後葉
3.子宮筋
4.卵管上皮
解説講義 正答1
hCG〈ヒト絨毛性ゴナドトロピン〉は、妊娠成立後に受精卵を取り巻く絨毛細胞から分泌される。
厚生労働省の一般用妊娠検査薬に関する現行手引きでも、妊娠成立後に絨毛細胞からhCGが分泌され始め、尿中へ検出されるようになると説明されている。
「hCG」のHはhuman、Cはchorionic=絨毛性。名称から分泌源までつなげると覚えやすい。
問題9 妊娠検査薬
一般的な妊娠検査薬は、尿中hCGを検出する。
○か×か。
解説講義 正答:○
妊娠すると絨毛細胞からhCGが分泌され、その一部が尿中へ排泄される。この尿中hCGを検出するのが一般的な妊娠検査薬である。
ただし重要なのは、
妊娠検査薬陽性=正常な子宮内妊娠が確定
ではないことである。
これが次の問題につながる。
問題10 妊娠反応陽性
市販の妊娠検査薬が陽性であれば、それだけで正常な子宮内妊娠であることを確定できる。
○か×か。
解説講義 正答:×
尿中hCGが陽性であることは妊娠成立を示唆するが、妊娠している場所までは分からない。
したがって、
正常子宮内妊娠
異所性妊娠
流産過程
などを妊娠検査薬だけで区別することはできない。
厚生労働省も、妊娠検査薬のみでは正常妊娠かどうかを判定できず、医師による診察や超音波検査などが必要としている。
問題11 異所性妊娠
妊娠反応陽性であるにもかかわらず、妊娠週数相当の時期に子宮内へ胎囊が確認できない場合は、異所性妊娠も鑑別する。
○か×か。
解説講義 正答:○
これは非常に重要。
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、子宮外に胎囊・卵黄囊・胎芽などを確認すれば異所性妊娠を確定できる。一方、子宮内に胎囊が見えないだけで直ちに異所性妊娠と断定できるわけではなく、hCGの推移や超音波所見を組み合わせて評価する。
厚労省の助産師国家試験でも、妊娠6週台で胎囊が確認できない症例について、血中hCG測定などを問う問題が出されている。
問題12 妊娠初期のhCG
hCG濃度が高くなりやすい時期として最も適切なのはどれか。
1.妊娠2〜3週
2.妊娠20〜24週
3.妊娠35〜40週
4.妊娠9〜12週ごろ
解説講義 正答4
hCGは妊娠初期に急速に増加し、妊娠9〜12週頃に高値となった後、低下していく。
厚生労働省の出生前診断に関する資料でも、hCGは妊娠9〜12週頃に最高値へ達するとされている。
またhCGが高くなりやすい多胎妊娠や胞状奇胎では、つわり・妊娠悪阻が強くなる場合がある。厚労省の母性健康管理資料でも、hCGとつわりの関連が説明されている。
【妊娠週数・超音波】
問題13 妊娠週数
自然妊娠では、受精した日を妊娠0週0日として妊娠週数を数える。
○か×か。
解説講義 正答:×
妊娠週数は受精日から0週として数えるのではない。
JSOGの2026年版ガイドライン作成時公開CQでは、受精日を妊娠2週0日として計算するとしている。28日周期の場合は最終月経初日を妊娠0週0日とする考え方になる。
したがって、受精直後でも医学上の妊娠週数は「約2週」となる。
ここは意外に間違えやすい。
問題14 分娩予定日の決定
妊娠初期に分娩予定日を決める際、妊娠8〜10週相当で特に有用な超音波計測値はどれか。
1.腹囲〈AC〉
2.大腿骨長〈FL〉
3.頭殿長〈CRL〉
4.羊水指数〈AFI〉
解説講義 正答3
妊娠初期の予定日決定では**頭殿長〈CRL〉**が非常に重要。
JSOGの2026年版公開CQでは、
妊娠8〜10週相当 → CRL
妊娠11週以降 → BPD
などを予定日決定に用いるとしている。妊娠初期に妥当な根拠で決定した予定日は、中期以降の胎児計測だけで安易に変更しない。
問題15 胎囊径
胎囊〈GS〉の大きさは非常に正確な妊娠週数推定法であるため、現在のJSOGガイドラインでは胎囊径を用いて正式な分娩予定日を決定することを推奨している。
○か×か。
解説講義 正答:×
ここは細かいが良問になる。
JSOGの2026公開CQでは、胎囊径による分娩予定日の決定は不正確であるため行わないとしている。
正確なCRLが測定できる時期までは、月経歴などから暫定的な予定日を用いることがある。
つまり、
GSが見える
=妊娠の確認には重要
しかし、
GS径
=正確な予定日決定には使わない
と区別する。
【妊娠初期・プレコンセプション】
問題16 妊娠初期
妊娠12週頃までの妊娠初期は、胎児の脳や内臓などの器官形成が進む重要な時期である。
○か×か。
解説講義 正答:○
厚生労働省は、妊娠初期、特に妊娠12週までを胎児の脳や内臓など諸器官が形成される重要な時期としている。
そのためこの時期には、
医薬品
飲酒
喫煙
感染症
放射線
などへの注意が特に重要になる。
「妊娠が分かってから注意する」だけでは遅い場合があるため、プレコンセプションケアが重要になる。
問題17 葉酸
神経管閉鎖障害の発症リスク低減を目的として、一般的な挙児希望女性に推奨される葉酸サプリメント量はどれか。
1.0.04mg/日
2.0.4mg/日
3.4mg/日
4.10mg/日
解説講義 正答2
JSOGの産科診療ガイドライン2026作成時公開CQでは、挙児希望または妊娠可能性のある女性について、妊娠前から1日0.4mgの葉酸をサプリメントで補充することで神経管閉鎖障害〈NTDs〉のリスク低減が期待できるとしている。
さらに重要なのは開始時期。
神経管の閉鎖は非常に早いため、妊娠成立1か月以上前からの葉酸補充が推奨される。
問題18 葉酸と神経管閉鎖障害
妊娠前から推奨量の葉酸を摂取すれば、神経管閉鎖障害を100%予防できる。
○か×か。
解説講義 正答:×
葉酸補充によって神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できるが、100%予防できるわけではない。
JSOGは、NTDsは多因子性であり、葉酸不足だけが原因ではないと明記している。
この表現は重要。
「予防できる」ではなく「発症リスクを低減できる」
と答える。
【妊娠中の体格・母体変化】
問題19 妊娠中の体重増加
妊娠中に望ましい体重増加量は、すべての妊婦で同じである。
○か×か。
解説講義 正答:×
妊娠中の体重増加量は、妊娠前のBMIによって目安が異なる。
JSOGの2026公開CQでも、妊娠前の体格を確認して個人差を考慮した指導を行うことが示されている。
「妊婦は○kg増やす」と一律に暗記するのではない。
まず妊娠前BMIを求め、その体格に応じて考える。
問題20 普通体重妊婦
妊娠前BMIが18.5以上25未満の妊婦に対する、妊娠期間全体の体重増加量の目安として適切なのはどれか。
1.3〜5kg
2.5〜7kg
3.7〜10kg
4.10〜13kg
解説講義 正答4
JSOGの2026公開CQでは、
妊娠前BMI 18.5未満 → 12〜15kg
BMI 18.5以上25未満 → 10〜13kg
BMI 25以上30未満 → 7〜10kg
BMI 30以上 → 個別対応
を目安としている。
古い教材では異なる数字が掲載されていることがあるため、ここは現在の基準で覚える。
問題21 妊娠前のやせ
妊娠前にやせている女性では、早産や低出生体重児などのリスクが高くなる。
○か×か。
解説講義 正答:○
JSOGの2026公開CQでは、妊娠前BMI18.5未満のやせた女性について、
早産
貧血
低出生体重児
SGA
などのリスクが高いことを示している。
「妊娠中に太らなければ安全」という発想は誤り。少なすぎる体重増加にもリスクがある。
問題22 妊娠前の肥満
妊娠前の肥満は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児、帝王切開などのリスク増加と関連する。
○か×か。
解説講義 正答:○
JSOGは妊娠前の肥満について、
妊娠高血圧症候群
妊娠糖尿病
巨大児
帝王切開
などのリスク上昇を挙げている。
問題21とセットで、
やせすぎにもリスク
肥満にもリスク
と理解する。
問題23 妊娠中の循環血液量
妊娠中は母体の循環血液量が増加する。
○か×か。
解説講義 正答:○
妊娠すると母体だけでなく、子宮・胎盤・胎児へ十分な血液を供給する必要があるため循環血液量が増加する。
厚生労働省の母性健康管理資料では、妊娠第8〜9月頃には循環血液量が非妊娠時より約1L、30〜40%増加すると説明している。
この変化は次の「妊娠性貧血」を理解する基礎になる。
問題24 妊娠性貧血
妊娠中の循環血液量増加に対して血球成分の増加が追いつかないため、血液が希釈されてヘモグロビン濃度が低下しやすい。
○か×か。
解説講義 正答:○
妊娠では循環血液量が増加するが、血漿量の増加に対して赤血球量の増加が相対的に小さいため、血液が希釈される。
これが妊娠に伴う生理的な血液希釈の基本である。
ただし、本当の鉄欠乏性貧血をすべて「妊娠だから正常」と判断してはいけない。
胎児・胎盤への鉄需要も増加するため、鉄欠乏そのものにも注意が必要になる。
問題25 仰臥位低血圧症候群
妊娠後期の妊婦が仰臥位で気分不良、冷汗、血圧低下を認めた。最も適切な体位はどれか。
1.左側臥位
2.完全な腹臥位
3.砕石位
4.Trendelenburg位
解説講義 正答1
妊娠後期に仰臥位になると、増大した子宮によって下大静脈が圧迫されることがある。
下大静脈圧迫
↓
心臓への静脈還流量低下
↓
心拍出量低下
↓
血圧低下
↓
気分不良・冷汗など
これが仰臥位低血圧症候群。
体位を左側臥位へ変えることで、子宮による下大静脈圧迫を軽減する。厚生労働省関連資料でもこの機序と左側臥位への変更が示されている。
妊娠中期・妊娠合併症】
問題26 胎児の免疫
母体のIgGは胎盤を介して胎児へ移行する。
○か×か。
解説講義 正答:○
胎児は母体からIgGを受け取る。ここで重要なのは、すべての免疫グロブリンが同じように胎盤を通過するわけではないことである。
母体IgG
→ 胎盤を介して胎児へ移行
一方、IgMは基本的に胎盤を通過せず、胎児・新生児血中のIgMは児自身が産生したものと考える。
2026年の厚生労働省助産師国家試験でも、**「母体から胎児へのIgG移行には能動輸送が働く」**ことが直接出題されている。
問題27 妊娠とインスリン
妊娠が進行するとインスリンの作用は強くなるため、妊娠後半では低血糖になりやすく、妊娠糖尿病は起こりにくくなる。
○か×か。
解説講義 正答:×
逆である。
妊娠が進むにつれて、母体ではインスリンの働きが弱まりやすくなる。これは胎児へブドウ糖を供給するための妊娠に伴う生理的変化でもあるが、インスリン分泌による代償が十分できない女性では血糖が上昇し、妊娠糖尿病〈GDM〉を発症する。
そのためGDMは妊娠後半で顕在化しやすく、妊娠24〜28週頃のスクリーニングが重要になる。
問題28 妊娠糖尿病の診断
75g経口ブドウ糖負荷試験〈75gOGTT〉による妊娠糖尿病の診断基準として正しい組合せはどれか。
1.空腹時100mg/dL、1時間200mg/dL、2時間180mg/dL
2.空腹時90mg/dL、1時間160mg/dL、2時間140mg/dL
3.空腹時92mg/dL、1時間180mg/dL、2時間153mg/dL
4.空腹時126mg/dL、1時間200mg/dL、2時間200mg/dL
解説講義 正答3
妊娠糖尿病の75gOGTT基準は、
空腹時 92mg/dL以上
1時間値 180mg/dL以上
2時間値 153mg/dL以上
である。
さらに大事なのは、3項目全部を超える必要はないこと。1点以上を満たせばGDMと診断する。
④の空腹時126mg/dL以上などは、GDMより重い「妊娠中の明らかな糖尿病」を考える値なので混同しない。
問題29 糖尿病母体児
妊娠糖尿病の母体から出生した児では、出生後に低血糖を生じることがある。
○か×か。
解説講義 正答:○
母体が高血糖になると胎児にも多くのブドウ糖が供給され、胎児はそれに対応してインスリン分泌を増加させる。
ところが出生すると、
臍帯切断
→ 母体からの高濃度ブドウ糖供給が突然なくなる
→ 児のインスリンはしばらく高い
→ 血糖低下
となる。
したがって糖尿病母体児では、出生後の低血糖に特に注意する。巨大児、多血症、黄疸なども関連する。JSOGもGDMの児側合併症として低血糖を明示している。
問題30 妊娠高血圧症候群
妊娠中に高血圧と判断する血圧として正しいのはどれか。
1.130/80mmHg以上
2.140/90mmHg以上
3.150/100mmHg以上
4.160/110mmHg以上
解説講義 正答2
妊娠高血圧症候群〈HDP〉における高血圧は、
収縮期血圧140mmHg以上
または
拡張期血圧90mmHg以上
である。
「かつ」ではなく**「または」**なので、例えば145/82mmHgでも収縮期血圧の基準を満たす。
160/110mmHgは単なる診断基準ではなく、重症高血圧として厳重な管理が必要になるレベルである。
問題31 重症高血圧
妊娠高血圧症候群において、重症高血圧と判断する値として適切なのはどれか。
1.130/85mmHg以上
2.140/90mmHg以上
3.150/100mmHg以上
4.160/110mmHg以上
解説講義 正答4
重症高血圧は、
収縮期160mmHg以上
または
拡張期110mmHg以上
である。
このレベルでは脳出血、子癇、HELLP症候群など重大な母体合併症につながるため、速やかな評価・管理が必要となる。
JSOGも160/110mmHg以上を重症として明示している。
問題32 HDPの危険症状
妊娠高血圧症候群の妊婦に、新たな激しい頭痛、視覚異常、心窩部痛などが出現した場合には注意が必要である。
○か×か。
解説講義 正答:○
これは単なる「妊娠中の体調不良」として扱ってはいけない。
特に、
激しい頭痛
目が見えにくい・ちらつく
普段と異なる上腹部・心窩部痛
悪心・嘔吐
神経症状
などは、重症HDP、子癇、HELLP症候群などへの進展を考える重要な症状である。
JSOGもこれらの症状があれば速やかに産婦人科へ連絡するよう示している。
問題33 HELLP症候群
HELLP症候群を構成する所見として正しいのはどれか。
1.溶血・肝酵素上昇・血小板減少
2.低血糖・腎機能低下・白血球減少
3.高血糖・肝酵素低下・血小板増加
4.溶血・甲状腺機能亢進・血小板増加
解説講義 正答1
HELLPは名称そのものが病態を表している。
H:Hemolysis=溶血
EL:Elevated Liver enzymes=肝酵素上昇
LP:Low Platelets=血小板減少
である。
したがって、HDP妊婦に心窩部痛などが出現したら、血小板数だけではなくAST・ALT・LDH、ビリルビン、凝固系、腎機能などを確認する。
2026年JSOGでも、HELLPを疑った場合は血算、凝固、AST・ALT・LDHなどを評価するよう示している。
問題34 子癇
子癇の予防・治療に用いられる代表的な薬剤はどれか。
1.オキシトシン
2.インスリン
3.硫酸マグネシウム
4.プロゲステロン
解説講義 正答3
子癇は、妊娠中・分娩中・産褥期に起こり得るけいれん発作である。
HDPから子癇への進展を予防したり、子癇発作の再発を防いだりするために用いられる代表的薬剤が硫酸マグネシウムである。
ただし子癇発作時には薬剤だけを考えるのではなく、まず母体の気道・呼吸・循環を確保し、母体を安定させることが優先される。
問題35 胎児発育不全〈FGR〉
胎児推定体重が小さいという一つの所見だけでFGRを確定し、経時的な発育や羊水量を評価する必要はない。
○か×か。
解説講義 正答:×
FGRは「小さい胎児」というだけではない。
JSOG 2026では胎児体重基準値の**-1.5SD以下を診断の目安**としながら、
胎児体重の経時的変化
胎児腹囲
羊水量
必要に応じて血流評価
などを組み合わせて総合的に診断するとしている。
つまり、
「1回小さかったからFGR」
では不十分である。
問題36 羊水過少
羊水過少を疑った場合に行う評価として最も適切なのはどれか。
1.母体の頭囲測定
2.超音波による最大羊水深度やAFIの測定
3.胸部X線のみ
4.母体の基礎体温測定
解説講義 正答2
羊水量は超音波検査で評価する。
代表的なのが、
最大羊水深度〈MVP〉
羊水インデックス〈AFI〉
である。
また「羊水が少ない」と分かったら終わりではない。
前期破水
胎児尿路系異常
胎盤機能不全
FGR
など原因を検索するとともに、胎児のwell-beingを評価する必要がある。
問題37 羊水過多
妊娠中の超音波検査でAFIが26cmであった場合、羊水過多を考える。
○か×か。
解説講義 正答:○
JSOG 2026では、羊水過多の目安として、
MVP 8cm以上
または
AFI 24〜25cm以上
が示されている。
したがってAFI26cmなら羊水過多を考える。
原因としては、妊娠糖尿病、胎児消化管閉鎖、胎児嚥下障害、染色体異常などがあるため、羊水量だけでなく原因検索が重要である。
問題38 前置胎盤
妊娠後半に突然みられる「痛みを伴わない性器出血」は前置胎盤を疑う重要な所見である。
○か×か。
解説講義 正答:○
前置胎盤では、妊娠後半に**無痛性の性器出血〈警告出血〉**を生じることがある。
ここは常位胎盤早期剥離との対比が重要。
前置胎盤
→ 無痛性出血が典型
常位胎盤早期剥離
→ 腹痛・子宮収縮・性器出血・胎児状態悪化など
JSOG公式も、前置胎盤では妊娠28週頃以降に「痛みもないのに急に出血する」ことがあると説明している。
問題39 前置胎盤の分娩
前置胎盤では胎盤が内子宮口を覆っていても、原則として経腟分娩を行う。
○か×か。
解説講義 正答:×
現在はすべてのタイプの前置胎盤で帝王切開が原則である。
胎盤が子宮口を覆っている状態で経腟分娩を進めると、胎盤剥離による大量出血を起こす危険がある。
低置胎盤は前置胎盤とは別に、胎盤辺縁と内子宮口との距離などをみながら分娩方法を検討する。
問題40 常位胎盤早期剥離
妊娠後半。突然の腹痛と性器出血があり、胎動も減少した。このとき特に疑うのはどれか。
1.妊娠悪阻
2.正常な前駆陣痛
3.子宮外妊娠
4.常位胎盤早期剥離
解説講義 正答4
常位胎盤早期剥離では、正常位置に付着していた胎盤が胎児娩出前に剥離する。
重要な初期症状は、
性器出血
腹痛
子宮収縮
胎動減少
など。
胎盤が剥がれると胎児への酸素供給が急激に低下する可能性があり、母体では大量出血・DICにも発展し得る緊急疾患である。JSOGでもこれらを重要な初期症状としている。
【感染・分娩管理】
問題41 GBSスクリーニング
2026年JSOGガイドラインで推奨されるGBS培養検査時期として適切なのはどれか。
1.妊娠20〜21週
2.妊娠36〜37週
3.妊娠28〜30週
4.分娩後のみ
解説講義 正答2
ここは2026年版で変更されたので重要。
従来は35〜37週という記載だったが、2026年版では、
妊娠36〜37週
へ変更された。
理由は、分娩時のGBS保菌状態をより正確に予測するためである。
古い参考書で「35〜37週」と覚えている受験生は注意が必要。
問題42 GBS培養の採取部位
GBSスクリーニングの検体採取部位として正しいのはどれか。
1.子宮内膜と尿道
2.子宮頸管のみ
3.腟入口部と肛門
4.口腔と鼻腔
解説講義 正答3
JSOG 2026では、GBS培養の検体は、
腟入口部+肛門
から採取する。
特に「腟だけ」ではないところがポイント。
腟入口部の採取後、同じ綿棒または別の綿棒で肛門からも検体を採取する。
問題43 GBS陽性妊婦
GBS保菌妊婦では、新生児早発型GBS感染症を予防するため、分娩中にペニシリン系などの抗菌薬を点滴静注する。
○か×か。
解説講義 正答:○
GBS陽性だから妊娠中ずっと抗菌薬を内服するという話ではない。
基本は、
GBS保菌確認
↓
陣痛開始・破水
↓
分娩中に抗菌薬を静脈投与
である。
JSOGはGBS陽性、前児GBS感染症、今回妊娠中の尿培養でGBS検出などの場合に、経腟分娩中または前期破水後の抗菌薬点滴を推奨している。
問題44 胎動減少
妊婦が「いつもより胎動が明らかに少ない」と訴えた場合、胎児のwell-beingを評価する必要がある。
○か×か。
解説講義 正答:○
胎動は胎児の状態を知る重要な情報の一つ。
「胎動が減った」という訴えを単なる主観として片付けず、状況に応じて胎児心拍数、超音波、羊水量などから胎児状態を評価する。
JSOG 2026でもFGRや羊水量異常の管理で、胎動を含めた胎児well-beingの評価を重視している。
問題45 破水と胎児心拍
分娩中に破水した場合には、その前後で胎児心拍数を確認することが重要である。
○か×か。
解説講義 正答:○
破水を契機に、
臍帯脱出
臍帯圧迫
胎児心拍異常
が出現する場合がある。
そのため2026年JSOGでは、破水時を胎児心拍数モニタリングを行う場面として明示している。
破水したら羊水の色だけを見るのではなく、胎児心拍の変化も確認する。
問題46 子宮頻収縮
分娩中、30分間の平均で10分間に6回の子宮収縮が認められた。最も適切な評価はどれか。
1.正常範囲である
2.微弱陣痛である
3.胎盤剥離が確定する
4.子宮頻収縮を認める
解説講義 正答4
2026年JSOGでは子宮頻収縮を、
10分間に5回を超える子宮収縮
と定義している。
したがって6回/10分なら頻収縮。
特にオキシトシンなど子宮収縮薬を使用している場合は、胎児への血流が十分回復する間欠期が短くなり、胎児機能不全につながる可能性があるため注意する。
問題47 子宮収縮薬
オキシトシンなどの子宮収縮薬を使用している間は、胎児心拍数と子宮収縮を継続的に評価する。
○か×か。
解説講義 正答:○
子宮収縮薬への感受性には個人差が大きい。
そのため投与中には、
子宮収縮回数
収縮時間
胎児心拍数
母体バイタル
などを評価する。
2026年JSOGでも、子宮収縮薬使用中はハイリスクとして胎児心拍数陣痛図を頻回に評価することが示されている。
【産褥・産後出血】
問題48 弛緩出血
胎盤娩出後に多量出血があり、子宮底を触診すると子宮が大きく軟らかい。まず疑うのはどれか。
1.子宮収縮不全による弛緩出血
2.妊娠悪阻
3.前置胎盤
4.異所性妊娠
解説講義 正答1
胎盤娩出後、本来は子宮筋が強く収縮し、胎盤剥離面の血管を圧迫して止血する。
ところが子宮が十分収縮しないと、
子宮が軟らかい
子宮底が高い
大量出血
という状態になる。
これが弛緩出血。
産後出血では「出血量だけ」ではなく、子宮収縮、胎盤遺残、産道裂傷、凝固異常など原因を速やかに考える必要がある。JSOGの現行研修目標でもPPHの原因検索と初期対応は必須項目である。
問題49 産科危機的出血
分娩後異常出血が続き、Shock Index〈SI〉が1.5となった場合は、産科危機的出血として緊急対応を考える。
○か×か。
解説講義 正答:○
Shock Indexは、
心拍数÷収縮期血圧
で求める。
例えば、
心拍数120/分
収縮期血圧80mmHg
なら、
120÷80=1.5
となる。
2026年JSOGでは、分娩後異常出血が持続しSI≧1.5となった場合などを「産科危機的出血」宣言の基準としている。
問題50 フィブリノゲン
分娩後異常出血が持続しており、フィブリノゲンが120mg/dLであった。最も適切な評価はどれか。
1.正常値なので経過観察のみ
2.凝固異常とは無関係である
3.産科危機的出血を考える重要な所見である
4.妊娠糖尿病を示す
解説講義 正答3
2026年JSOGでは、
フィブリノゲン150mg/dL未満
を単独でも産科危機的出血宣言の基準の一つとしている。
したがって120mg/dLは重大。
産科出血では短時間で凝固因子が消費され、DICへ進行することがあるため、
血算
フィブリノゲン
PT
APTT
FDP・Dダイマー
などを評価する。
「出血量だけ」で重症度を判断しないことが重要である。
【新生児・小児】
新生児の評価
問題51 Apgarスコア
Apgarスコアの評価項目に含まれないのはどれか。
1.心拍数
2.呼吸
3.筋緊張
4.体温
解説講義 正答4
Apgarスコアは5項目。
Appearance=皮膚色
Pulse=心拍
Grimace=刺激反応
Activity=筋緊張
Respiration=呼吸
で、それぞれ0〜2点、合計10点で評価する。
体温は含まれない。
厚生労働省の国家試験でも全く同じ論点が出題されている。
問題52 早産児
在胎36週6日で出生した児は、早産児に分類される。
○か×か。
解説講義 正答:○
早産は、
在胎37週未満
での出生。
したがって36週6日は早産である。
正期産は37週0日以降42週0日未満。WHOの定義でもpretermは37 completed weeks未満としている。
問題53 低出生体重児
低出生体重児の定義として正しいのはどれか。
1.出生体重3,000g未満
2.出生体重2,500g未満
3.出生体重2,000g未満
4.出生体重1,500g未満
解説講義 正答2
低出生体重児〈LBW〉は、
出生体重2,500g未満
である。
さらに、
1,500g未満=極低出生体重児
1,000g未満=超低出生体重児
と分類する。
WHOも低出生体重を「2,500g未満」と定義している。
問題54 低出生体重児と早産児
低出生体重児はすべて早産児である。
○か×か。
解説講義 正答:×
この2つは分類基準が違う。
低出生体重児=体重による分類
早産児=在胎週数による分類
例えば、
在胎39週
出生体重2,300g
なら正期産だが低出生体重児となる。
反対に、
在胎36週
出生体重2,600g
なら早産児だが低出生体重児ではない。
WHOも低出生体重は在胎週数にかかわらず2,500g未満と定義している。
問題55 早発黄疸
生後18時間で肉眼的黄疸が出現した場合、生理的黄疸としてそのまま経過観察すればよい。
○か×か。
解説講義 正答:×
出生後24時間以内に出現する黄疸は、病的黄疸を疑う重要な所見である。
生理的黄疸は通常もっと後に出現するため、
生後18時間で黄疸
→ 「新生児だから普通」
とは判断しない。
溶血、感染などの原因を含めて評価する必要がある。WHOも出生後24時間以内の黄疸を新生児のdanger signとしている。
【体温・低出生体重児】
問題56 出生直後の保温
状態が安定している新生児の体温保持に有効なのはどれか。
1.出生直後から沐浴する
2.母児を別室にする
3.母親とのskin-to-skin contactを行う
4.濡れたまま観察する
解説講義 正答3
新生児は体表面積が大きく、皮下脂肪も少ないため熱を失いやすい。
出生直後は十分に乾燥させ、母児の状態が安定していればskin-to-skin contactを行うことが保温にも有効。
WHOは出生直後のskin-to-skinを、新生児のthermal protectionの重要な方法として推奨している。
問題57 低出生体重児
低出生体重児では、体温調節、呼吸、哺乳、感染などに特に注意する必要がある。
○か×か。
解説講義 正答:○
低出生体重児では、
低体温
呼吸障害
低血糖
哺乳困難
感染
などのリスクが高い。
したがって「体重が少ないだけ」と考えてはいけない。
WHOも低出生体重児では体温保持、十分な栄養、感染予防などを特に重視している。
問題58 カンガルーマザーケア
早産児・低出生体重児に対するカンガルーマザーケア〈KMC〉では、保護者とのskin-to-skin contactを活用する。
○か×か。
解説講義 正答:○
KMCは単に「赤ちゃんを抱くこと」ではない。
早産児・低出生体重児を保護者の胸にskin-to-skinで保持することで、
保温
母乳育児促進
母児関係形成
などに役立つ。
WHOはKMCを早産児・低出生体重児の重要なケアとして位置づけている。
【母乳育児】
問題59 完全母乳栄養
WHOは、生後4か月までの完全母乳栄養を推奨している。
○か×か。
解説講義 正答:×
WHOが推奨するのは、
生後6か月間の完全母乳栄養
である。
完全母乳とは、原則として母乳以外の食物・飲料、水も与えないという意味。
「4か月」ではない。
問題60 早期授乳
WHOが推奨する授乳開始時期として最も適切なのはどれか。
1.出生後1時間以内
2.出生後6時間以降
3.翌日から
4.乳房緊満が起こってから
解説講義 正答1
WHOでは、母児の状態が許せば、
出生後1時間以内
の授乳開始を推奨している。
早期skin-to-skin contactと早期授乳はセットで考える。
出生直後には初乳があり、量が少なく見えても感染防御に関係する成分を多く含む重要な乳汁である。
問題61 良好な吸着
児が乳房へ良好に吸着している所見として適切なのはどれか。
1.口がほとんど開いていない
2.下口唇が内側へ巻き込まれている
3.児の顎が乳房から大きく離れている
4.口を大きく開け、下口唇が外側へ向き、顎が乳房に接している
解説講義 正答4
良好なattachmentの代表的所見は、
口が大きく開く
下口唇が外反する
顎が乳房へ接する
乳輪は下より上側が多く見える
など。
乳頭だけを浅くくわえていると、母親の乳頭痛や乳汁移送不良につながりやすい。
WHOも同じ所見を良好な吸着として示している。
【新生児聴覚検査】
問題62 新生児聴覚検査
2026年8月改正のこども家庭庁通知では、分娩取扱施設で行う新生児聴覚検査の初回検査は、おおむね生後3日以内に実施する。
○か×か。
解説講義 正答:○
これは2026年8月17日に改正された最新通知で確認した。
基本的な流れは、
初回検査:おおむね生後3日以内
↓
リファーなら確認検査:おおむね生後1週間以内
である。
新生児聴覚障害は、早期に発見して適切な支援へつなげるほど言語発達などへの影響を小さくできる。
問題63 新生児聴覚検査のリファー
新生児聴覚検査で「リファー〈要再検〉」となった場合、その時点で聴覚障害が確定する。
○か×か。
解説講義 正答:×
リファー=難聴確定ではない。
リファーは、
「スクリーニングで反応が十分得られなかったので、さらに確認が必要」
という意味。
したがって、
初回検査
→ リファー
→ 確認検査
→ 必要なら精密検査
という流れになる。
保護者へ「難聴です」と断定して説明してはいけない。
問題64 先天性CMV
新生児聴覚検査でリファーとなった児に先天性サイトメガロウイルス感染症を調べる場合、尿核酸検査を生後3週間以内に行うことが強く推奨されている。
○か×か。
解説講義 正答:○
ここも2026年8月の最新通知で重要になっている。
新生児聴覚検査でリファー
↓
必要に応じて
生後3週間以内に尿を採取してCMV核酸検査
という流れ。
なぜ3週間以内かというと、それより後では出生後に感染したCMVと先天性感染との区別が難しくなるためである。
こども家庭庁の2026年通知では「強く推奨」と明記された。
問題65 ビタミンK
新生児にビタミンK₂を投与する主な目的はどれか。
1.新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防
2.低血糖の予防
3.黄疸の予防
4.低体温の予防
解説講義 正答1
新生児ではビタミンKが不足しやすく、ビタミンK依存性凝固因子が十分働かないと出血を起こす危険がある。
そのためビタミンK₂を予防的に投与する。
重要なのは、
ビタミンK=凝固・出血予防
という関連。
低血糖、黄疸、低体温を予防する薬ではない。こども家庭庁が掲載する乳幼児健診マニュアルにも、ビタミンK₂予防投与が示されている。
【新生児蘇生】
問題66 人工呼吸回数
JRC蘇生ガイドライン2025で、新生児蘇生における人工呼吸の回数として適切なのはどれか。
1.10〜20回/分
2.20〜30回/分
3.30〜40回/分
4.40〜60回/分
解説講義 正答4
最新のJRC蘇生ガイドライン2025では、新生児の人工呼吸を、
40〜60回/分
としている。
新生児蘇生で特に重要なのは換気。
成人心停止とは異なり、新生児では呼吸不全を起点として心拍が低下することが多いため、有効な人工呼吸によって胸が上がっているかを確認することが極めて重要である。
問題67 人工呼吸後の評価
新生児に有効な人工呼吸を開始した場合、おおむね30秒後に心拍数と呼吸を再評価する。
○か×か。
解説講義 正答:○
バッグ・マスク換気などを開始したら、ただ漫然と続けない。
有効な人工呼吸
↓
おおむね30秒
↓
心拍数・呼吸を再評価
する。
その際、「人工呼吸をしたか」ではなく胸郭が上がる有効な換気ができていたかが重要である。
JRC 2025で明示されている。
問題68 胸骨圧迫
有効な人工呼吸を30秒以上実施しても新生児の心拍数が50/分である。次に考える対応として適切なのはどれか。
1.人工呼吸を中止して経過観察する
2.胸骨圧迫を人工呼吸に追加する
3.授乳を開始する
4.Apgarスコアだけを再計算する
解説講義 正答2
最新JRCでは、
有効な人工呼吸を30秒以上
↓
それでも心拍数60/分未満
↓
胸骨圧迫+人工呼吸
へ進む。
新生児蘇生では心拍数が重要な判断指標になる。
この症例は50/分なので胸骨圧迫の適応を考える。
【乳幼児健診・発達】
問題69 法定乳幼児健診
母子保健法により市町村で実施が義務付けられている組合せはどれか。
1.1か月児と5歳児
2.3〜4か月児と9〜11か月児
3.1歳6か月児と3歳児
4.1歳児と2歳児
解説講義 正答3
母子保健法第12条により、市町村に実施義務があるのは、
1歳6か月児健診
3歳児健診
である。
3〜6か月、9〜11か月、1か月、5歳などにも健診はあるが、「法律でこの2つが市町村に義務付けられている」という点を区別する。
問題70 1歳6か月児健診
1歳6か月児健診では、一人歩き、言語理解や意味のある言葉、指差しなども発達評価の対象となる。
○か×か。
解説講義 正答:○
1歳6か月頃は、乳児から幼児へ移行する重要な発達時期。
こども家庭庁の現行ガイドでは、
一人歩き
意味のある言葉
簡単な言葉の理解
指差し
などを確認する。
ただし、「1歳6か月だから全員が全く同じことをできる」という意味ではなく、発達には個人差があるため、複数の情報を総合して評価する。
問題71 3歳児健診
3歳児健診で特に確認される項目として適切なのはどれか。
1.胎児心拍数
2.胎盤位置
3.母体の子宮底長
4.視覚・聴覚や言語発達
解説講義 正答4
3歳頃になると視覚・聴覚、言語、社会性などの評価がさらに重要になる。
3歳児健診では、
視力
聴覚
言語発達
生活習慣
身体発育
歯科
などを確認する。
こども家庭庁は、3歳児健診で視覚・聴力を確認することを明示している。
【予防接種】
問題72 MRワクチン
MR〈麻しん・風しん混合〉ワクチンの定期接種について正しいのはどれか。
1.1歳と小学校入学前の1年間に計2回行う
2.出生直後だけ行う
3.10歳以降に1回だけ行う
4.成人になってからのみ行う
解説講義 正答1
現在の定期接種は、
第1期:1歳
第2期:小学校入学前の1年間
の2回。
厚生労働省の2026年時点の公式ワクチン情報でも、この2回接種が明記されている。
問題73 ロタウイルスワクチン
ロタウイルスワクチンの初回接種は、標準的には生後2か月から開始し、生後14週6日までに行うことが勧められている。
○か×か。
解説講義 正答:○
ロタウイルスワクチンは接種開始時期が重要。
厚生労働省では、
生後6週から接種可能
標準的には生後2か月から
初回は生後14週6日まで
としている。
生後15週以降の初回接種は勧められていない。
またロタワクチンには2回接種製剤と3回接種製剤があり、同じワクチンで規定回数を完了する。
【SIDS・乳児の安全】
問題74 乳幼児突然死症候群
医学的な理由がない乳児を寝かせる際、SIDSのリスク低減のために推奨される体位はどれか。
1.腹臥位
2.側臥位のみ
3.座位
4.仰臥位
解説講義 正答4
乳児を寝かせ始めるときは仰向けが基本。
厚生労働省は、うつぶせ寝の方があおむけ寝よりSIDS発症率が高いことから、医学的理由がない限り1歳になるまではあおむけに寝かせるよう示している。
また両方向へ自由に寝返りできるようになった後、自分で寝返った場合まで常に仰向けへ戻し続ける必要はないという整理もされている。
問題75 新生児の危険徴候
生後10日の児。哺乳量が著しく低下し、普段より活動性が乏しく、呼吸も苦しそうである。「新生児ではよくあることなので翌週まで自宅で様子を見る」と説明する。
○か×か。
解説講義 正答:×
これは見逃してはいけない。
WHOが新生児で早急な医療評価を必要とするdanger signsとして挙げているのは、
哺乳不良
活動性低下
呼吸困難
発熱
けいれん
体が冷たい
出生後24時間以内の黄疸
など。
新生児は状態が悪化する速度が速く、「何となく元気がない」「飲まない」が重大な感染症や低血糖、呼吸障害などの最初の徴候である場合がある。国試にも似たような問題が出題されている。
感染管理】
問題76 標準予防策
標準予防策〈standard precautions〉は、感染症と診断されている患者だけに実施する。
○か×か。
解説講義 正答:×
標準予防策は、感染症の診断の有無にかかわらず、すべての患者に適用する感染対策である。
血液、体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚、粘膜などは感染源となる可能性があるものとして扱い、曝露の可能性に応じて手指衛生や個人防護具を選択する。
したがって、
「感染症患者だから標準予防策を行う」
ではなく、
「すべての患者に標準予防策を行い、必要な患者にはさらに感染経路別予防策を追加する」
と理解する。厚生労働省の現行感染対策資料でも、この考え方が明記されている。
問題77 手袋と手指衛生
患者の血液に触れる処置で手袋を着用していれば、手袋を外した後の手指衛生は必要ない。
○か×か。
解説講義 正答:×
手袋は手指衛生の代わりにはならない。
手袋には微細な破損がある可能性があり、さらに脱ぐ際に手指が汚染されることもある。そのため、手袋を外した後にも手指衛生を行う。
厚生労働省の資料でも、
血液・体液等へ接触するときは手袋を着用
↓
手袋を外した後は手指衛生
という流れが示されている。
問題78 手指衛生
手指に血液や体液などの目に見える汚れが付着している場合に最も適切なのはどれか。
1.手袋を二重にするだけでよい
2.アルコール擦式消毒薬だけを使用する
3.石けんと流水で手洗いする
4.乾いたペーパータオルで拭くだけでよい
解説講義 正答3
手に目に見える汚染がある場合は、石けんと流水による手洗いが必要である。
一方、目に見える汚れがない通常の医療場面では、アルコールを主成分とする擦式手指消毒薬が使用される。
つまり、
目に見える汚れなし → アルコール擦式消毒
目に見える汚れあり → 石けん+流水
と整理する。
問題79 芽胞形成菌
Clostridioides difficileなど芽胞形成菌への接触が疑われる場合、アルコール擦式手指消毒だけで十分である。
○か×か。
解説講義 正答:×
アルコールに抵抗性を示す微生物が存在する。
厚生労働省の感染対策資料では、C. difficileなど芽胞形成菌への接触が疑われる場合には、石けんと流水による手洗いを行うことが示されている。
ここは「アルコールを使えば何でも消毒できる」と考えないことが重要。
問題80 個人防護具
血液や体液が顔面へ飛散する可能性がある処置で適切なのはどれか。
1.手袋だけを使用する
2.マスクだけを使用する
3.エプロンだけを使用する
4.手袋、マスク、エプロンまたはガウン、眼の防護具を曝露リスクに応じて使用する
解説講義 正答4
個人防護具〈PPE〉は「いつでも全部着ける」のではなく、どこへ何が飛ぶ可能性があるかを予測して選択する。
血液・体液が飛散する可能性がある場合には、
手袋
マスク
エプロン・ガウン
ゴーグルやフェイスシールド
などを必要に応じて使用する。厚生労働省も標準予防策として同様の考え方を示している。
問題81 使用済み注射針
使用済み注射針は、針刺しを防ぐため両手で慎重にリキャップしてから廃棄する。
○か×か。
解説講義 正答:×
これは明確に誤り。
厚生労働省は、使用済み注射針のリキャップを原則禁止している。
使用後は、
リキャップしない
↓
その場で
↓
耐貫通性のある専用廃棄容器へ
が基本となる。
「針先を保護した方が安全そう」という感覚が、逆に針刺し事故を増やす。
問題82 針刺し事故
採血後の針で自分の指を刺した。最初の対応として最も適切なのはどれか。
1.創部を口で吸う
2.そのまま勤務を続ける
3.直ちに流水で十分洗浄し、速やかに報告・受診する
4.翌日に感染症状が出たら報告する
解説講義 正答3
針刺しや血液・体液曝露が起こった場合は、曝露部位を直ちに流水で十分洗浄する。
その後、速やかに院内の定められた経路で報告し、HBV・HCV・HIVなどの感染リスクを評価する。曝露状況によってはワクチン、免疫グロブリン、HIV曝露後予防などが必要になることもある。
「様子を見る」のではなく、洗う→報告→評価までが一連の対応。
問題83 空気感染予防策
肺結核患者の病室へ入室する医療従事者が用いる呼吸用防護具として適切なのはどれか。
1.N95マスク
2.布マスク
3.アイマスク
4.フェイスシールドのみ
解説講義 正答1
結核では空気感染予防策が必要であり、医療従事者は適切にフィットしたN95マスクなどの呼吸用防護具を使用する。
厚生労働省の職業感染対策資料でも、結核など空気感染予防策が必要な患者に接する場合にはN95マスクを着用するとしている。
問題84 感染経路別予防策
感染経路別予防策を必要とする患者では、標準予防策を中止して感染経路別予防策だけを実施する。
○か×か。
解説講義 正答:×
感染経路別予防策は標準予防策の代わりではない。
標準予防策
+
必要に応じて接触・飛沫・空気感染予防策
という形で追加する。
厚生労働省も、標準予防策を基本とし、病原体や患者の状態に応じて感染経路別予防策を実施するよう示している。
【排泄・経管栄養】
問題85 膀胱留置カテーテル
膀胱留置カテーテルを使用している患者の採尿バッグの位置として適切なのはどれか。
1.膀胱より高い位置
2.膀胱と同じ高さ
3.膀胱より低く、床には接触させない
4.患者の腹部の上
解説講義 正答3
尿を自然にバッグへ流し、逆流を防ぐため、採尿バッグは膀胱より低い位置に保持する。
ただし床には接触させない。
厚生労働省の感染対策資料でも、
バッグは膀胱より低い
床には置かない
尿流を妨げない
ことが示されている。
問題86 尿路感染予防
膀胱留置カテーテル使用中、尿が流れにくい場合にはチューブを折り曲げて一時的に尿をためる。
○か×か。
解説講義 正答:×
尿路感染予防では、尿を停滞させず、一方向へ流れる状態を維持することが重要。
そのため、
チューブのねじれ
折れ曲がり
バッグの位置
尿の逆流
を確認する。
厚生労働省も、カテーテルや尿バッグのチューブがねじれたり折れたりしないよう管理するよう示している。
問題87 経管栄養
胃ろうから経管栄養を行う際、逆流・誤嚥を防ぐために適切なのはどれか。
1.完全な仰臥位にする
2.頭部を低くする
3.頭側を30〜60度程度挙上する
4.腹臥位にする
解説講義 正答3
経管栄養では、胃内容物の食道への逆流や誤嚥を予防するため、上体を起こす。
厚生労働省の研修資料では、患者の状態に応じて頭側を30〜60度程度挙上することが示されている。
ただし急激に頭側を上げると、患者によってはめまいや血圧低下を起こす場合があるため、安楽や循環状態も観察する。
問題88 経管栄養終了後
経管栄養終了直後は誤嚥予防のため、すぐに完全仰臥位へ戻す。
○か×か。
解説講義 正答:×
注入終了後もしばらくは上体を挙上した状態を保つ。
目的は胃内容物の食道への逆流を減らし、誤嚥を防ぐこと。
厚生労働省の研修資料でも、注入終了後しばらく上体を挙上したまま安楽な姿勢を保つよう示している。
バイタルサイン・観察】
問題89 成人の呼吸数
安静時成人の一般的な呼吸数の目安として適切なのはどれか。
1.2〜5回/分
2.6〜10回/分
3.16〜20回/分
4.30〜40回/分
解説講義 正答3
厚生労働省のフィジカルアセスメント資料では、成人の呼吸数の正常値の目安を16〜20回/分としている。
ただし看護では数字だけでは不十分。
呼吸数と同時に、
呼吸の深さ
リズム
努力呼吸
喘鳴
副雑音
SpO₂
チアノーゼ
意識状態
などを観察する。
問題90 頻脈
安静時成人の脈拍数が110回/分である場合、頻脈と判断する。
○か×か。
解説講義 正答:○
厚生労働省のフィジカルアセスメント資料では、成人で100回/分以上を頻脈の目安としている。
ただし重要なのは、数値を記録して終わらないこと。
発熱
疼痛
貧血
脱水
出血
不安
甲状腺機能亢進
など、なぜ頻脈になっているのかを患者の状態と結びつけて考える。
【褥瘡・転倒】
問題91 褥瘡予防
褥瘡予防では、圧迫だけでなく「ずれ」も考慮して体位や寝具を調整する必要がある。
○か×か。
解説講義 正答:○
褥瘡は単純に「長時間寝ていたからできる」というものではない。
圧迫に加えて、ずれ・摩擦、皮膚状態、栄養状態、活動性などを総合して評価する。
厚生労働省の直近の褥瘡ケア調査でも、対策項目として、
体位変換
体圧分散寝具
頭部挙上方法
車椅子姿勢
ずれ力の排除
などが挙げられている。
「全員を機械的に2時間ごとに同じ体位へ変える」というだけではなく、患者ごとのリスク評価が重要。
問題92 転倒予防
睡眠薬を内服した高齢患者が「一人でトイレに行ける」と話している。転倒歴があり、入院直後で環境にも不慣れである。最も適切なのはどれか。
1.本人が大丈夫と言っているため自由に歩いてもらう
2.夜間は飲水を禁止する
3.必要時にナースコールを使用するよう説明し、移動時の状態を評価して介助する
4.ベッド上から一切動かないよう指示する
解説講義 正答3
転倒予防では、患者の自立をすべて奪うのではなく、現在の転倒リスクに応じて安全な方法を選択する。
厚生労働省に報告された転倒事例でも、
睡眠薬使用
環境の変化
患者が自分で移動しようとしたこと
介助不足
などが要因となっており、ナースコールの使用説明、環境整備、必要な介助が対策として挙げられている。
【与薬・医療安全】
問題93 患者確認
内服薬を患者へ渡す際、最も適切なのはどれか。
1.病室番号だけで本人を確認する
2.顔を覚えていれば確認しない
3.薬袋だけ確認して患者へ置いておく
4.患者本人であることを確認し、処方内容と薬剤を照合して与薬する
解説講義 正答4
与薬事故の代表的原因の一つが患者誤認。
厚生労働省の医療安全資料では、与薬時には本人確認を行い、薬剤、投与量、投与方法などを確認することが示されている。フルネームによる確認も明記されている。
患者確認は単なる儀式ではなく、最後の安全装置である。
問題94 不明確な指示
医師の点滴指示に投与時間の記載がなく、投与速度を判断できない。最も適切なのはどれか。
1.経験から適当な速度を決める
2.以前の患者と同じ速度にする
3.指示者へ確認してから実施する
4.短時間で終了するよう最大速度にする
解説講義 正答3
不明確な指示を推測して実施してはいけない。
厚生労働省の医療安全事例にも、輸液の投与時間が明確でないまま投与して速度を誤った事例が掲載されている。
分からない指示は確認してから実施する。
これは医療安全の基本である。
問題95 与薬後の観察
正しい患者に正しい薬を投与できたことを確認すれば、与薬後の患者観察は必要ない。
○か×か。
解説講義 正答:×
与薬は「薬を患者へ渡したところ」で終了しない。
投与後には、
期待した効果が得られているか
副作用がないか
患者が正しく服薬したか
などを確認する。
厚生労働省の医療安全資料でも、与薬後の服薬確認と副作用の確認が明記されている。
問題96 輸液計算
500mLの輸液を5時間で投与する。輸液セットは1mL=20滴である。1分間の滴下数として最も近いのはどれか。
1.17滴/分
2.25滴/分
3.33滴/分
4.67滴/分
解説講義 正答3
計算する。
総滴下数は、
500mL × 20滴 = 10,000滴
投与時間は、
5時間 × 60分 = 300分
したがって、
10,000 ÷ 300
= 33.3……
よって、
約33滴/分
となる。
輸液計算は、
総量×1mL当たりの滴数÷総投与時間〈分〉
で求めればよい。
遠賀中央で基礎看護が出るなら、このレベルの計算問題は入れておきたい。
【倫理・意思決定】
問題97 インフォームド・コンセント
意思決定能力のある患者へのインフォームド・コンセントについて正しいのはどれか。
1.医療者が最善と判断した治療を患者の同意なく行う
2.患者には不安を与える可能性がある情報を一切説明しない
3.必要な説明を行い、患者自身の意思決定を尊重する
4.患者ではなく家族の意思を常に優先する
解説講義 正答3
インフォームド・コンセントは、単に「説明書へ署名をもらうこと」ではない。
患者が必要な情報を理解し、自分自身の価値観に基づいて選択できるようにすることが重要。
厚生労働省の国家試験関連一次資料でも、本人に意思決定能力がある場合は患者の主体性を重視することが正しい考え方として示されている。
【一次救命処置】
問題98 心停止の判断
成人が突然倒れ、呼びかけても反応がなく、普段どおりの呼吸を認めない。最も適切なのはどれか。
1.しばらく寝かせて経過を見る
2.食事を摂取させる
3.応援を要請し、救急通報とAEDを手配して胸骨圧迫を開始する
4.まず10分間血圧を測定する
解説講義 正答3
反応がなく、正常な呼吸がない場合は心停止を疑い、救急通報・AED手配と胸骨圧迫を速やかに開始する。
死戦期呼吸のような不規則な呼吸を「呼吸している」と誤認しないことも重要。
JRC蘇生ガイドライン2025でも、質の高い胸骨圧迫を迅速に開始することがBLSの中心となっている。
問題99 成人の胸骨圧迫
成人に対する胸骨圧迫のテンポとして適切なのはどれか。
1.40〜60回/分
2.60〜80回/分
3.80〜90回/分
4.100〜120回/分
解説講義 正答4
成人の胸骨圧迫は、
1分間に100〜120回
を目安とする。
速ければ速いほどよいわけではない。過度に速くなると圧迫の深さや胸郭の戻りが不十分になる可能性がある。
JRC蘇生ガイドライン2025でもこの範囲が維持されている。
問題100 胸骨圧迫の深さ
標準的な体格の成人に対する胸骨圧迫の深さとして最も適切なのはどれか。
1.約1cm
2.約3cm
3.約5cmで、6cmを超える過剰な圧迫を避ける
4.10cm以上
解説講義 正答3
JRC蘇生ガイドライン2025では、標準的な成人に対する胸骨圧迫を約5cmの深さで行い、6cmを超える過剰な圧迫を避けるよう推奨している。
胸骨圧迫は、
胸骨の下半分
約5cm
100〜120回/分
圧迫後は胸郭を十分戻す
中断をできるだけ少なくする
という一連の「質」が重要になる。
