東京都立大学 助産学専攻科の過去問・模範解答を徹底講義|2027年度入試・倍率・予想問題・アセスメント30問付/6万字

  • 2026/07/26
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東京都立大学助産学専攻科過去問解答解説・詳細講義

東京都立大学は、公式サイトで2026年度助産学専攻科入試の筆記試験問題と模範解答・出題の意図を公開しています。しかし、模範解答には正答となる語句が中心に示されており、「なぜその答えになるのか」「関連して何を覚えるべきか」「看護計画をどのように組み立てればよいのか」までは全く説明されていません。そこで本記事では、2026年度の東京都立大学助産学専攻科筆記試験をもとに、正答だけでなく、生理学、病態生理、関連法規、アセスメント、看護目標、看護計画まで詳しく解説します。

さらに、公式模範解答をそのまま受け入れるのではなく、計算式、現行の診療基準、胎児心拍数波形の定義と照合し、気になる箇所についても検証しました。

記事後半には、今回の出題傾向から作成したオリジナル予想問題30問と解答・詳細解説も収録しています。

以下には過去の問題に対する答え、そしてその解答に関する詳細な講義があります。さらに、ここから見えてくる予想問題も付属したパーフェクト対策になります。

noteの基本構成

各問題を次の順番で構成

1.問題の要旨

公式問題文から「何を問われている問題か」を解説する。

2.解答

空欄の正答や記述答案を明確に提示。

3.なぜその答えになるのか根拠(重要)⭐️

単なる用語説明ではなく、生理学・病態生理・解剖学的根拠まで踏み込む。たとえば新生児が低体温になりやすい理由なら、体表面積、皮下脂肪、褐色脂肪組織、非ふるえ熱産生、酸素消費量、低血糖との関連まで説明する。

4.周辺知識(重要)⭐️

その問題から派生して試験で問われる内容を整理する。

  • 類似する用語との違い

  • 正常値や診断基準

  • 関連法規

  • 観察項目

  • 異常時の看護

  • 国家試験で狙われる論点

5.出題意図(重要)⭐️

なぜ東京都立大学がこの問題を出したのかを分析する。知識の暗記を確認したのか、文章読解力を見たのか、母児の優先順位を判断する力を評価したのかまで書く。

6.記述問題の答案例(重要)⭐️

問IVのような事例問題では、単語だけでなく、採点される文章としての模範答案を作る。看護目標は抽象的な「安全・安楽」では終わらせず、観察可能な状態で示し、看護計画は観察・アセスメント・援助を具体化する。

公式解答もそのまま信じず検証する

大学側の公式解答は度々間違うことがよくある。そのため、当講義では、解説を作る前に正答自体の徹底した点検を行う。

たとえば、身長165cm、BMI20.0から求める体重は、

20.0×1.65²=54.45kg

したがって、有効数字3桁なら54.5kgになる。一方、模範解答には「56.3」と記載されており、設問条件との不整合があり間違った解答もあります。他の例では、胎児心拍数波形についても、問題文の子宮収縮との時間関係と「遅発一過性徐脈」という模範解答が完全に整合しているか、定義に沿って慎重に検討する必要がある。公式解答は遅発一過性徐脈となっているが、文章どおりに判読すると早発一過性徐脈を示す記載に近く、少なくとも遅発一過性徐脈と確定できる文章ではない。遅発一過性徐脈を正答とするなら、「心拍数の最下点が子宮収縮の最強点より遅れて出現し、子宮収縮終了後に回復した」などの記載が必要である。これは単なる細かい言葉の問題ではなく、病態が児頭圧迫なのか子宮胎盤循環不全なのかが変わる重大な違いなのだ。

このように、公式解答を信じた受験生が損をするのである。大事なのは己の頭で徹底的にリーズニングできること、それを徹底したからこそ、私は国試でも得点率99%取ることができた。まだまだあるぞ、問題Ⅲ・「空腹時血糖」は現行ガイドラインと異なる。問題Ⅳ・「辺縁前置胎盤」は旧来の分類としては正しいが、現在の用語では注意が必要だ。そこまで頭が回るのかということだ。

都立大の解答には毎年必ずと言って良いほどいくつも間違いがあるため、信じるなということです。

したがって当講義では

公式解答/計算・定義による検証/受験時に書くべき答案

を区別する。これにより、単なる過去問解説ではなく、誤植や曖昧な設問まで臨床推論で徹底検証した独自教材にさせた。これが唯一無二の私のやり方である。なお、公式解答には解答しかないため、全ての字数を合わせても400字程度だ。当noteは6万字以上の講義で構成される。つまり、150倍以上のボリュームである。ここでも他の受験生を圧倒的に差別化することができる。

このような受験生に向いています

東京都立大学助産学専攻科を受験予定で、過去問を見ても何をどこまで勉強すればよいか分からない方に向いています。

また、母性看護学の知識は覚えていても、事例問題になるとアセスメントや看護計画を書けない方、記述答案が抽象的になってしまう方にも役立つ内容です。

「母児に寄り添う」「安心できるよう支援する」「個別性を大切にする」と書くだけでは、東京都立大学の事例問題には対応できません。

必要なのは、病態生理と母児の情報から危険を予測し、

何を観察するのか
なぜ観察するのか
どの異常を早期発見するのか
何を優先して介入するのか
目標達成をどの所見で評価するのか

を具体的に記述する力です。

本記事では、そこまで踏み込んで解説します。

ここから有料部分です

ここからは、2026年度東京都立大学助産学専攻科筆記試験について、問題ごとの解答根拠、周辺知識、臨床判断、記述答案例を詳しく解説します。

まずは過去問と解答から

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2026年度 東京都立大学助産学専攻科

筆記試験・問題Ⅰ「新生児の体温管理と輻射」解答解説

問題Ⅰでは、新生児の体温調節に関する空欄補充に加え、熱喪失経路の一つである「輻射」を説明し、臨床場面と具体的な予防ケアまで記述することが求められています。模範解答資料では、この問題について、新生児の体温に関する基礎知識だけでなく、ケアの視点から論述できる能力を評価するために出題したと説明されています。

つまり、四つの熱喪失経路を暗記しているだけでは不十分です。「なぜ新生児は熱を失いやすいのか」「病室内の何が原因になるのか」「その原因を除くために看護師はどう動くのか」まで、一連の臨床判断として説明できることが求められています。


問1 解答



体表面積
対流
蒸散
伝導

①と②、④~⑥は順不同です。模範解答でも、熱喪失経路については「対流・蒸散・伝導」の順番を問わないとされています。

完成した文章は、次の内容になります。

新生児は、体温調節機能が未熟であり、環境温度の影響を受けやすく、容易に高体温や低体温になる。新生児は、体重当たりの体表面積が成人より大きいため、熱を喪失しやすい。新生児の主な熱喪失経路には、輻射、対流、蒸散、伝導がある。


なぜ新生児は体温が変動しやすいのか

新生児は子宮内の安定した温熱環境から、出生と同時に温度の低い外界へ移行します。しかし、成人と同じように衣服を着る、身体を丸める、暖かい場所へ移動するといった行動によって自分で環境を調整することはできません。

さらに、新生児は体重に比べて体表面積が大きいため、皮膚を通して外界へ逃げる熱量が相対的に多くなります。特に早産児や低出生体重児では、皮下脂肪が少なく、皮膚も薄いうえ、熱産生に関係する褐色脂肪組織も十分ではありません。筋肉のふるえによって熱をつくる能力も限られているため、成人以上に周囲の温度と看護ケアの影響を受けます。

一方で、「新生児は寒さに弱いから、とにかく温めればよい」と考えるのも誤りです。室温が高すぎる、衣類や寝具を重ねすぎる、放射式保温器や保育器の管理が不適切であると、容易に高体温になります。新生児は自分で寝具を外したり、暑い場所から移動したりできないため、低体温と高体温の両方を予防する視点が必要です。WHOは新生児の低体温を36.5℃未満、高体温を37.5℃超とし、温熱機器を使用する際にも体温を継続して確認する必要があるとしています。


新生児の四つの熱喪失経路

1.輻射

輻射とは、新生児の身体が物に直接触れていなくても、皮膚表面から周囲の温度が低い壁、窓、器具などへ、赤外線として熱が移動する現象です。

たとえば、室温が適切に保たれていても、新生児用ベッドを冬季の冷たい窓ガラスや外壁の近くへ置くと、新生児と窓が接触していなくても熱が失われます。これが本問で中心的に問われている輻射です。

「触れていないのに熱が移動する」という点が、伝導との最大の違いです。

2.対流

対流とは、新生児の皮膚周囲にある温められた空気が、温度の低い空気と入れ替わることによって熱が失われる現象です。

エアコンの風が直接当たる、窓や扉から冷気が入る、処置のために保育器の処置窓を長時間開放する、といった場面が該当します。

冷たい「物」ではなく、冷たい「空気の流れ」によって熱が奪われる点が特徴です。

3.蒸散

蒸散とは、皮膚表面の水分が蒸発する際に、気化熱として新生児の熱が奪われる現象です。

出生直後の新生児は羊水で濡れているため、何もせず放置すると急速に熱を失います。出生後に直ちに身体を乾かし、濡れたタオルを取り除くのは、清潔を保つためだけではありません。蒸散による熱喪失を防ぐという明確な生理学的根拠があります。

WHOも、出生直後の十分な乾燥、濡れた布の除去、母子の早期皮膚接触、早期授乳を低体温予防の基本として示しています。

4.伝導

伝導とは、新生児の身体が温度の低い物へ直接触れることで、接触面から熱が移動する現象です。

冷たい体重計、温められていない寝具、冷たい処置台、冷たい聴診器などへの接触が該当します。予防するためには、使用前に寝具や器具を適切に温めておく必要があります。

輻射との違いは、直接接触しているかどうかです。


試験直前の区別

冷たい窓や壁の近くに置く
輻射

エアコンや窓から冷風が当たる
対流

羊水や沐浴後の水分が皮膚に残る
蒸散

冷たい体重計や寝具へ直接触れる
伝導

この四つは用語だけを覚えるのではなく、病室内の具体的な場面と結び付けて説明できるようにしておく必要があります。


問2-1 輻射とは何か

模範解答資料には問2の記述答案そのものは掲載されていません。そのため、以下は設問の条件に沿って作成したオリジナル答案例です。

答案例

輻射とは、新生児の身体が物体へ直接接触していなくても、皮膚表面から周囲の温度が低い窓や壁などへ、赤外線として熱が移動する現象である。

採点されるポイント

単に「周囲へ熱が逃げること」と書くだけでは、対流や伝導との違いが分かりません。

答案には、少なくとも次の二点が必要です。

直接接触していないこと
温度の低い窓や壁などへ熱が移動すること

「赤外線」まで記載できれば、輻射の機序を正確に理解していることが伝わります。


問2-2 新生児に輻射が生じる具体的な場面

答案例

冬季の分娩室や新生児室で、新生児用ベッドを温度の低い窓ガラスや外壁の近くに置いた場合、新生児の身体が窓や壁に触れていなくても、皮膚表面から窓や壁へ熱が移動し、輻射による熱喪失が生じる。

この問題では、「分娩室、新生児室、母子同室の病室における具体的な場面を一つ」と指定されています。したがって、単に「寒い部屋に寝かせたとき」と書くのは不十分です。

寒い部屋では、輻射だけでなく対流による熱喪失も起こります。輻射を問われた以上、冷たい窓や外壁の近くに置くが、直接は触れていない場面を記載するのが最も明確です。

エアコンの冷風が当たる場面は対流であり、冷たいベッドに寝かせる場面は伝導です。ここを混同すると得点を失います。


問2-3 輻射による熱喪失を予防するケア

答案例

新生児用ベッドを温度の低い窓や外壁から離し、室内の温度が安定した場所へ移動する。必要に応じて放射式保温器や適切に設定した保育器を使用し、衣類や寝具で身体を覆う。ケア後は腋窩体温と全身状態を確認し、過度な加温による高体温にも注意する。

最も直接的な予防方法は、輻射の原因となっている冷たい窓や壁から新生児を離すことです。衣類や寝具で覆うことも有効ですが、原因となる環境を改善しないまま毛布だけを追加するのでは、看護判断として十分ではありません。

出生直後であれば、母親の胸部で行う早期皮膚接触も有効な保温方法です。母親の体温を熱源として利用するとともに、新生児の露出する体表面積を減らすことができます。ただし、母児の全身状態を確認し、安全な体位と継続的な観察を確保する必要があります。WHOは、新生児の基本的ケアとして母子の皮膚接触を含む温熱保護を位置付けています。

放射式保温器や保育器を使用する場合も、「機器へ入れたから安心」ではありません。設定温度、新生児の体温、皮膚状態、呼吸状態、心拍数などを継続して確認します。温熱機器の設定が高すぎれば、医療者のケアによって高体温や脱水を生じさせる危険があるためです。


低体温を放置すると何が起こるのか

新生児が寒冷環境へさらされると、末梢血管を収縮させて熱の喪失を抑えようとします。さらに、褐色脂肪組織を分解する非ふるえ熱産生によって熱をつくろうとします。

しかし、この熱産生には大量の酸素とブドウ糖が必要です。低体温が続くと酸素消費量とブドウ糖消費量が増え、低酸素血症、低血糖、代謝性アシドーシスを生じる危険があります。特に呼吸障害がある児、早産児、低出生体重児は、もともとの酸素供給や糖の貯蔵量に余裕がないため、寒冷ストレスが全身状態の悪化につながります。

したがって、新生児の体温管理は「赤ちゃんが寒そうだから温める」という快適性だけの問題ではありません。呼吸、循環、代謝を安定させ、胎外生活への適応を支える看護です。


低体温時に観察すること

体温が低い場合は、数字だけを確認して終えてはいけません。まず、出生時の状況、在胎週数、出生体重、身体が濡れたままになっていなかったか、室温、ベッドの位置、衣類・寝具、保温器の使用状況などから原因を考えます。

そのうえで、次の状態を確認します。

呼吸数と呼吸様式、陥没呼吸や呻吟の有無、皮膚色、心拍数、活気、筋緊張、啼泣、哺乳力、血糖値、四肢冷感などです。

低体温と哺乳不良が同時にみられる場合、単なる環境温度の問題だけでなく、感染症、低血糖、呼吸障害などが背景にある可能性もあります。保温によって体温を上げることと、低体温を生じさせた原因を評価することは同時に行わなければなりません。


高体温にも注意する

高体温では、皮膚の熱感、発赤、頻呼吸、頻脈、活気低下、哺乳不良などがみられることがあります。原因としては、室温の上げすぎ、厚着、寝具の重ねすぎ、放射式保温器や保育器の設定不良などの外的要因に加え、感染症や脱水なども考えます。

環境を調整しただけで経過をみてよいのか、感染症などの評価が必要なのかを、児の全身状態から判断します。低体温を恐れて過剰に温めるのではなく、正常な体温を維持できる環境を整えることが重要です。


この問題の出題意図

問1では、新生児の体温調節に関する基礎用語の定着が確認されています。しかし、得点差が生じるのは問2です。

問2では、次の三段階が評価されています。

知識
輻射の定義を説明できる。

臨床への置き換え
病室内で輻射が起こる具体的な場面を想像できる。

看護実践
熱喪失の原因を除き、体温と全身状態を評価するケアを説明できる。

東京都立大学助産学専攻科は、単語を暗記している受験生ではなく、学んだ生理学的知識を実際の母子の状態へ置き換え、根拠をもって援助を考えられる受験生を評価しようとしています。


試験で書いてはいけない答案

「輻射とは熱が逃げることである」

これでは対流、蒸散、伝導との違いが分かりません。

「寒い部屋に赤ちゃんを置いた場合」

寒い空気による対流なのか、冷たい窓や壁への輻射なのかが明確ではありません。

「毛布をかけて温める」

ケアとして完全な誤りではありませんが、輻射の原因となる冷たい窓や外壁を除く視点がありません。また、体温の再評価も書かれていません。

記述問題では、原因・機序・具体的な援助・評価までつなげることで、根拠のある答案になります。


問題Ⅰの最終整理

新生児は体重当たりの体表面積が大きく、体温調節機能が未熟であるため、環境の影響によって高体温にも低体温にもなりやすい存在です。

主な熱喪失経路は、輻射・対流・蒸散・伝導の四つです。

輻射は、身体が直接触れていない冷たい窓や壁へ熱が移動する現象です。予防では、新生児用ベッドを冷たい窓や外壁から離し、適切な保温環境を整えたうえで、体温と全身状態を再評価します。

この問題は、四つの用語を覚えるだけの問題ではありません。新生児が熱を失う場面を病室内で発見し、低体温による酸素・糖消費の増大まで予測し、原因に応じたケアを実施できるかを問う問題です。

筆記試験・問題Ⅱ「母性看護に関係する法律」解答解説

問題Ⅱでは、「看護師の定義」「人工妊娠中絶の届出」「特定妊婦」「妊婦健康診査」「入院助産」「受胎調節実地指導」「乳児家庭全戸訪問」「助産所開設の届出」について、それぞれ根拠となる法律名を答えることが求められました。

公式資料では、この問題について、母子看護学領域に必須となる関連法規の知識の定着度を評価するために出題したと説明されています。

一見すると法律名を暗記するだけの問題に見えます。しかし、8項目を正確に分類するためには、各法律が「資格と業務」「母体の保護」「母子の健康」「児童と家庭の福祉」「医療施設」のどこを対象としているのかを理解しておく必要があります。


問題Ⅱ 解答

保健師助産師看護師法
母体保護法
児童福祉法
母子保健法
児童福祉法
母体保護法
児童福祉法
医療法


① 看護師の定義――保健師助産師看護師法

看護師の定義を定めているのは、保健師助産師看護師法です。

同法では、看護師を、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者または褥婦に対する「療養上の世話」または「診療の補助」を業とする者と定義しています。

答案

保健師助産師看護師法

問題には「法律の名称を答えなさい」とあるため、「保助看法」のような略称ではなく、正式名称を書きます。「看護師法」という名称の法律ではありません。

「療養上の世話」と「診療の補助」

看護師の業務は、大きく二つに整理できます。

療養上の世話は、清潔、排泄、食事、移動、体位、睡眠、環境調整など、対象者の療養生活を支える援助です。ただし、単なる身の回りの世話ではありません。呼吸状態、循環動態、意識、疼痛、筋力、治療内容などをアセスメントし、安全性と個別性を判断して実施する専門的行為です。

診療の補助は、医師または歯科医師の診療を補助する行為です。採血、注射、点滴、処置、検査介助、医療機器の管理などが含まれます。保健師、助産師、看護師、准看護師は、法律上の例外を除き、医師または歯科医師の指示なく、医薬品の授与や診療機械の使用など、衛生上危害を生じるおそれのある行為を行うことはできません。

助産師の定義との違い

同じ保健師助産師看護師法には、助産師の定義も置かれています。助産師は、厚生労働大臣の免許を受け、助産または妊婦、褥婦、新生児への保健指導を業とする者です。

つまり、資格そのものの定義を問われたときは、母子保健法や医療法ではなく、まず保健師助産師看護師法を考えます。


② 人工妊娠中絶の届出――母体保護法

人工妊娠中絶に関する事項を定めているのは、母体保護法です。

母体保護法は、不妊手術や人工妊娠中絶に関する事項などを定め、母性の生命と健康を保護することを目的としています。同法上の人工妊娠中絶は、胎児が母体外で生命を保続できない時期に、人工的に胎児とその附属物を母体外へ排出することと定義されています。

答案

母体保護法

誰が、いつ、どこへ届け出るのか

人工妊娠中絶を行った場合には、手術を実施した医師または指定医師が、その月に行った手術の結果を取りまとめ、翌月10日までに、理由を記して都道府県知事へ届け出ます

したがって、届出義務者は妊娠した本人ではありません。「人工妊娠中絶を受けた女性が市町村へ届け出る」と考えないように注意します。

出題されやすい周辺知識

人工妊娠中絶については、次の三つを分けて覚える必要があります。

人工妊娠中絶の定義
母体保護法

人工妊娠中絶を行うための要件
母体保護法

人工妊娠中絶を行った後の届出
母体保護法

すべて母体保護法ですが、設問によって「定義」「実施要件」「届出」のどこを問われているのかが異なります。


③ 特定妊婦――児童福祉法

特定妊婦を定めているのは、児童福祉法です。

児童福祉法における特定妊婦とは、出産後の養育について、出産前から支援を行うことが特に必要と認められる妊婦をいいます。現在の児童福祉法では、第6条の3第5項に位置づけられています。

答案

児童福祉法

「妊婦」だから母子保健法とは限らない

ここが、この問題で最も間違えやすい部分です。

妊婦健康診査や妊産婦への保健指導は、妊産婦の健康を守る制度であるため母子保健法に位置づけられます。一方、特定妊婦は、出生後の養育環境を見据えて、妊娠中から福祉的支援を開始するための概念です。

したがって、中心となる視点は妊婦の身体的健康だけではなく、出生する児童の福祉と養育環境です。そのため根拠法は児童福祉法となります。

特定妊婦は病名ではない

特定妊婦は、医学的な診断名ではありません。また、一つの要因だけで機械的に決まるものでもありません。

妊娠中から出産後の養育状況を予測し、母親と子どもに継続的な支援が必要かを評価するための福祉上の概念です。医療機関や医療従事者は、要支援児童等と思われる者を把握した場合、その情報を現在地の市町村へ提供するよう努めることが児童福祉法に示されています。

助産師には、妊娠経過や母体の病態だけでなく、妊婦の生活、育児準備、支援者、家族関係、受診継続状況などから、出産後の養育を見通す視点が求められます。


④ 妊婦健康診査――母子保健法

妊婦健康診査の根拠となるのは、母子保健法です。

母子保健法では、市町村が必要に応じて妊産婦や乳幼児に健康診査を行い、または健康診査を受けることを勧奨することが定められています。また、妊婦健康診査について望ましい基準を定めることも規定されています。

答案

母子保健法

妊婦健康診査の目的

妊婦健康診査は、単に胎児の成長や心拍を確認するだけのものではありません。母体の血圧、体重、尿蛋白、尿糖、貧血、感染症などを確認し、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、胎児発育不全その他の異常を早期に発見する役割があります。

さらに、妊婦の心理状態、生活環境、栄養、就労、家族の支援状況を把握し、必要な保健指導や地域支援につなぐ機会でもあります。

母子保健法では、健康診査の結果に基づいて保健指導が必要な妊産婦には訪問指導を行い、疾病が疑われる場合には医師または歯科医師の診療を受けるよう勧奨することも定められています。

母子健康手帳との関係

母子健康手帳の交付も母子保健法に基づきます。妊婦健康診査を受けた場合には、その結果を母子健康手帳へ記録してもらい、妊娠から出産、乳幼児期までの健康情報を継続して管理します。

「妊婦健康診査」「妊娠の届出」「母子健康手帳」「産後ケア事業」が出たら、母子保健法を第一に考えます。


⑤ 入院助産――児童福祉法

入院助産の根拠法は、児童福祉法です。

児童福祉法第22条では、福祉事務所の所管区域内にいる妊産婦が、保健上必要であるにもかかわらず、経済的理由によって入院助産を受けることができない場合、申込みに基づいて助産施設で助産を行うことを定めています。

答案

児童福祉法

入院助産とは

ここでいう入院助産は、「分娩のために病院へ入院すること」そのものの名称ではありません。

経済的な理由によって医療機関や助産施設で分娩することが困難な妊産婦について、公的な制度により助産施設で安全な出産を確保する仕組みです。

制度の対象となるには、単に出産費用を抑えたいというだけではなく、保健上、入院して助産を受ける必要があることと、経済的理由により入院助産を受けられないことが関係します。

母子保健法ではない理由

入院助産は妊産婦を対象にしますが、中心となるのは健康診査や保健指導ではなく、経済的事情を抱える妊産婦に対する福祉的な助産の保障です。

そのため、妊婦健康診査は母子保健法、入院助産は児童福祉法と区別します。


⑥ 受胎調節実地指導――母体保護法

受胎調節実地指導を定めているのは、母体保護法です。

母体保護法第15条では、女性に対して指定された避妊用器具を使用する受胎調節の実地指導を業として行う場合、医師以外の者は都道府県知事の指定を受けなければならないと定めています。

答案

母体保護法

受胎調節実地指導の意味

受胎調節実地指導は、単に避妊方法を口頭で説明することだけを意味しません。法律で指定された避妊用器具について、実際の使用方法を指導する行為が中心となります。

医師以外の者がこれを業として行うには、都道府県知事の指定が必要です。この指定を受けた者が、一般に受胎調節実地指導員と呼ばれます。

人工妊娠中絶との関連

人工妊娠中絶と受胎調節実地指導は、いずれも母体保護法に規定されています。

母体保護法は「人工妊娠中絶だけを扱う法律」ではありません。母性の生命と健康を守るという目的のもと、不妊手術、人工妊娠中絶、受胎調節の実地指導などを扱います。


⑦ 乳児家庭全戸訪問――児童福祉法

乳児家庭全戸訪問事業の根拠となるのは、児童福祉法です。

乳児家庭全戸訪問事業は、市町村の区域内にいる原則としてすべての乳児の家庭を訪問し、子育てに関する情報提供、養育環境の把握、相談や助言、必要なサービスへの連絡調整などを行う事業です。

児童福祉法施行規則では、原則として生後4か月に至るまでの乳児がいる家庭について実施することが示されています。

答案

児童福祉法

新生児訪問指導との違い

乳児家庭全戸訪問事業と混同しやすい制度に、母子保健法の新生児訪問指導があります。

新生児訪問指導は、育児上必要があると認められる新生児について、医師、保健師、助産師などが家庭を訪問し、必要な指導を行う制度です。こちらの根拠は母子保健法です。

一方、乳児家庭全戸訪問事業は、原則としてすべての乳児家庭を対象とし、養育環境の把握や地域との接続を含む児童福祉的な事業です。

つまり、

新生児の健康・育児への訪問指導
→ 母子保健法

原則すべての乳児家庭を訪問する事業
→ 児童福祉法

と整理できます。


⑧ 助産所開設の届出――医療法

助産所開設の届出を定めているのは、医療法です。

助産師が助産所を開設した場合には、開設後10日以内に、助産所所在地の都道府県知事へ届け出なければなりません。

答案

医療法

なぜ保健師助産師看護師法ではないのか

助産師という資格や業務の定義は、保健師助産師看護師法に規定されています。

一方、助産所という医療提供施設の開設・管理について定めるのは医療法です。

したがって、

助産師とは何か
→ 保健師助産師看護師法

助産所を開設するときの手続
→ 医療法

となります。

「届出」と「許可」の違い

助産師が自ら助産所を開設した場合は、開設後の届出が基本です。一方、助産師でない者が助産所を開設する場合には、許可に関する規定が関係します。

試験では、「助産所の開設はすべて事前許可」と覚えないように注意します。誰が開設するのかによって、手続の扱いが異なります。

また、助産所の開設者には、必要な医療連携を確保するため、嘱託医師や連携する病院・診療所を定める規定も置かれています。


5つの法律を役割で整理する

法律名を8項目ごとに丸暗記すると混乱します。まず、それぞれの法律が何を担当しているかを理解します。

保健師助産師看護師法

保健師、助産師、看護師、准看護師の免許、資格、業務、名称、守秘義務などを定める法律です。

今回の問題では、看護師の定義が該当します。

母体保護法

母性の生命と健康を保護するため、不妊手術、人工妊娠中絶、受胎調節実地指導などを定める法律です。

今回の問題では、人工妊娠中絶の届出受胎調節実地指導が該当します。

母子保健法

妊産婦、乳児、幼児の健康保持と増進を目的に、健康診査、保健指導、訪問指導、母子健康手帳、産後ケアなどを定める法律です。

今回の問題では、妊婦健康診査が該当します。

児童福祉法

児童の福祉、養育支援、児童福祉施設、家庭への支援などを定める法律です。

今回の問題では、特定妊婦、入院助産、乳児家庭全戸訪問事業が該当します。

医療法

病院、診療所、助産所などの医療提供施設について、開設、管理、安全、広告、医療提供体制などを定める法律です。

今回の問題では、助産所開設の届出が該当します。


試験で間違えやすい組合せ

看護師の定義を医療法とする
資格の定義は保健師助産師看護師法です。

特定妊婦を母子保健法とする
妊婦という言葉に引っ張られますが、出生後の養育支援を見据えた児童福祉法上の概念です。

入院助産を母子保健法とする
健康診査ではなく、経済的理由によって助産を受けられない妊産婦への福祉制度であるため、児童福祉法です。

乳児家庭全戸訪問を母子保健法とする
新生児訪問指導は母子保健法ですが、乳児家庭全戸訪問事業は児童福祉法です。

助産所の開設を保健師助産師看護師法とする
助産師の資格は保健師助産師看護師法、助産所という施設の開設は医療法です。


この問題の出題意図

公式資料では、問題Ⅱについて、母子看護学領域に必須となる関連法規の知識の定着度を評価したとされています。

しかし、単なる法律名の暗記だけを見ているわけではありません。

看護師・助産師は、妊娠、出産、産褥、新生児、乳児という一連の経過に関わります。その中では、医療だけでなく、保健、福祉、虐待予防、経済的支援、地域支援まで含めた制度を利用しなければならない場面があります。

たとえば、妊婦健康診査を受けていない妊婦へ受診を勧めるだけでは不十分な場合があります。出産後の養育が困難と予測されるなら特定妊婦としての支援を検討し、経済的理由から安全な分娩場所を確保できないなら入院助産へつなぎ、出産後は乳児家庭全戸訪問や母子保健事業と連携する必要があります。

つまり、この問題で問われているのは、法律名の記憶だけではなく、対象者が必要としている支援を見極め、適切な制度へ結び付けるための基礎知識です。


問題Ⅱの最終整理

看護職の資格と業務
保健師助産師看護師法

人工妊娠中絶・受胎調節
母体保護法

妊産婦と乳幼児の健康診査・保健指導
母子保健法

児童・家庭の福祉と養育支援
児童福祉法

病院・診療所・助産所の開設と管理
医療法

この5本の法律を役割で理解しておけば、今回の8項目だけでなく、関連する法規問題にも対応できます。

2026年度 東京都立大学助産学専攻科

筆記試験・問題Ⅲ「思春期・妊婦健康診査・妊娠糖尿病・子宮底長」解答解説

問題Ⅲでは、思春期の内分泌機序から高年初産婦、妊婦健康診査の頻度、正期産の定義、妊娠中の糖代謝、子宮底長の測定方法まで、母性看護学の基礎知識が横断的に問われました。空欄は20か所ありますが、単語を個別に暗記しているだけでは正確に解けません。前後の文章を読み、ホルモンが「どこから分泌され、どこへ作用し、何を起こすのか」という因果関係まで理解している必要があります。問題冊子では、解答に平仮名やアルファベットを使用せず、漢字またはカタカナ、数字で記載するよう指定されています。

公式資料では、問題Ⅲについて、母性看護学の基礎知識を幅広く問い、文章読解力と知識の理解度・定着度を評価するために出題したと説明されています。つまり、知識量だけでなく、文章の主語・述語と因果関係を読み取る力も評価されています。


問題Ⅲ 解答

視床下部
下垂体前葉
卵巣
卵胞
排卵
乳房
陰毛
エストロゲン
アンドロゲン
高年初産婦
24
35
36
14
正期産
インスリン
空腹時血糖
ブドウ糖
仰臥位
恥骨結合上縁

以上が公式資料に示された解答です。


1.思春期におけるホルモン分泌

① 視床下部

思春期になると、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されます。

性腺刺激ホルモン放出ホルモンは、一般にGnRHと表記されます。問題文ではアルファベットの使用が禁止されているため、答案では「視床下部」と記載しますが、学習上は名称と作用を結び付けておく必要があります。

GnRHは一定量が連続的に分泌されるのではなく、一定の間隔を置いて脈動的に分泌されます。この刺激を受けた下垂体前葉が、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを分泌します。

思春期前は、この視床下部―下垂体―性腺系が十分に活動していません。思春期に入ると、特に睡眠中からGnRHの脈動的分泌が活発になり、卵巣からのエストロゲン分泌が増加して二次性徴が進みます。したがって、思春期は単に身体が大きくなる時期ではなく、中枢神経系と内分泌系の再活性化によって、生殖機能が成熟していく時期です。

② 下垂体前葉

GnRHの刺激を受けて性腺刺激ホルモンを分泌するのは、下垂体前葉です。

性腺刺激ホルモンには、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがあります。

卵胞刺激ホルモンは、主として卵巣内の卵胞を発育させます。発育した卵胞からはエストロゲンが分泌され、子宮内膜の増殖や乳房の発育などが促されます。

黄体形成ホルモンは、成熟卵胞からの排卵を引き起こすほか、排卵後の卵胞を黄体へ変化させます。黄体からはプロゲステロンが分泌され、子宮内膜を受精卵が着床しやすい分泌期の状態へ変化させます。

③ 卵巣

女子の場合、下垂体前葉から分泌された性腺刺激ホルモンは、卵巣へ作用します。

ここで注意したいのは、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがまったく同じ作用をするわけではないことです。卵胞刺激ホルモンは主に卵胞の発育を促し、黄体形成ホルモンは排卵や黄体形成に大きく関わります。

試験問題では両者をまとめて「性腺刺激ホルモン」と表現していますが、周辺知識としては役割を区別しておかなければなりません。

④ 卵胞

性腺刺激ホルモンの作用によって発育するのは、卵胞です。

卵胞は、卵子を取り囲む卵胞細胞などから構成されています。卵胞が発育すると、卵胞細胞からエストロゲンが分泌されます。エストロゲンの上昇によって子宮内膜が増殖し、乳房の発育などの二次性徴も進みます。

複数の卵胞が発育を始めても、通常は一つの卵胞が優位卵胞となって成熟し、排卵へ至ります。残りの卵胞の多くは発育途中で退縮します。

⑤ 排卵

成熟卵胞から卵子が放出される現象を、排卵といいます。

卵胞から分泌されるエストロゲンが一定期間高値になると、それまでの負のフィードバックから正のフィードバックへ変化し、黄体形成ホルモンが急激に大量分泌されます。これを黄体形成ホルモンのサージといい、この刺激によって排卵が起こります。

排卵後の卵胞は黄体となり、プロゲステロンを分泌します。妊娠が成立しなければ黄体は退縮し、エストロゲンとプロゲステロンが低下して子宮内膜が剝離します。これが月経です。

したがって、月経周期は「月経が起こること」だけではなく、卵胞発育、エストロゲン分泌、排卵、黄体形成、プロゲステロン分泌、黄体退縮という一連の内分泌変化によって成立しています。


二次性徴の発現順序

⑥ 乳房

日本人女子では、一般に8~9歳頃から乳房の発育が始まると、問題文では示されています。

女子の思春期に最初に確認されることが多い二次性徴は、乳房発育です。乳房の膨隆が始まり、乳頭・乳輪の発達が進みます。その後、陰毛の発生や身長の急速な伸びがみられ、最終的に初経を迎えます。

ただし、思春期開始の時期には個人差があります。現在の小児内分泌領域の資料では、日本人女子の乳房発育開始の平均は、おおむね9歳半から10歳前後とされています。今回の入試問題では「8~9歳頃より」と記載されていますが、臨床では一つの年齢だけで正常・異常を判断せず、発育の順序、進行速度、身長増加、骨年齢などを総合して評価します。

⑦ 陰毛

問題文では、11歳頃から陰毛の発生が始まるとされています。

乳房発育と陰毛発生は、いずれも二次性徴ですが、中心となるホルモン系は同一ではありません。

乳房発育は主に卵巣から分泌されるエストロゲンによって促されます。一方、陰毛や腋毛の発生には、主として副腎から分泌されるアンドロゲンが関係します。

そのため、乳房発育がなく陰毛だけが早期にみられる場合と、乳房発育が早期に進む場合とでは、考えるべき内分泌機序が異なります。

⑧ エストロゲン

乳房の発育に関係するのは、卵巣の卵胞から分泌されるエストロゲンです。

エストロゲンには、乳腺の乳管系を発達させる作用があります。そのほか、子宮や腟、外性器の発育、子宮内膜の増殖、女性らしい体脂肪分布、骨の成熟などにも関与します。

思春期にはエストロゲンの作用によって骨成熟が進みます。身長は急速に伸びますが、最終的には骨端線の閉鎖も促進されます。そのため、思春期が極端に早く始まると、一時的には同年齢の児より身長が高くても、骨端線の閉鎖が早まり、成人身長が低くなる可能性があります。

⑨ アンドロゲン

陰毛の発生に関係するのは、副腎から分泌されるアンドロゲンです。

副腎由来のアンドロゲンには、デヒドロエピアンドロステロンやその硫酸抱合体などがあります。思春期に先立って副腎アンドロゲンの分泌が増加する現象を、副腎性徴またはアドレナーキといいます。

これに対して、視床下部―下垂体―卵巣系が活性化し、乳房発育や排卵機能の成熟が進むことをゴナダーキといいます。

つまり、

乳房発育
→ 卵巣系の成熟、エストロゲン

陰毛・腋毛の発生
→ 副腎アンドロゲン

という違いがあります。

思春期発達の基本的な流れ

女子では一般に、乳房発育、陰毛発生、身長増加のピーク、初経という順序で進みます。ただし、すべての女子が同じ時期・同じ順序で進むわけではありません。

初経が始まった直後は、視床下部―下垂体―卵巣系が完全には成熟しておらず、排卵を伴わない周期も多くみられます。そのため、初経後しばらくは月経周期が不規則になることがあります。

一方、急激な体重減少、過度な運動、心理的ストレスなどによって視床下部からのGnRH分泌が抑制されると、性腺刺激ホルモンやエストロゲンが低下し、無月経を生じることがあります。


思春期問題で間違えやすい点

「乳房発育も陰毛発生もエストロゲンによる」と覚えるのは誤りです。乳房発育はエストロゲン、陰毛・腋毛は主にアンドロゲンが関係します。

「性腺刺激ホルモンは視床下部から分泌される」というのも誤りです。視床下部から分泌されるのは性腺刺激ホルモン放出ホルモンであり、性腺刺激ホルモンを分泌するのは下垂体前葉です。

また、卵胞刺激ホルモンによる卵胞発育と、黄体形成ホルモンの急増による排卵を区別する必要があります。


2.高年初産婦

⑩ 高年初産婦

日本産科婦人科学会では、初めて分娩する35歳以上の女性を高年初産婦と定義しています。今回の問題では、平仮名を使用できないため、「高齢初産婦」や略語ではなく、公式解答どおり「高年初産婦」と記載する必要があります。

高年初産婦と高齢妊娠の違い

高年初産婦は、35歳以上で初めて分娩する女性を指す用語です。一方、高齢妊娠は一般に35歳以上の妊娠を指し、初産・経産を問いません。

つまり、37歳で初めて出産する女性は高年初産婦ですが、37歳で第2子を出産する女性は高年初産婦ではありません。ただし、後者も母体年齢に関連する妊娠リスクの評価は必要です。

年齢は妊娠成立時ではなく、一般に分娩時の年齢を基準として扱います。

年齢が上昇すると何が変化するのか

母体年齢が上昇すると、卵母細胞の染色体不分離による染色体数的異常の頻度が上昇します。また、自然流産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前置胎盤、帝王切開、器械分娩、分娩時出血などの頻度が高くなる傾向があります。初産婦では、産道軟部組織の伸展や子宮収縮、合併症など複数の要因から分娩介入が必要になる割合も高くなります。(日本産婦人科医会)

ただし、「35歳以上なら必ず異常妊娠になる」という意味ではありません。大多数は適切な妊娠管理を受けながら出産しています。年齢だけで一律に不安を与えるのではなく、既往歴、基礎疾患、非妊時BMI、妊娠方法、胎児数、妊娠経過などを個別に評価する必要があります。

助産師に必要な視点

高年初産婦では、身体的リスクだけでなく、心理・社会的背景も個別に異なります。長期間の不妊治療を経た妊娠、仕事上の責任、親世代の介護、家族の期待などが重なっている場合もあります。

「高齢だから不安でしょう」と決めつけるのではなく、本人が何を不安と感じているか、妊娠・出産をどう受け止めているかを確認します。医学的リスクを正確に説明しながら、年齢だけを理由に本人の出産への自己効力感を低下させない支援が必要です。


3.妊婦健康診査の標準的な頻度

⑪ 24週、⑫ 35週

妊娠24週から35週までは、原則として2週間に1回の妊婦健康診査が望ましいとされています。

その前の妊娠初期から23週までは、原則として4週間に1回です。

したがって、標準的な受診頻度は次のように整理できます。

妊娠初期から23週まで
→ 4週間に1回

妊娠24週から35週まで
→ 2週間に1回

妊娠36週以降、出産まで
→ 1週間に1回

標準的な妊娠期間を通して、おおむね14回程度の健康診査を行う想定です。(厚生労働省)

⑬ 36週

妊娠36週以降は、原則として1週間に1回となります。

妊娠後半になるほど受診間隔が短くなるのは、妊娠高血圧症候群、胎児発育異常、羊水量の異常、胎位異常、胎盤機能の低下などが顕在化する可能性が高くなり、分娩開始も近づくためです。

ただし、これは正常に経過している単胎妊娠の標準的な目安です。多胎妊娠、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、胎児発育不全、前置胎盤、切迫早産などがある場合は、妊娠週数にかかわらず受診回数が増えます。

⑭ 14回

出産までに行われる標準的な妊婦健康診査は、妊婦1人につき14回程度です。

「14回」とは、すべての妊婦が必ず14回で終了するという意味ではありません。妊娠が判明した時期、予定日を超過した期間、母体や胎児の状態によって回数は変わります。

また、公費助成の回数と、医学的に必要な受診回数を同一視してはいけません。公費助成券を使い切った後でも、医学的に必要であれば健康診査や診察を受けます。


妊婦健康診査では何を確認するのか

妊婦健康診査では、毎回の基本的な確認として、体重、血圧、尿蛋白、尿糖、浮腫、子宮底長、腹囲、胎児心拍、胎位などを評価します。

ただし、数字を記録するだけでは看護になりません。前回からの変化を確認し、複数の所見を関連付けて判断します。

たとえば、短期間の体重増加、血圧上昇、蛋白尿が重なれば、妊娠高血圧腎症を疑います。子宮底長の増加が小さく、母体体重も増えず、胎児推定体重も小さい場合には、胎児発育不全を考えます。

反対に、子宮底長や腹囲が妊娠週数に比べて大きい場合は、巨大児、多胎妊娠、羊水過多などを検討します。

妊娠時期に応じた検査

妊娠初期には、血液型、不規則抗体、血算、血糖、B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒、風疹抗体などを確認します。

妊娠中期には、貧血や糖代謝異常の確認が行われます。妊娠後期には、再度の血算やB群溶血性レンサ球菌検査などが行われます。実施時期や検査内容は、妊娠経過や施設によって一部異なります。

妊婦健康診査は保健指導の場でもある

妊婦健康診査は、医学的異常を発見するためだけの時間ではありません。食事、体重管理、就労、睡眠、喫煙、飲酒、服薬、性行為、乳房ケア、出産準備などについて保健指導を行います。

さらに、妊婦の不安、抑うつ、家族関係、経済状態、社会的孤立、育児支援者の有無も確認します。身体所見に問題がなくても、妊娠中から養育支援が必要な場合があります。


4.正期産の定義

⑮ 正期産

妊娠37週0日以降、妊娠42週0日未満、すなわち妊娠41週6日までの分娩を正期産といいます。(jsog.or.jp)

「42週未満」という表現を、42週6日までと誤解してはいけません。

妊娠42週0日になった時点で、正期産ではなく過期産に分類されます。

早産・正期産・過期産

妊娠22週0日から36週6日まで
→ 早産

妊娠37週0日から41週6日まで
→ 正期産

妊娠42週0日以降
→ 過期産

妊娠22週未満で妊娠が終了した場合は、日本では流産として扱われます。(jsog.or.jp)

正期産の中にも区分がある

現在は、正期産の期間をさらに細かく分ける考え方があります。

妊娠37週0日から38週6日
→ 早期正期

妊娠39週0日から40週6日
→ 満期正期

妊娠41週0日から41週6日
→ 後期正期

すべて正期産の範囲ですが、呼吸障害、哺乳、分娩誘発、胎盤機能などのリスクは週数によって完全に同じではありません。(jsog.or.jp)

境界で間違えない

妊娠36週6日
→ 早産

妊娠37週0日
→ 正期産

妊娠41週6日
→ 正期産

妊娠42週0日
→ 過期産

この1日の違いが、試験では頻繁に問われます。


5.妊娠中の糖代謝

⑯ インスリン

妊娠中は、インスリンに対する抵抗性が亢進します。

インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞へ取り込ませ、血糖値を下げる方向へ働きます。

しかし、妊娠中期以降は胎盤由来のホルモンなどによって、母体の細胞がインスリンへ反応しにくくなります。この状態がインスリン抵抗性です。

なぜ妊娠中にインスリン抵抗性が高まるのか

胎児は、自分で食事を摂取できません。胎盤を介して母体からブドウ糖を受け取ります。

母体のインスリン作用が妊娠前と同じように強く働けば、母体の細胞がブドウ糖を多く取り込み、胎児へ渡るブドウ糖が少なくなります。そこで妊娠中は、母体のインスリン抵抗性を高め、食後の血糖をある程度維持して、胎児へブドウ糖を供給しやすい代謝環境をつくります。

この変化には、ヒト胎盤性ラクトゲン、プロゲステロン、エストロゲン、コルチゾール、プロラクチンなどが関係します。

つまり、インスリン抵抗性の亢進そのものは、胎児へエネルギーを供給するための生理的適応です。

どのように妊娠糖尿病へ進むのか

母体の膵臓がインスリン分泌を増加させ、インスリン抵抗性を補えれば、血糖は正常範囲に保たれます。

しかし、もともとの体質、肥満、糖尿病の家族歴、年齢、多嚢胞性卵巣症候群、妊娠糖尿病既往などがあり、インスリン分泌の増加が不十分であると、血糖値が上昇して妊娠糖尿病を発症します。

母体高血糖が胎児へ与える影響

ブドウ糖は胎盤を通過しますが、母体のインスリンは通常、胎盤をほとんど通過しません。

母体が高血糖になると、胎児も高血糖になります。胎児は高い血糖へ対応するため、自分の膵臓からインスリンを多量に分泌します。

胎児のインスリンは成長促進因子として働くため、脂肪やグリコーゲンの蓄積が進み、LGA児や巨大児となる可能性があります。巨大児では肩甲難産、分娩外傷、帝王切開などのリスクが高くなります。

出生すると、胎盤からのブドウ糖供給は突然途絶えます。しかし、新生児の高インスリン状態はしばらく続きます。そのため、糖尿病母体児では出生後に低血糖を生じやすくなります。


⑰ 空腹時血糖、⑱ ブドウ糖

公式解答では、全妊婦を対象に行われる糖代謝異常のスクリーニングとして、妊娠初期の空腹時血糖測定、妊娠中期のブドウ糖負荷試験とされています。入試答案では公式解答に従って、⑰「空腹時血糖」、⑱「ブドウ糖」と記載します。

ただし、ここは試験の公式解答と、現在の臨床で用いられる標準的な検査の整理を分けて理解する必要があります。

臨床上のスクリーニング

現在の産科診療では、一般に妊娠初期に随時血糖などを測定し、妊娠中期には50gブドウ糖負荷試験を用いて糖代謝異常のスクリーニングを行います。

50gブドウ糖負荷試験は、食事の時間にかかわらず50gのブドウ糖を摂取し、1時間後の血糖値を測定する検査です。これは確定診断ではなく、精密検査が必要な妊婦を見つけるためのスクリーニングです。

スクリーニングで陽性となった場合などに、75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、妊娠糖尿病の診断を行います。

つまり、

50gブドウ糖負荷試験
→ スクリーニング

75g経口ブドウ糖負荷試験
→ 診断

という違いがあります。

75g経口ブドウ糖負荷試験の診断基準

妊娠糖尿病は、75g経口ブドウ糖負荷試験において次のいずれか一つ以上を満たした場合に診断されます。

空腹時血糖値
→ 92mg/dL以上

負荷1時間値
→ 180mg/dL以上

負荷2時間値
→ 153mg/dL以上

三つすべてを満たす必要はありません。一つでも基準値以上であれば、妊娠糖尿病に該当します。(jsog.or.jp)

試験での書き分け

今回の空欄問題では、⑰に「空腹時血糖」、⑱に「ブドウ糖」と書くのが正解です。

しかし、記述問題で「現在一般的に行われる糖代謝異常スクリーニングを説明しなさい」と問われた場合には、妊娠初期の随時血糖、妊娠中期の50gブドウ糖負荷試験、陽性時の75g経口ブドウ糖負荷試験という流れを説明する方が正確です。

公式解答を覚えることと、臨床知識を正確に理解することを分けなければなりません。


妊娠糖尿病の看護

妊娠糖尿病と診断された場合、まず食事療法と血糖測定を行います。食事量を一律に減らすのではなく、母体の必要栄養量と胎児発育を確保しながら、食後高血糖を抑える必要があります。

食事を複数回に分ける分割食が用いられることもあります。食事療法で目標血糖値を維持できない場合には、インスリン療法が行われます。

助産師・看護師は、血糖値だけでなく、食事摂取、体重増加、低血糖症状、胎児発育、羊水量、妊婦の治療理解や心理状態を観察します。

妊婦が「食べたから糖尿病になった」「自分のせいで赤ちゃんが大きくなった」と自責的になる場合があります。しかし、妊娠糖尿病は胎盤ホルモンと体質が大きく関係する病態です。責める指導ではなく、病態を説明し、実行可能な自己管理方法を一緒に考える必要があります。

産後も終わりではない

胎盤が娩出されるとインスリン抵抗性は低下し、多くの場合、血糖は改善します。

しかし、妊娠糖尿病を経験した女性は、将来2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。そのため、産後の75g経口ブドウ糖負荷試験や、長期的な体重・血糖管理が重要です。妊娠糖尿病は妊娠中だけの一時的な問題ではなく、女性の将来の健康リスクを知る機会でもあります。


6.子宮底長の測定

⑲ 仰臥位

子宮底長は、原則として仰臥位で測定します。

姿勢によって子宮の位置や腹壁の緊張が変化すると、測定値にも影響します。そのため、毎回できるだけ同じ条件で測定することが重要です。

妊娠後期の妊婦を長時間仰臥位にすると、増大した子宮が下大静脈を圧迫し、仰臥位低血圧症候群を生じることがあります。測定は必要な時間内で行い、気分不良、悪心、冷汗、血圧低下などがみられた場合は、速やかに左側臥位へ変更します。

⑳ 恥骨結合上縁

子宮底長は、恥骨結合上縁から子宮底の最高部までの距離を測定します。

恥骨結合上縁を正確に触知し、子宮底の最も高い位置を確認して、メジャーを腹壁の中央に沿わせます。

測定前には排尿を促します。膀胱が充満していると子宮が上方へ押し上げられ、実際より子宮底長が大きく測定される可能性があるためです。

子宮底長測定の手順

まず妊婦へ測定の目的を説明し、排尿を済ませてもらいます。仰臥位になって腹部を露出し、プライバシーと保温へ配慮します。

腹部を触診して子宮底の最高部を確認し、恥骨結合上縁から子宮底最高部までを測定します。毎回できるだけ同じ方法、同じ体位で測定し、前回値と比較します。

一度の測定値だけで異常を断定せず、妊娠週数、腹囲、母体体重、胎児推定体重、羊水量などと合わせて判断します。

子宮底長から何が分かるのか

子宮底長は、妊娠週数に伴う子宮の増大と胎児発育を簡便に確認する指標です。

子宮底長の増加が小さい場合には、次の可能性を考えます。

胎児発育不全、羊水過少、妊娠週数の誤り、胎児の横位、児頭の骨盤内下降などです。

反対に、妊娠週数に比べて大きい場合には、巨大児、羊水過多、多胎妊娠、子宮筋腫、妊娠週数の誤りなどを考えます。

ただし、子宮底長だけで胎児発育不全や巨大児を確定することはできません。異常が疑われる場合には、超音波検査による胎児計測や羊水量の評価が必要です。

測定値へ影響するもの

子宮底長には、胎児の大きさ以外にも、母体の体格、皮下脂肪、膀胱充満、胎位、胎児数、羊水量、子宮筋腫、測定者の技術などが影響します。

そのため、「妊娠週数と子宮底長が一致していないから異常」と単純には判断しません。前回からの増加量や、ほかの所見との整合性を評価する必要があります。


問題Ⅲで問われている文章読解力

この問題では、知識を持っていても文章を正しく追えなければ空欄を埋められません。

たとえば①と②は、どちらも内分泌に関係する器官です。しかし文章には、

①から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌される
②から性腺刺激ホルモンが分泌される

とあります。

「放出ホルモン」を分泌するのが視床下部であり、その刺激を受けて性腺刺激ホルモンを分泌するのが下垂体前葉です。「思春期のホルモン」という単語だけで選ぶのではなく、前後の作用関係を追う必要があります。

同様に、⑧と⑨は「どこから分泌され、どの二次性徴へ作用するか」を読まなければなりません。

卵胞から分泌され、乳房発育に関係する
→ エストロゲン

副腎から分泌され、陰毛発生に関係する
→ アンドロゲン

という対応です。


試験で書いてはいけない答案

①を「下垂体」とする

性腺刺激ホルモン放出ホルモンを分泌するのは視床下部です。

②を「下垂体」とだけ書く

解剖学的には下垂体前葉が正確です。問題文も詳細な分泌部位を求めているため、「下垂体前葉」と書きます。

⑤を「月経」とする

成熟卵胞から卵子が排出される現象は排卵です。月経は、妊娠が成立しなかったときに子宮内膜が剝離して出血する現象です。

⑨を「テストステロン」とする

テストステロンはアンドロゲンの一種ですが、この問題は副腎から分泌され、陰毛発生へ関与するホルモン群を問うため、公式解答は「アンドロゲン」です。

⑩を「高齢初産婦」とする

一般的な意味は通じますが、公式解答は「高年初産婦」です。専門用語を正確に記載します。

⑫を「36」とする

2週間に1回なのは妊娠24週から35週までです。36週からは1週間に1回となります。

⑮を「満期産」とする

この設問の公式解答は正期産です。37週0日から41週6日の分娩を正期産といいます。

⑰を「随時血糖」とする

現行の臨床知識としては妊娠初期の随時血糖が重要ですが、今回の公式解答は「空腹時血糖」です。入試問題の採点では、公式解答を優先します。

⑳を「恥骨結合下縁」とする

子宮底長は恥骨結合上縁から測定します。


問題Ⅲの出題意図

公式資料では、問題Ⅲについて、母性看護学の基礎知識を幅広く問い、文章読解力と知識の理解度・定着度を評価したとされています。

出題範囲は、思春期、性周期、妊娠年齢、妊婦健康診査、妊娠期間の分類、妊娠糖尿病、妊婦健康診査技術に及びます。これは、助産師が「分娩だけを扱う職種」ではなく、思春期から妊娠、出産、産後まで女性の生涯に関わる専門職であることを反映しています。

また、ホルモンの分泌経路やインスリン抵抗性については、用語だけでなく生理学的な因果関係が問われています。子宮底長については、知識を実際の測定技術へ置き換えられるかが確認されています。

したがって、東京都立大学助産学専攻科が求めているのは、国家試験の正答番号を暗記している受験生ではありません。基礎知識を正確に理解し、文章から必要な情報を読み取り、臨床場面へ結び付けられる受験生です。


問題Ⅲの最終整理

思春期では、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、下垂体前葉から性腺刺激ホルモンが分泌されます。卵巣の卵胞が発育し、成熟後に排卵が起こります。

乳房発育には卵胞由来のエストロゲンが、陰毛発生には副腎由来のアンドロゲンが関係します。

35歳以上で初めて分娩する女性は、高年初産婦です。

妊婦健康診査は、妊娠23週まで4週間に1回、24~35週は2週間に1回、36週以降は1週間に1回が標準で、合計14回程度行います。

妊娠37週0日から41週6日までの分娩を正期産といいます。

妊娠中はインスリン抵抗性が高まり、糖代謝異常を発症しやすくなります。入試上の解答は妊娠初期の空腹時血糖、妊娠中期のブドウ糖負荷試験ですが、臨床上はスクリーニングと75g経口ブドウ糖負荷試験による診断を区別します。

子宮底長は仰臥位で、恥骨結合上縁から子宮底最高部まで測定します。測定値だけで異常を断定せず、母体・胎児のほかの情報と統合して評価します。


筆記試験・問題Ⅳ「妊娠週数・NST・前置胎盤・帝王切開後の母児看護」解答解説

問題Ⅳは、32歳の初産婦Aさんについて、妊娠成立から妊娠後期、前置胎盤・骨盤位の診断、帝王切開、新生児の出生直後の呼吸状態、術後5時間の母児看護までを連続して考える事例問題です。問題冊子の3~4ページに事例と問1~9が掲載されています。

公式資料では、母性看護学の基礎知識だけでなく、文章読解力、説明力、個別性に応じて看護目標の優先順位を決める力、目標に対応した看護計画を具体的かつ系統的に立案する力を評価したと説明されています。

この問題で重要なのは、各空欄を別々に解くことではありません。妊娠週数、胎位、胎盤位置、出血、胎児心拍数、新生児の呼吸、帝王切開後の母体状態をつなぎ、その時点で母児に何が起こる可能性があり、何を優先して観察・援助するかを考える必要があります。


問題Ⅳ 解答

問1 ① 54.5kg

問2 ② 4月17日

問3
20分
2回
15bpm
15秒
2分

問4
骨盤位
辺縁前置胎盤

問5 ⑩ 37週0日

問6 ⑪ 遅発一過性徐脈

問7
帝王切開によって胎児肺液の吸収・排出が遅れ、出生後の呼吸適応が一時的に遅延したため

問8・問9については、公式資料に模範答案が掲載されていません。後半で、本事例の情報から作成したオリジナルの看護目標・看護計画を示します。


問1 BMIから非妊時体重を求める

Aさんの身長は165cm、BMIは20.0です。

BMIは、次の式で求めます。

BMI=体重kg÷身長m²

体重を求める場合は式を変形します。

体重kg=BMI×身長m²

身長165cmをmへ直すと1.65mです。

20.0×1.65×1.65
=20.0×2.7225
=54.45kg

小数第2位を四捨五入し、有効数字3桁で表すと、答えは54.5kgです。

公式解答「56.3kg」は計算と一致しない

提供された模範解答には、問1の解答として「56.3」と記載されています。

しかし、問題文の身長165cm、BMI20.0から計算すると54.45kgであり、56.3kgにはなりません。56.3kgの場合のBMIは約20.7です。

したがって、本noteでは次のように区別します。

公式資料の記載
56.3kg

設問条件から数学的に導かれる解答
54.5kg

実際の採点で公式解答がどのように運用されたかは、提供された資料だけでは確認できません。ただし、受験対策としては、計算式を明記して54.5kgと答えるのが妥当です。

周辺知識――BMIは妊娠中の現在体重ではなく非妊時体重で評価する

妊娠中の体重増加目標を考える際は、原則として妊娠前のBMIを用います。妊娠が進むと、胎児、胎盤、羊水、循環血液量、乳房、子宮などの増加によって体重が変化するため、妊娠後半の体重からBMIを計算して肥満度を判断することはできません。

AさんのBMI20.0は普通体重に該当します。妊婦健康診査では最終的な増加量だけでなく、妊娠週数に応じた増え方、浮腫、血圧、胎児発育、食事内容などを総合して判断します。


問2 次回月経予定日を求める

Aさんの最終月経開始日は3月20日で、月経周期は28日間です。

次回の月経開始予定日は、最終月経開始日の28日後となります。

3月20日+28日=4月17日

したがって、②の答えは4月17日です。

5月1日の受診時点では、予定日から14日間、月経が遅れていたことになります。

「次回月経予定日」と「分娩予定日」を混同しない

本問で尋ねられているのは、妊娠していなければ始まる予定だった次回月経の日です。分娩予定日ではありません。

28日型の規則的な月経周期で、最終月経開始日が3月20日なら、分娩予定日は概算で12月25日です。これは最終月経開始日を妊娠0週0日として280日後を求めたものです。

ただし、月経周期が不規則な場合、排卵日が大きくずれている場合、最終月経日が不確かな場合には、最終月経だけで正確な妊娠週数を決めることはできません。妊娠初期の超音波検査による胎児計測も用いて予定日を決定します。


問3 NSTで胎児状態が良好と判断した基準

公式解答は次のとおりです。

20分間に、2回以上、15bpm以上、15秒以上、2分未満の一過性頻脈

本事例は妊娠36週0日です。妊娠32週以降のNSTでは、胎児心拍数基線から15bpm以上上昇し、15秒以上2分未満持続する一過性頻脈が、20分間に2回以上みられることが、反応型と判断する目安になります。

一過性頻脈が示すもの

胎児が動いた際に心拍数が一時的に上昇するためには、自律神経系と心筋の反応性が保たれている必要があります。

したがって、適切な一過性頻脈が認められることは、その時点で胎児の酸素化と神経学的反応性が保たれていることを示す所見の一つです。

ただし、一過性頻脈がみられないだけで、直ちに胎児低酸素と判断するわけではありません。胎児が睡眠周期に入っている場合には、一時的に胎動と一過性頻脈が少なくなることがあります。その場合は観察時間を延長し、胎児心拍数基線、基線細変動、胎動、妊娠週数、母体状態を含めて評価します。

⑦が「2分」である理由

一過性頻脈が2分以上10分未満持続する場合は、遷延一過性頻脈として扱います。10分以上持続すれば、心拍数基線そのものが変化したと判断します。

したがって、通常の一過性頻脈は、

15秒以上、2分未満

と定義されます。

妊娠32週未満では基準が異なる

妊娠32週未満では自律神経系が未成熟であるため、15bpm・15秒の基準を満たさないことがあります。その場合には、10bpm以上、10秒以上の一過性頻脈を用いて評価することがあります。

入試では「一過性頻脈はすべて15bpm・15秒」と固定せず、妊娠週数を確認する必要があります。


問4 胎位と胎盤位置の診断

⑧ 骨盤位

超音波検査で児頭が子宮底側に位置しているため、胎児の臀部または下肢が母体骨盤側にあると考えられます。したがって診断は骨盤位です。

頭位・骨盤位・横位

胎位は、胎児の長軸と母体の長軸との関係を表します。

胎児の頭部が母体骨盤側にある場合は頭位、臀部または下肢が母体骨盤側にある場合は骨盤位、胎児の長軸が母体の長軸と交差している場合は横位です。

骨盤位には、臀部が先進する単殿位・複殿位、足が先進する足位、膝が先進する膝位などがあります。種類によって臍帯脱出や経腟分娩時の危険性が異なります。

なぜ骨盤位では経腟分娩の危険が高くなるのか

頭位では、最も大きく硬い児頭が先に産道を通過します。児頭が通過すれば、その後の肩や体幹も通過できる可能性が高くなります。

骨盤位では、小さい臀部や下肢が先に通過した後、最後に大きな児頭が娩出されます。子宮口が十分に開大していない場合や、児頭が引っかかった場合には、児頭娩出困難や臍帯圧迫が起こる可能性があります。

本事例では骨盤位だけでなく前置胎盤も認められており、安全な分娩方法を選択するうえで帝王切開の必要性が高い状態です。


⑨ 辺縁前置胎盤

胎盤の下端が内子宮口に達しているため、診断は辺縁前置胎盤です。

前置胎盤は、胎盤が正常より低い位置へ付着し、内子宮口へ達する、または内子宮口を覆う状態です。

古典的な分類では、胎盤が内子宮口を完全に覆う全前置胎盤、一部を覆う部分前置胎盤、胎盤辺縁が内子宮口へ達する辺縁前置胎盤に分けられます。

胎盤下端が内子宮口へ達しておらず、近接している場合は低置胎盤と呼びます。胎盤位置の診断には経腟超音波検査が有用です。(jsog.or.jp)

前置胎盤で鮮血がみられる理由

妊娠後期になると子宮下部が伸展し、子宮頸管にも変化が起こります。しかし、胎盤は子宮壁と同じように伸びることができません。

胎盤付着部と子宮壁との間にずれが生じると、胎盤辺縁が部分的に剝離して出血します。そのため、前置胎盤では妊娠後半に突然の性器出血が生じることがあります。

典型的には腹痛を伴わない鮮紅色の出血ですが、すべての症例が同じ症状を示すわけではありません。

内診時に注意する理由

前置胎盤が疑われる妊婦に不用意な指による内診を行うと、胎盤を直接刺激し、大量出血を誘発する可能性があります。

そのため、胎盤位置を確認していない妊娠後半の性器出血では、前置胎盤の可能性を考えます。出血量、母体バイタルサイン、胎児心拍数を確認し、超音波検査などによって胎盤位置を評価します。

外回転術は行えるか

骨盤位では、腹壁上から胎児を回転させて頭位にする外回転術を検討する場合があります。しかし、前置胎盤は出血の危険があるため、通常、外回転術を行う状況ではありません。

本事例では「骨盤位だから回転させればよい」と考えず、前置胎盤を含む全体の状態から分娩方法を判断する必要があります。


問5 12月4日の妊娠週数

問題文では、11月27日に妊娠36週0日となっています。

その7日後である12月4日は、

妊娠37週0日

です。

したがって⑩の答えは37週0日です。

妊娠週数は、妊娠0週0日から6日まで、1週0日から6日までという形で数えます。

妊娠36週6日の翌日は妊娠37週0日となり、この日から正期産の範囲に入ります。


問6 胎児心拍数波形の判読

問題文では、胎児心拍数基線が150bpmであり、子宮収縮が始まるたびに、30秒以上かけて緩やかに135~140bpmまで低下し、子宮収縮が消退し始める頃から緩やかに回復しています。

公式解答は遅発一過性徐脈です。

遅発一過性徐脈の特徴

遅発一過性徐脈は、胎児心拍数が30秒以上かけて緩やかに低下し、子宮収縮の最強点よりも遅れて心拍数の最下点が現れる波形です。回復も子宮収縮より遅れます。

子宮収縮中は、子宮筋内の血管が圧迫され、子宮胎盤血流が一時的に減少します。胎盤機能と胎児予備能が保たれていれば、この一時的な低下に耐えられます。

しかし、胎盤から胎児への酸素供給に余裕がない場合には、子宮収縮に伴って胎児酸素分圧が低下し、遅れて心拍数が低下します。

本事例で何を考えるか

Aさんには辺縁前置胎盤があり、当日は鮮血の付着も認められています。さらに、8~9分間隔で子宮収縮が始まっています。

したがって、出血と子宮収縮によって胎盤循環が影響を受け、胎児が収縮のたびに酸素供給の低下を受けている可能性を考えます。

ただし、遅発一過性徐脈という名称だけで胎児の重症度を断定することはできません。基線細変動、反復性、低下幅、持続時間、母体出血量、母体血圧などを合わせて評価します。

早発・遅発・変動一過性徐脈の違い

早発一過性徐脈は、子宮収縮とほぼ鏡像関係にあり、主に児頭圧迫に伴う迷走神経反射で起こります。

遅発一過性徐脈は、心拍数低下の最下点が子宮収縮の最強点より遅れ、子宮胎盤循環不全や胎児低酸素を考えます。

変動一過性徐脈は、心拍数が30秒未満で急速に低下し、子宮収縮との時間関係が一定しません。主な原因として臍帯圧迫を考えます。

遷延一過性徐脈は、心拍数低下が2分以上10分未満持続するものです。

波形の深さだけで判断せず、心拍数がどの程度の速さで下がったか、子宮収縮のどの時点で最下点になったかを確認します。


帝王切開(カイザー)に至った臨床経過

Aさんは妊娠37週0日に性器出血と子宮収縮を認め、胎児心拍数陣痛図で遅発一過性徐脈を反復しています。

さらに、骨盤位と辺縁前置胎盤が持続しています。

この状態では、妊娠を継続して経腟分娩を待つことにより、胎盤からの出血が増加する危険や、胎児の酸素化が悪化する危険があります。そのため、腹式深部帝王切開術によって娩出する判断には合理性があります。

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔

本事例では、脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔を組み合わせています。

脊髄くも膜下麻酔は作用発現が速く、帝王切開に必要な強い麻酔効果を得やすい方法です。硬膜外カテーテルを併用すれば、手術が長引いた場合の麻酔追加や、術後鎮痛に利用できます。

一方、交感神経遮断による血圧低下、悪心、徐脈、呼吸への影響、下肢の運動・知覚低下、尿意低下などに注意します。


新生児の出生直後の評価

女児Cちゃんは出生直後に啼泣し、Apgarスコアは1分後9点、5分後9点でした。

四肢にチアノーゼが認められたため、皮膚色の項目が1点となり、その他の心拍数、呼吸、筋緊張、刺激反応は各2点だったと考えられます。

四肢チアノーゼと中心性チアノーゼ

出生直後には末梢循環がまだ十分に確立しておらず、手足が青紫色に見える四肢チアノーゼがみられることがあります。

口唇や舌、体幹まで青い中心性チアノーゼとは区別します。四肢だけのチアノーゼで、呼吸、心拍、筋緊張が良好であれば、胎外循環への移行過程としてみられる場合があります。

ただし、Apgarスコアは出生直後の児の状態を簡便に共有する指標であり、単独で新生児仮死や将来の神経学的予後を診断するものではありません。


問7 Cちゃんに多呼吸と鼻翼呼吸が生じた原因

答案例

帝王切開で出生したため、陣痛に伴うカテコラミン分泌や肺上皮のナトリウム吸収機構による胎児肺液の吸収が十分に進まず、肺内に液体が一時的に残存して出生後の呼吸適応が遅れたためと考える。

Cちゃんには、呼吸数60回/分以上の多呼吸と鼻翼呼吸が認められています。これらは呼吸努力を示す所見です。新生児の努力呼吸には、多呼吸、鼻翼呼吸、呻吟、陥没呼吸などがあります。

帝王切開(カイザー)と胎児肺液

胎児期の肺は空気ではなく肺液で満たされています。出生に向けて、肺胞上皮のナトリウムチャネルが活性化され、ナトリウムと水分が肺胞内から間質、血管、リンパ系へ吸収されます。

陣痛に伴うカテコラミンなどのホルモン変化は、この肺液吸収を促進します。陣痛開始前の帝王切開では、この生理的変化が十分に起こらず、肺液の吸収が遅れることがあります。肺内に液体が残ると肺コンプライアンスが低下し、児は換気を維持するために呼吸数を増加させます。

従来は「産道を通る際に胸郭が圧迫されなかったから肺液が残った」と説明されることが多くありました。胸郭への物理的圧迫も一部関係しますが、現在は、肺上皮のナトリウム輸送を介した能動的な肺液吸収が中心的な機序と考えられています。

一過性多呼吸と断定してよいか

Cちゃんの症状は生後30分で消失しています。新生児一過性多呼吸を考えさせる経過ではありますが、症状が非常に短時間で改善しているため、答案では病名を断定するよりも、

帝王切開後の胎児肺液吸収遅延による一時的な呼吸適応の遅れ

と説明する方が正確です。

呼吸障害が持続する場合には、新生児一過性多呼吸だけでなく、呼吸窮迫症候群、肺炎・敗血症、気胸、胎便吸引症候群、先天性心疾患、遷延性肺高血圧症なども鑑別します。

「30分で改善したから観察不要」ではない

一度多呼吸と鼻翼呼吸がみられた児では、症状が消失した後も呼吸状態を継続して観察します。

呼吸数、陥没呼吸、呻吟、鼻翼呼吸、皮膚色、経皮的酸素飽和度、体温、活気、哺乳時の呼吸状態を確認します。

呼吸数が多いまま授乳すると、吸啜・嚥下・呼吸の協調が乱れ、誤嚥や疲労につながる可能性があります。呼吸が安定していることを確認してから授乳を進めます。


手術終了時の母体情報をどう読むか

手術は10時30分に終了し、出血量は羊水を含めて1,000mL、尿量200mL、輸液量1,800mLです。子宮底は臍下1横指で硬く触れ、全身状態は良好とされています。

出血量1,000mLをどう評価するか

産科出血では、累積出血量1,000mL以上、または出血量にかかわらず循環血液量減少の症状がある場合を、分娩後異常出血として警戒する考え方があります。

ただし、本事例の1,000mLには羊水が含まれています。したがって、1,000mLすべてを血液とみなすことも、反対に「羊水込みだから問題ない」と判断することもできません。

前置胎盤、帝王切開、術後早期という背景を踏まえ、出血の継続、子宮収縮、バイタルサイン、尿量、顔色、意識、血液検査の推移を評価します。

子宮底が硬いことの意味

子宮底が臍下1横指で硬く触れることから、手術直後の時点では子宮収縮が保たれており、明らかな子宮弛緩は認めていないと考えられます。

しかし、子宮が硬くても、手術創、胎盤付着部、子宮切開部などから出血する可能性があります。子宮収縮が良好であることだけで、術後出血を否定してはなりません。

尿量200mL

尿量は循環血液量と腎血流を評価する重要な所見です。手術時間は約1時間40分であり、尿量200mLは、その時点では尿が確保されている情報です。

ただし、術後も時間尿量を継続して確認します。尿量減少がみられる場合には、循環血液量減少、低血圧、腎血流低下、カテーテル閉塞などを考えます。


問8 優先順位の高い看護目標3つ

11時から16時までの5時間は、帝王切開直後の母体と、出生直後に一過性の呼吸障害を示した新生児の状態を同時に観察する時間です。

優先順位は、生命に直結する異常の予防・早期発見から考えます。

看護目標1

Aさんは循環動態が安定し、子宮収縮が保たれ、術後出血の増加を認めずに経過する。

看護目標2

Aさんは麻酔および手術から安全に回復し、呼吸・意識・下肢の知覚と運動機能が保たれ、疼痛が耐えられる範囲に調整される。

看護目標3

Cちゃんは呼吸・酸素化・体温を安定して維持し、呼吸障害を再発することなく、母児の状態に応じて早期接触と授乳を開始できる。

「母親が安心する」「母児関係が形成される」といった心理・関係性の目標も重要です。しかし、術後5時間という時間帯では、出血、麻酔後合併症、新生児呼吸障害への対応が優先されます。

母児の生命と全身状態が安定したうえで、早期接触、授乳、出産体験への支援へ進みます。


問9 看護目標に対応した看護計画

看護目標1

Aさんは循環動態が安定し、術後出血の増加を認めずに経過する

観察計画

血圧、脈拍、呼吸数、経皮的酸素飽和度、体温、意識状態を経時的に確認します。

脈拍数を収縮期血圧で除したショックインデックスも、循環血液量減少を捉える補助として用います。ただし、単一の数値だけで判断せず、顔色、冷汗、四肢冷感、口渇、落ち着きのなさ、倦怠感などと合わせて評価します。

子宮底の高さ、硬さ、正中からの偏位、圧迫時の出血を確認します。悪露・性器出血の量、色、血塊、急な流出感を観察します。

腹部膨満、持続する強い腹痛、創部ドレッシングへの血液浸透も確認します。性器出血が少なくても腹腔内出血が起こっている可能性があるためです。

時間尿量、輸液量、出血量、悪心・嘔吐を確認し、必要に応じて血算、ヘモグロビン、ヘマトクリットなどの検査結果を確認します。

援助計画

子宮が軟らかい場合には、子宮底を確認して必要な子宮収縮への援助を行い、直ちに報告します。子宮収縮薬や輸液は指示された速度で確実に投与します。

尿道カテーテルの屈曲・閉塞を防ぎ、膀胱の過伸展を予防します。膀胱が充満すると子宮が偏位し、子宮収縮を妨げる可能性があります。

出血増加、血圧低下、頻脈、尿量減少、意識変化などを認めた場合には、応援要請、医師への報告、酸素・静脈路・採血・輸血準備などを速やかに進めます。

説明計画

急に出血が増えた感じ、強い腹痛、めまい、動悸、息苦しさ、気分不良がある場合には、すぐに知らせるよう説明します。

WHOも、産後24時間以内は母体のバイタルサイン、子宮復古、性器出血を確認することを重視しています。


看護目標2

Aさんは麻酔・手術から安全に回復し、疼痛が調整される

観察計画

意識レベル、呼吸数、呼吸の深さ、経皮的酸素飽和度、血圧、脈拍を確認します。

脊髄くも膜下麻酔による交感神経遮断の影響として、低血圧、悪心、めまい、冷感などに注意します。

下肢の知覚、しびれ、運動機能、左右差を経時的に確認します。麻酔効果が残っている間に本人だけで立位・歩行を行うと転倒する危険があります。

創部痛、後陣痛、肩や背部の痛みを区別し、痛みの部位、強さ、持続時間、増悪因子を評価します。鎮痛薬使用後は効果と副作用を再評価します。

悪心、嘔吐、眠気、掻痒感、頭痛、呼吸抑制の有無を確認します。硬膜外・脊髄くも膜下腔へオピオイドが使用されている場合には、遅れて呼吸抑制が起こる可能性にも注意します。

下肢の腫脹、熱感、疼痛、左右差を確認し、静脈血栓塞栓症の兆候にも注意します。帝王切開と術後の不動は血栓症リスクを高めます。

援助計画

麻酔効果が残っている間はベッド柵を使用し、体位変換を介助します。本人だけで起き上がったり歩行したりしないよう説明します。

呼吸状態が安定していれば、深呼吸や下肢の自動運動を促します。知覚・運動機能が回復し、循環動態が安定した後は、施設の基準に従って段階的に離床します。

弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置が使用されている場合には、装着状態、皮膚、循環を確認します。

創部を支持しながら咳嗽や体位変換を行えるよう援助し、指示された鎮痛薬を適切に使用します。痛みを我慢させるのではなく、呼吸、休息、離床、授乳に支障が出ない程度へ調整します。

説明計画

鎮痛薬を使用することは回復を遅らせるのではなく、深呼吸、睡眠、早期離床、授乳を行いやすくすることを説明します。

下肢の急な痛み・腫れ、胸痛、息苦しさ、強い頭痛などがある場合には、直ちに知らせるよう説明します。


看護目標3

Cちゃんは呼吸と体温を安定して維持し、安全に母児接触・授乳を開始できる

観察計画

呼吸数を1分間測定し、呼吸の規則性を確認します。鼻翼呼吸、呻吟、陥没呼吸、無呼吸、シーソー呼吸の有無を観察します。

皮膚色、口唇・舌の色、経皮的酸素飽和度、心拍数、筋緊張、活気を確認します。

呼吸数が再び60回/分を超える場合、努力呼吸が出現する場合、酸素化が低下する場合には、胎外生活への適応遅延だけでなく、肺疾患、感染症、心疾患などを考えて速やかに報告します。

腋窩体温、四肢冷感、皮膚状態を確認します。低体温になると酸素とブドウ糖の消費量が増え、呼吸状態を悪化させる可能性があります。

吸啜力、嚥下、授乳中の呼吸、疲労、チアノーゼ、むせ込みを確認します。呼吸数が多い状態で無理に経口哺乳を進めません。

必要に応じて血糖値を確認します。呼吸障害、低体温、哺乳不良がある児では、糖消費の増加や摂取不足による低血糖に注意します。

援助計画

適切な温熱環境を整え、濡れた衣類やリネンを取り除きます。呼吸が安定し、母体の状態も良好であれば、医療者が観察できる環境で母子の皮膚接触を行います。

気道が確保できる頭頸部の位置を保ち、顔が母体や寝具へ埋もれないようにします。

呼吸数、努力呼吸、酸素化が安定していることを確認してから授乳を開始します。吸着、吸啜、嚥下、呼吸の協調を観察し、必要に応じて授乳姿勢を介助します。

呼吸障害が再出現した場合には授乳を中断し、保温、酸素化の評価、医師・新生児担当者への報告を行います。

WHOは、状態が安定した母児について、保温、早期の皮膚接触、授乳支援を基本的な産後・新生児ケアとして位置づけています。

説明計画

母親と父親に、出生直後に一時的な多呼吸がみられたため呼吸状態を継続して確認していること、現在の状態を分かりやすく説明します。

「赤ちゃんに問題があるから離されている」と不安を抱かないよう、観察の目的と、母児接触・授乳を始められる条件を具体的に伝えます。


さらに加えたい心理・家族への支援

問8では三つの目標に絞る必要がありますが、母児の全身状態が安定した後には、Aさんの出産体験への支援も必要です。

Aさんは骨盤位と前置胎盤のため入院し、出血と胎児心拍数異常がみられた当日に帝王切開となっています。予定していた出産のイメージと異なり、「自分で産めなかった」「赤ちゃんが苦しくなったのは自分のせいではないか」と考える可能性があります。

手術を受け入れられたかどうかを一方的に判断せず、本人がどのように出産を受け止めているかを確認します。経過を時系列で説明し、母体出血と胎児低酸素の危険を避けるために必要な帝王切開であったことを伝えます。

また、Cちゃんの呼吸が安定した後には、見る、触れる、声をかける、抱く、授乳するなど、Aさんが母親として児へ関われる機会を確保します。


この事例で看護目標の優先順位を決める方法

事例問題で目標を三つ求められた際には、思いついた援助を並べるのではなく、次の順番で考えます。

第1優先 生命に直結する異常

母体の術後出血、循環不全、呼吸抑制、新生児の呼吸障害です。

第2優先 重篤な合併症の予防

麻酔後の転倒、静脈血栓塞栓症、創部合併症、低体温、低血糖などです。

第3優先 回復と母児関係の開始

疼痛緩和、休息、早期離床、母児接触、授乳、出産体験への支援です。

「母児の安全が保たれる」という抽象的な目標だけでは、何を観察して達成を判断するのか分かりません。

本事例では、

子宮収縮が保たれ、出血が増加しない
呼吸・循環と麻酔からの回復が安定する
新生児の多呼吸が再発せず、体温と酸素化が維持される

というように、観察可能な状態で目標を示す必要があります。


問題Ⅳで書いてはいけない答案

問1を公式解答だけ見て「56.3kg」とする

設問条件から計算すると54.5kgです。途中式を示せば、設問または模範解答の不整合を明確にできます。

骨盤位を「逆子」と書く

日常語として意味は通じますが、答案では医学用語である「骨盤位」を用います。

辺縁前置胎盤を「低置胎盤」とする

本事例では胎盤下端が内子宮口に達しています。内子宮口へ達していない低置胎盤とは区別します。

遅発一過性徐脈を「早発一過性徐脈」とする

子宮収縮と同時に始まったという一部分だけで判断してはいけません。30秒以上かけて緩やかに低下し、回復が子宮収縮より遅れるという波形全体を読みます。

問7を「産道で胸を圧迫されなかったから」とだけ書く

完全な誤りではありませんが、説明として不十分です。陣痛に伴うカテコラミン分泌と、肺上皮による胎児肺液吸収の遅れまで示すと、生理学的な根拠のある答案になります。

看護目標を「母児が安全・安楽に過ごせる」とする

抽象的であり、評価できません。何が起きず、どの状態を維持するのかを明記します。

看護計画を「バイタルサインを観察する」で終える

何の異常を想定し、どの項目を、どの所見と関連付けて評価するのかが必要です。


問題Ⅳの出題意図

問題Ⅳは、妊娠週数やNSTの基準を暗記しているかだけを見る問題ではありません。

前半では、BMI、月経周期、妊娠週数、NST、胎位、胎盤位置、胎児心拍数波形という基礎知識を、文章から正確に取り出す力が問われています。

中盤では、帝王切開後の新生児に生じた多呼吸について、分娩様式と胎外呼吸への移行を結び付け、生理学的に説明する力が問われています。

後半では、母体出血、麻酔後の回復、新生児呼吸障害という複数の問題を同時に抱えた母児について、限られた三つの看護目標へ優先順位を付け、それぞれに対応した観察・援助を具体化する力が問われています。

東京都立大学助産学専攻科が評価しようとしているのは、用語を記憶しているだけの受験生ではありません。

情報を時系列で整理し、病態生理からリスクを予測し、母児の生命に直結する問題から優先順位を付け、根拠のある看護へ変換できるかが、この事例問題の中心です。

追加した方がいい。むしろ、全問題の解説後に「この試験から広げて覚える重要事項」という総まとめ章を置くと、note全体の完成度が一段上がる。

今回の試験は、新生児の体温管理、母子保健関連法規、思春期の内分泌、妊婦健康診査、妊娠糖尿病、NST、前置胎盤、帝王切開後の母児看護まで横断している。問題ごとの詳しい解説だけでなく、最後に知識を再整理できる一覧があると、読者が復習しやすい。

ただし、本文の繰り返しにはせず、数値・定義・鑑別・臨床判断を短く確認できる章にするのがよい。


試験後も必ず覚えておきたい周辺知識・総まとめ

1.新生児の体温管理

新生児の主な熱喪失経路は、輻射・対流・蒸散・伝導である。

輻射は冷たい窓や壁へ、接触せずに熱が移動する現象である。対流は冷気や風による熱喪失、蒸散は皮膚表面の水分が蒸発するときの熱喪失、伝導は冷たい体重計や寝具へ直接触れることによる熱喪失である。

新生児は体重当たりの体表面積が大きく、皮下脂肪が少なく、体温調節機能も未熟である。低体温になると褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生が起こり、酸素とブドウ糖の消費が増加する。そのため、低体温を放置すると低酸素血症、低血糖、代謝性アシドーシスへ進む危険がある。

出生直後は、身体を速やかに乾燥させ、濡れたタオルを取り除き、頭部を含めて保温する。


2.母子保健関連法規

看護師・助産師の資格と業務
保健師助産師看護師法

人工妊娠中絶、受胎調節実地指導
母体保護法

妊婦健康診査、母子健康手帳、妊産婦・新生児への保健指導
母子保健法

特定妊婦、入院助産、乳児家庭全戸訪問事業
児童福祉法

助産所の開設・管理
医療法

特に混同しやすいのは、新生児訪問指導と乳児家庭全戸訪問事業である。

新生児訪問指導
→ 母子保健法

乳児家庭全戸訪問事業
→ 児童福祉法

また、特定妊婦は医学的診断名ではなく、出産後の養育について、妊娠中から特に支援が必要と判断された妊婦を指す。


3.思春期の内分泌

思春期になると、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、下垂体前葉から卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンが分泌される。

卵胞刺激ホルモン
→ 卵胞を発育させる

黄体形成ホルモン
→ 排卵と黄体形成を促す

エストロゲン
→ 乳房発育、子宮内膜の増殖、女性生殖器の発育

プロゲステロン
→ 子宮内膜を分泌期へ変化させ、妊娠成立に適した状態をつくる

副腎アンドロゲン
→ 陰毛・腋毛の発生

乳房発育と陰毛発生は、同じホルモンによって起こるわけではない。


4.妊娠・分娩週数の境界

妊娠22週0日から36週6日
早産

妊娠37週0日から41週6日
正期産

妊娠42週0日以降
過期産

試験では、36週6日と37週0日、41週6日と42週0日の境界が狙われやすい。

妊娠週数は、最終月経開始日を妊娠0週0日として計算する。月経周期が28日で規則的な場合、次回月経予定日は最終月経開始日の28日後となる。


5.妊婦健康診査の標準的な頻度

妊娠23週まで
→ 4週間に1回

妊娠24~35週
→ 2週間に1回

妊娠36週以降
→ 1週間に1回

標準的な健康診査回数は、妊娠期間全体で14回程度である。

ただし、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、多胎妊娠、胎児発育不全、前置胎盤などがある場合は、週数にかかわらず診察間隔が短くなる。


6.妊娠糖尿病

妊娠中期以降は、胎盤ホルモンの影響によってインスリン抵抗性が高まる。

この変化は、母体のブドウ糖を胎児へ供給しやすくするための生理的適応である。しかし、膵臓からのインスリン分泌が十分に増加しなければ、母体血糖が上昇して妊娠糖尿病となる。

母体高血糖
→ 胎児高血糖
→ 胎児高インスリン血症
→ LGA児・巨大児

出生後は胎盤からのブドウ糖供給が途絶える一方、児の高インスリン状態が残るため、新生児低血糖を生じやすい。

75g経口ブドウ糖負荷試験の基準は、

空腹時
→ 92mg/dL以上

1時間値
→ 180mg/dL以上

2時間値
→ 153mg/dL以上

いずれか一つ以上を満たすと妊娠糖尿病と診断される。


7.子宮底長

子宮底長は、原則として排尿後に仰臥位で測定する。

測定部位は、恥骨結合上縁から子宮底最高部までである。

膀胱が充満していると、子宮が上方へ押し上げられ、実際より大きく測定されることがある。

子宮底長が妊娠週数より小さい場合には、胎児発育不全、羊水過少、胎児の骨盤内下降、妊娠週数の誤りなどを考える。

大きい場合には、巨大児、羊水過多、多胎妊娠、子宮筋腫などを考える。

子宮底長だけで診断せず、超音波検査による胎児計測や羊水量と合わせて評価する。


8.NSTと一過性頻脈

妊娠32週以降では、反応型NSTの基本的な目安は、

20分間に、一過性頻脈が2回以上

一過性頻脈は、

基線から15bpm以上上昇し、15秒以上2分未満持続するもの

である。

妊娠32週未満では胎児自律神経系が未成熟であるため、10bpm以上・10秒以上の基準を用いる場合がある。

一過性頻脈が認められない場合でも、胎児睡眠周期の可能性があるため、直ちに胎児低酸素と判断しない。


9.一過性徐脈の鑑別

早発一過性徐脈
→ 児頭圧迫
→ 子宮収縮とほぼ鏡像関係

遅発一過性徐脈
→ 子宮胎盤循環不全
→ 心拍数低下の最下点が子宮収縮の最強点より遅れる

変動一過性徐脈
→ 臍帯圧迫
→ 急激に低下し、子宮収縮との時間関係が一定しない

遷延一過性徐脈
→ 2分以上10分未満持続する心拍数低下

波形は低下幅だけでなく、低下に要する時間、子宮収縮との時間関係、基線細変動を合わせて判断する。


10.骨盤位

骨盤位とは、胎児の臀部または下肢が母体骨盤側に位置する状態である。

主な種類には、単殿位、複殿位、足位、膝位がある。

骨盤位では、小さい臀部や下肢が先に産道を通過し、最後に大きな児頭が娩出される。そのため、臍帯脱出、児頭娩出困難、臍帯圧迫などの危険がある。

超音波で児頭が子宮底側にある場合、骨盤位を考える。


11.前置胎盤と低置胎盤

胎盤が内子宮口を覆う、または内子宮口へ達している状態では前置胎盤を考える。

従来の分類では、

全前置胎盤
→ 内子宮口を完全に覆う

部分前置胎盤
→ 内子宮口の一部を覆う

辺縁前置胎盤
→ 胎盤下端が内子宮口へ達する

とされてきた。

現在は、胎盤下端と内子宮口との距離を超音波で評価する考え方が重視される。

前置胎盤では、妊娠後半に腹痛を伴わない鮮血出血が起こることがある。胎盤位置が確認されていない段階で、不用意に指による内診を行うと大量出血を誘発する危険がある。


12.帝王切開児の呼吸

胎児の肺は胎内では肺液で満たされている。

出生前後にはカテコラミンの作用などによって、肺胞上皮からナトリウムと水分が吸収され、肺液が除去される。

陣痛開始前の帝王切開では、この肺液吸収が十分に進まず、出生後に肺液が一時的に残存することがある。

その結果、

  • 多呼吸

  • 鼻翼呼吸

  • 陥没呼吸

  • 呻吟

などがみられる場合がある。

従来の「産道で胸部が圧迫されなかったため」という説明だけでなく、肺上皮の能動的なナトリウム・水分吸収の遅延まで理解しておく。


13.Apgarスコア

Apgarスコアは、出生後1分および5分に、

  • 心拍数

  • 呼吸

  • 筋緊張

  • 刺激反応

  • 皮膚色

の5項目を、それぞれ0~2点で評価する。

合計10点満点である。

四肢だけにチアノーゼがある場合、皮膚色は1点となる。口唇や舌、体幹まで青い中心性チアノーゼとは区別する。

Apgarスコアは出生直後の状態を共有する指標であり、それだけで将来の神経学的予後を判断するものではない。


14.帝王切開後の母体観察

帝王切開直後は、次の異常を優先して観察する。

  • 術後出血

  • 子宮弛緩

  • 腹腔内出血

  • 麻酔による低血圧・呼吸抑制

  • 静脈血栓塞栓症

  • 疼痛

  • 尿量減少

  • 創部出血

子宮底が硬く、悪露が少なくても、腹腔内や手術創から出血している可能性がある。

性器出血だけでなく、血圧、脈拍、意識、顔色、腹部膨満、疼痛、尿量を統合して判断する。


15.産後出血とショック

出血量だけで重症度を判断してはいけない。

ショックインデックスは、

心拍数÷収縮期血圧

で求める。

たとえば、脈拍120回/分、収縮期血圧100mmHgなら、ショックインデックスは1.2となる。

産科出血では、妊娠中の循環血液量増加により血圧低下が遅れて出現することがある。頻脈、冷汗、顔面蒼白、尿量減少、意識変化などを早期に捉える必要がある。

東京都立大学助産学専攻科

出題傾向から作成した次年度予想問題30問

第1部 基礎知識・空欄補充問題(第1~10問)

※以下は公式問題ではありません。2026年度の筆記試験で、新生児の体温調節、母性看護関連法規、思春期の内分泌、妊娠中の生理的変化、NST、胎盤位置、帝王切開後の母児看護が問われたこと、さらに公式資料で「基礎知識の理解」「文章読解力」「生理学的な説明」「優先順位を付けた看護計画」が評価項目として示されていることを踏まえて作成したオリジナル予想問題です。


予想問題1 新生児の熱産生

新生児は寒冷刺激を受けると、主として褐色脂肪組織を利用し、筋肉のふるえを伴わずに熱を産生する。この熱産生機構を何というか。

解答

非ふるえ熱産生

詳細解説

成人は寒さを感じると骨格筋を細かく収縮させ、ふるえによって熱をつくります。しかし、新生児は骨格筋の発達や神経系の調節が未熟であり、成人のようなふるえによる熱産生を十分に行えません。

そこで、新生児は褐色脂肪組織を分解し、そのエネルギーを熱へ変換する非ふるえ熱産生を行います。褐色脂肪組織にはミトコンドリアが多く、脂肪酸を利用して効率的に熱を発生させます。

早産児や低出生体重児では褐色脂肪組織の蓄積が少なく、皮下脂肪も少ないため、熱を失いやすい一方で、熱をつくる能力も限られています。そのため、出生直後の乾燥、皮膚接触、寝具や室温の調整が特に重要です。WHOも、早産児・低出生体重児では褐色脂肪が少なく、体温調節への追加的支援が必要であるとしています。(iris.who.int)

周辺知識

非ふるえ熱産生は、交感神経の刺激とカテコラミンの分泌によって促進されます。褐色脂肪組織の分解には酸素とブドウ糖が必要となるため、低体温が続くと呼吸・循環・代謝へ負担がかかります。

出題予想の理由

2026年度は四つの熱喪失経路と輻射が問われました。次は、失われた熱を新生児がどのように補うかという熱産生側の機序が狙われる可能性があります。


予想問題2 寒冷ストレスと低血糖

新生児の低体温が持続すると、熱産生のために酸素とブドウ糖の消費量が増加する。これによって起こりやすくなる代謝異常は何か。

解答

低血糖

詳細解説

新生児が寒冷環境へさらされると、非ふるえ熱産生によって体温を維持しようとします。この反応には多量の酸素とブドウ糖が必要です。

新生児は肝臓に蓄えられているグリコーゲン量が限られ、糖新生機能も未熟です。さらに、出生後は胎盤からの持続的なブドウ糖供給が途絶えるため、熱産生による糖消費が増えると低血糖を起こしやすくなります。

低血糖では、振戦、活気低下、哺乳不良、筋緊張低下、多呼吸、無呼吸、チアノーゼ、けいれんなどがみられることがあります。ただし、症状を示さない場合もあるため、早産児、低出生体重児、糖尿病母体児などのリスク児では、症状の有無だけでなく血糖測定が必要です。厚生労働省の助産師国家試験でも、振戦が新生児低血糖の増悪を疑う所見として出題されています。(厚生労働省)

周辺知識

低体温による酸素消費量増加が続くと、低酸素血症や嫌気性代謝による乳酸蓄積が起こり、代謝性アシドーシスへ進む可能性があります。

したがって、低体温時は単に保温するだけでなく、呼吸状態、皮膚色、活気、哺乳、血糖を確認します。

出題予想の理由

公式問題では熱喪失の原因と予防ケアまで問われています。次年度は、低体温を放置した場合に起こる全身への影響を説明させる可能性があります。


予想問題3 胎児循環と静脈管

胎盤から臍静脈を通って胎児へ流入した血液の一部を、肝臓を迂回して下大静脈へ導く胎児特有の血管は何か。

解答

静脈管

詳細解説

胎盤で酸素と栄養を受け取った血液は、1本の臍静脈を通って胎児へ流入します。その血液の一部は肝臓へ流れますが、多くは静脈管を通って下大静脈へ短絡します。

下大静脈へ入った比較的酸素濃度の高い血液は右心房へ流れ、その多くが卵円孔を通って左心房、左心室、上行大動脈へ送られます。これによって、脳や冠動脈へ比較的酸素濃度の高い血液を優先的に供給できます。

胎児循環における三つの短絡路は、次のとおりです。

静脈管
→ 肝循環の一部を迂回する

卵円孔
→ 右心房から左心房へ血液を送る

動脈管
→ 肺動脈から大動脈へ血液を送る

胎児・胎盤系循環は、助産師国家試験の出題基準にも明示されている基本項目です。(厚生労働省)

周辺知識

臍帯血管は、臍静脈1本と臍動脈2本です。

臍静脈
→ 胎盤から胎児へ、酸素を多く含む血液を運ぶ

臍動脈
→ 胎児から胎盤へ、酸素の少ない血液を運ぶ

「動脈=酸素が多い」「静脈=酸素が少ない」と覚えるのではなく、心臓から離れる血管が動脈、心臓へ戻る血管が静脈であると理解します。

出題予想の理由

2026年度は帝王切開児の胎外呼吸への適応が問われました。胎外生活への移行を理解する前提として、胎児期の循環構造が次に問われる可能性があります。


予想問題4 出生後の卵円孔閉鎖

出生後に呼吸が開始されると肺血流量が増加し、左心房圧が右心房圧を上回る。この圧変化によって機能的に閉鎖する構造は何か。

解答

卵円孔

詳細解説

胎児期は肺血管抵抗が高く、肺へ流れる血液量が少ないため、右心房圧が左心房圧より高い状態です。この圧差によって、血液は卵円孔を通り、右心房から左心房へ流れます。

出生後に呼吸が始まると、肺胞が拡張して肺血管抵抗が低下します。肺血流量が増加し、肺静脈を通って左心房へ戻る血液が増えるため、左心房圧が上昇します。

左心房圧が右心房圧を上回ると、卵円孔の弁が心房中隔へ押し付けられ、機能的閉鎖が起こります。

厚生労働省の助産師国家試験でも、出生後の肺血流量増加によって卵円孔が閉鎖することが正答として扱われています。(厚生労働省)

周辺知識

出生後の循環移行では、呼吸開始だけでなく臍帯結紮も関係します。臍帯が結紮されると胎盤から右心房へ戻る血流が減少し、右心房圧が低下します。

つまり、

呼吸開始
→ 肺血管抵抗低下
→ 肺血流増加
→ 左心房圧上昇

臍帯結紮
→ 胎盤からの静脈還流減少
→ 右心房圧低下

この二つによって左右心房の圧関係が逆転します。

出題予想の理由

公式問題では帝王切開児の肺液吸収が問われました。同じ「胎外生活への適応」から、呼吸開始後の循環動態の変化へ発展する可能性があります。


予想問題5 出生後の動脈管閉鎖

出生後、動脈血酸素分圧の上昇やプロスタグランジン濃度の低下によって収縮する胎児特有の血管は何か。

解答

動脈管

詳細解説

胎児期の動脈管は、肺動脈と下行大動脈を連絡しています。胎児の肺はガス交換を行っておらず、肺血管抵抗も高いため、右心室から肺動脈へ送り出された血液の多くは、動脈管を通って大動脈へ流れます。

出生後に呼吸が始まると、動脈血酸素分圧が上昇します。また、胎盤が切り離されることで、動脈管を開存させる作用をもつプロスタグランジンの濃度が低下します。これらによって動脈管平滑筋が収縮し、機能的閉鎖が進みます。

「酸素分圧の上昇によって動脈管が開く」は誤りです。厚生労働省の助産師国家試験でも、酸素分圧上昇で動脈管が開くという選択肢は誤答として扱われています。(厚生労働省)

周辺知識

先天性心疾患の中には、動脈管が開存していることで肺血流または体血流が維持される疾患があります。この場合は、プロスタグランジン製剤を投与して動脈管を意図的に開存させます。

出題予想の理由

卵円孔と動脈管はセットで出題しやすく、胎児循環と出生後の変化を理解しているかを効率的に評価できます。


予想問題6 乳汁産生

乳頭への吸啜刺激によって下垂体前葉から分泌され、乳腺胞上皮細胞へ作用して乳汁産生を促すホルモンは何か。

解答

プロラクチン

詳細解説

児が乳頭を吸啜すると、その刺激が求心性神経を介して視床下部へ伝わります。視床下部では、プロラクチン分泌を抑制しているドパミンの作用が弱まり、下垂体前葉からプロラクチンが分泌されます。

プロラクチンは乳腺胞上皮細胞へ作用し、乳汁をつくります。

つまり、

プロラクチン
→ 乳汁をつくる

オキシトシン
→ 乳汁を押し出す

と区別します。

授乳回数が多いほどプロラクチンの分泌刺激が繰り返され、乳汁産生の維持につながります。厚生労働省の助産師国家試験でも、頻回授乳とプロラクチン濃度上昇の関係が出題されています。(厚生労働省)

周辺知識

プロラクチンは性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を抑え、排卵を抑制する方向にも働きます。ただし、授乳中であっても排卵が再開することがあるため、授乳を避妊方法として過信してはいけません。

出題予想の理由

2026年度は妊娠期の内分泌が中心でした。次年度は、分娩後へ時期を進めて、産褥期の内分泌変化と授乳が問われる可能性があります。


予想問題7 射乳反射

乳頭への吸啜刺激によって下垂体後葉から分泌され、乳腺胞周囲の筋上皮細胞を収縮させるホルモンは何か。

解答

オキシトシン

詳細解説

オキシトシンは、視床下部で産生され、下垂体後葉から分泌されます。

乳頭への吸啜刺激によってオキシトシンが分泌されると、乳腺胞の周囲にある筋上皮細胞が収縮し、乳腺胞内の乳汁が乳管へ押し出されます。これが射乳反射です。

オキシトシンは子宮平滑筋も収縮させるため、授乳中に後陣痛を感じることがあります。この子宮収縮は子宮復古を促進し、胎盤付着部からの出血を抑える方向に働きます。

緊張、強い不安、疼痛、羞恥などによって射乳が起こりにくくなることがあります。そのため、授乳支援では吸着技術だけでなく、母親が落ち着いて授乳できる環境調整も必要です。母親の不安がオキシトシン分泌を低下させることは、助産師国家試験でも問われています。(厚生労働省)

周辺知識

「母乳が出ない」という訴えには、少なくとも二つの状態があります。

乳汁が十分につくられていない
→ 乳汁産生の問題

乳汁はつくられているが押し出されにくい
→ 射乳の問題

乳房緊満、授乳回数、吸着、嚥下音、排尿・排便、児の体重などを評価し、どこに問題があるかを判断します。

出題予想の理由

プロラクチンとオキシトシンは対比しやすく、単なるホルモン名ではなく、分泌部位・刺激・標的組織・作用を問う問題が作りやすい領域です。


予想問題8 妊娠中の生理的貧血

妊娠中は血漿量と赤血球量の双方が増加するが、血漿量の増加率が赤血球量の増加率を上回るため、血液が相対的に希釈される。この状態を何というか。

解答

生理的貧血

詳細解説

妊娠中は、胎盤循環と子宮血流を維持し、分娩時の出血へ備えるために循環血液量が増加します。

赤血球量も増加しますが、血漿量の増加の方が大きいため、血液中の赤血球が相対的に薄まります。その結果、ヘモグロビン濃度やヘマトクリット値が低下します。これが妊娠中の生理的な血液希釈です。

ただし、すべての貧血を生理的変化として扱ってよいわけではありません。妊娠中は胎児・胎盤への鉄供給、母体赤血球量の増加、分娩時出血への備えによって鉄需要も増加します。鉄摂取や貯蔵鉄が不足すれば、鉄欠乏性貧血が生じます。厚生労働省の資料でも、妊娠中は循環血液量と赤血球量の増加によって鉄需要が増えることが示されています。(厚生労働省)

周辺知識

鉄欠乏性貧血では、倦怠感、動悸、息切れ、顔色不良などがみられることがあります。母体の自覚症状だけで判断せず、ヘモグロビン値や赤血球指数を確認します。

分娩前から高度の貧血があると、分娩時出血に対する予備力が低くなります。

出題予想の理由

公式問題Ⅲでは妊娠中のインスリン抵抗性が問われました。次は同じく妊娠に伴う全身の生理的変化として、循環・血液系が狙われる可能性があります。


予想問題9 仰臥位低血圧症候群

妊娠後期の妊婦が仰臥位になったところ、悪心、冷汗、顔面蒼白、血圧低下がみられた。この病態の主な原因となる血管は何か。

解答

下大静脈

詳細解説

妊娠後期に仰臥位をとると、増大した子宮が脊柱の前方にある下大静脈を圧迫します。

下大静脈が圧迫されると、下半身から心臓へ戻る静脈血が減少します。その結果、心拍出量と血圧が低下し、悪心、めまい、冷汗、顔面蒼白、頻脈、意識低下などが起こります。これが仰臥位低血圧症候群です。

母体心拍出量が低下すると、子宮胎盤血流も減少するため、胎児心拍数低下を伴うことがあります。

対応の基本は、左側臥位への体位変換です。完全な側臥位が困難な場合は、右腰部へ枕などを入れて身体を左方へ傾ける、または子宮を用手的に左方へ移動させます。日本産婦人科医会も、妊婦の評価時には仰臥位を避け、身体を左側へ傾けることを示しています。(日本産婦人科医会)

周辺知識

妊婦が仰臥位で気分不良を訴えた場合、単に「妊娠中だから息苦しい」と扱ってはいけません。

体位変換後に症状が改善するか、血圧・脈拍・胎児心拍数が回復するかを確認します。改善しなければ、出血、心疾患、肺塞栓症など別の病態も考えます。

出題予想の理由

公式問題では子宮底長を仰臥位で測定することが問われました。そこから一歩進めて、妊娠後期に仰臥位をとることの危険性を問う可能性があります。


予想問題10 悪露の変化

正常な産褥経過において、悪露は一般に赤色悪露から褐色・漿液性悪露を経て、最終的に何色の悪露へ変化するか。

解答

白色悪露

詳細解説

悪露は、胎盤付着部や子宮内膜から排出される血液、壊死組織、粘液、白血球などを含む分泌物です。

産褥早期には血液成分が多い赤色悪露がみられます。その後、血液成分が減少して褐色または漿液性となり、最終的には白血球や粘液を主体とする白色悪露へ変化します。

悪露の量や色には個人差がありますが、次の所見は異常を考えます。

  • 一度減少した赤色悪露が再び増える

  • 大きな血塊が持続して排出される

  • 悪臭がある

  • 発熱や子宮圧痛を伴う

  • 子宮底の下降が遅い

  • 子宮が軟らかい

これらがある場合には、子宮復古不全、胎盤・卵膜遺残、子宮内感染などを考えます。産褥期の正常な子宮復古と悪露は、助産師国家試験でも繰り返し扱われる基本領域です。(厚生労働省)

周辺知識

子宮復古の評価では、悪露だけでなく、子宮底の高さ、硬さ、正中からの偏位、疼痛、体温、排尿状態を確認します。

膀胱が充満すると子宮が上方・側方へ偏位し、子宮収縮を妨げることがあります。したがって、排尿援助も子宮復古と出血予防に関わる看護です。

出題予想の理由

公式の総合事例では帝王切開直後の出血と子宮収縮が問われました。次は術後数日へ時間を進め、正常な産褥経過と子宮復古不全を見分ける問題が出題される可能性があります。


第1~10問で押さえるべき核心

今回の10問は、2026年度の公式問題から自然に派生する次の四領域で構成しました。

新生児の体温と代謝
熱を失う機序だけでなく、熱をつくる機序と低体温の影響まで説明する。

胎児循環と胎外循環への移行
静脈管、卵円孔、動脈管を暗記するだけでなく、出生後に閉鎖する理由まで理解する。

産褥期のホルモンと授乳
プロラクチンとオキシトシンの分泌部位、作用、臨床場面を区別する。

妊娠・産褥の正常な生理変化
生理的貧血、仰臥位低血圧症候群、悪露と子宮復古を、異常の早期発見へ結び付ける。

この10問は、単語を答える形式でありながら、詳細解説では生理学的機序から観察・看護判断までつながる構成にしています。

第2部 関連法規・届出(第11~15問)

第3部 計算・判読問題(第16~20問)

2026年度は、看護師の定義、人工妊娠中絶、特定妊婦、妊婦健康診査、入院助産、乳児家庭全戸訪問事業、助産所開設などについて、根拠となる法律名が問われました。また、BMI、月経予定日、妊娠週数、NSTの基準など、文章から条件を抽出して正確に計算する問題も出題されています。

そのため第11~20問では、前年度に直接問われなかった母子保健上の届出と、妊娠・分娩・新生児看護で頻出する計算問題を予想しました。公式資料が評価対象として挙げている「知識の定着」「文章理解」「説明力」を踏まえたオリジナル問題です。


予想問題11 妊娠の届出

妊娠した者が、速やかに妊娠の届出を行うことを定めている法律は何か。

解答

母子保健法

詳細解説

妊娠の届出は、母子保健法に定められています。妊娠した者は、速やかに市町村長へ届け出ます。法律上、「妊娠何週まで」といった一律の期限が設けられているわけではありませんが、妊娠初期から必要な健康診査や保健指導を受けるため、妊娠が確認された後は早期に手続きを行うことが重要です。

妊娠の届出を受けた市町村は、届出者へ母子健康手帳を交付します。したがって、妊娠の届出と母子健康手帳の交付は、同じ母子保健法に基づく一連の制度として理解できます。母子健康手帳は、妊娠中の記録だけでなく、分娩、新生児期、乳幼児健康診査、予防接種までを継続して記録する媒体です。

周辺知識

妊娠の届出を行うのは、原則として妊娠した本人です。医師が市町村へ届け出る制度ではありません。

届出時には、妊婦健康診査の受診券、相談窓口、保健指導、経済的支援、産後ケアなどの情報提供が行われます。近年は届出時の面談を通じて、身体的な健康状態だけでなく、妊娠の受け止め、家族の支援、経済状況、住居、精神状態などを把握し、妊娠期から必要な支援へつなぐ機会としても重視されています。

出題予想の理由

2026年度は「妊婦健康診査」が母子保健法であることを問いました。同じ法律から、次に基本となる妊娠の届出と母子健康手帳が問われる可能性があります。


予想問題12 低出生体重児の届出

出生体重2,350gの児が出生した。保護者が速やかに届出を行う根拠となる法律は何か。

解答

母子保健法

詳細解説

母子保健法では、出生体重が2,500g未満の乳児が出生した場合、保護者が速やかに、その児の現在地の市町村へ届け出ることを定めています。

本問の児は2,350gであり、2,500g未満なので届出の対象です。「2,500g以下」ではなく、2,500g未満である点に注意します。したがって、出生体重がちょうど2,500gの児は、この規定上の低体重児の届出対象には含まれません。(厚生労働省)

低出生体重児と早産児は同じではない

低出生体重児は、出生時の体重による分類です。

出生体重2,500g未満
→ 低出生体重児

出生体重1,500g未満
→ 極低出生体重児

出生体重1,000g未満
→ 超低出生体重児

一方、早産児は妊娠37週未満で出生した児です。したがって、妊娠38週で2,300gなら正期産の低出生体重児であり、妊娠35週で2,600gなら早産児ですが低出生体重児ではありません。

届出の目的

届出は、低出生体重児を行政が管理するためのものではありません。発育、哺乳、体温調節、育児不安などを早期に把握し、訪問指導や医療・保健・福祉の支援へつなげることが目的です。

保護者が退院後の育児に不安を抱えていても、自ら支援を求められない場合があります。届出は、児の発育だけでなく、家庭の養育状況を含めて支える入口になります。

出題予想の理由

前年度は入院助産や乳児家庭全戸訪問など、地域母子保健に関係する制度が出題されました。低出生体重児の届出は、対象体重、届出者、届出先まで派生させやすい重要項目です。


予想問題13 産後ケア事業

出産後1年以内の母子に対して、心身のケア、授乳支援、育児相談、休養の確保などを行う産後ケア事業の根拠となる法律は何か。

解答

母子保健法

詳細解説

産後ケア事業は、母子保健法に位置付けられています。市町村が、出産後1年以内の母子に対し、母親の身体的・心理的回復、授乳、育児手技、休養、相談支援などを行う事業です。

主な実施方法には、施設へ宿泊する短期入所型、日中に施設を利用する通所型、助産師などが自宅を訪問する居宅訪問型があります。

産後ケアは、母親の代わりに育児を全面的に引き受ける事業ではありません。母親の状態を評価し、休息を確保しながら、退所後・支援終了後も本人と家族が育児を継続できるように支えることが基本です。

医療との境界

産後ケア事業は、原則として入院治療を必要としない母子を対象とします。高熱、重度の精神症状、大量出血、乳腺炎の重症化など、医療的介入が必要な状態では、産後ケアだけで対応せず、医療機関へつなぐ必要があります。

助産師には、「産後だから起こり得る変化」として経過をみてよいのか、「医療が必要な異常」なのかを判断する臨床推論が求められます。

産前・産後サポート事業との違い

産前・産後サポート事業は、妊産婦の孤立感や育児不安を軽減するため、相談、交流支援、情報提供などを行う事業です。

産後ケア事業は、より具体的に母体の回復、授乳、育児技術、休養などを支援します。名称が似ていますが、目的と支援内容を完全に同一視してはいけません。

出題予想の理由

産後ケア事業は、母子保健法上の重要制度であり、現在の地域母子保健で重視されています。法律名だけでなく、対象時期や支援内容を文章で説明させる問題も考えられます。


予想問題14 出生届

国内で児が出生した場合、出生の日から14日以内に出生届を提出することを定めている法律は何か。

解答

戸籍法

詳細解説

出生届の根拠は戸籍法です。国内で出生した場合は、出生の日から14日以内に届け出ます。国外で出生した場合の届出期間は3か月以内です。

出生届には、医師または助産師が作成する出生証明書が添付されます。助産師は、分娩の経過だけでなく、出生日時、出生場所、児の性別、単胎・多胎の別、出生体重などを正確に確認して記載する必要があります。

「出生した翌日から14日」ではない

法務省の案内では、「出生の日から14日以内」とされています。試験では、期限を「2週間以内」「14日以内」「15日以内」のように変えて問われる可能性があります。

また、14日目が休日の場合の実際の窓口対応などは行政手続上の取扱いがありますが、入試ではまず出生の日から14日以内を正確に答えます。

出生届と低出生体重児届は別の手続き

出生届
→ 戸籍法
→ 出生の事実を戸籍へ登録する

低出生体重児の届出
→ 母子保健法
→ 保健指導や養育支援へつなげる

同じ児の出生に関係する届出でも、目的と根拠法が異なります。低出生体重児であれば、出生届だけを提出して終わるわけではありません。

出題予想の理由

前年度は母性看護関連法規を広く出題しましたが、戸籍法は含まれていませんでした。助産師が出生に直接関わる専門職である以上、出生届と出生証明書は有力な派生論点です。


予想問題15 死産の届出

妊娠第4月以後に死産があった場合、死産後7日以内に届出を行う根拠となる法令名は何か。

解答

死産の届出に関する規程

詳細解説

死産の届出は、「死産の届出に関する規程」に基づきます。医師または助産師が作成した死産証書または死胎検案書を添え、死産後7日以内に届け出ます。(厚生労働省)

この規程における死産は、妊娠第4月以後の死児の出産です。一般に妊娠12週以後が法的な死産届の対象となります。

一方、産科医学における流産・早産などの分類では、妊娠22週未満の妊娠終了を流産と扱います。したがって、妊娠12週以後22週未満は、医学的には流産であっても、行政上は死産届が必要になる範囲があります。

医師と助産師の書類

通常の分娩で生児が出生した場合
→ 出生証明書

妊娠第4月以後に死児を分娩した場合
→ 死産証書

出生後に児が死亡した場合
→ 出生届と死亡届

出生時に生命徴候があったかどうかによって必要な書類が変わります。出生後にわずかな時間でも心拍、呼吸、臍帯拍動、随意筋運動などの生命徴候があれば、死産ではなく出生後死亡として扱われます。

グリーフケア

死産届の説明を、行政手続だけで終わらせてはいけません。家族は、子どもを失った直後に、届出、火葬、退院、母乳分泌への対応など、多くの判断を求められます。

医療者は一度に大量の情報を伝えるのではなく、理解度を確認しながら説明します。児と過ごす時間、抱く、写真を撮る、手形・足形を残すなどについても、家族の希望を尊重します。特定の方法を「悲嘆から回復するために必要」と押し付けてはなりません。

出題予想の理由

助産師は正常分娩だけでなく、流産・死産・新生児死亡にも関わります。法律名、届出期限、必要書類と、家族への支援を組み合わせた出題が考えられます。


予想問題16 分娩予定日の計算

最終月経開始日が2026年7月10日で、月経周期は28日型で規則的である。分娩予定日を答えなさい。

解答

2027年4月16日

計算方法

最終月経開始日に280日を加えます。

ネーゲレ概算法では、月に9を加え、日に7を加える方法でも求められます。

7月10日
→ 月に9を加えると翌年4月
→ 日に7を加えると17日

ただし、暦日計算では最終月経開始日から280日後は2027年4月16日です。

ここは注意が必要

ネーゲレ概算法を機械的に「月+9、日+7」とすると、月の日数の違いにより1日のずれが生じる場合があります。最も確実なのは、最終月経開始日を妊娠0週0日として280日後を暦で数える方法です。

周辺知識

最終月経による分娩予定日の算出は、月経周期が28日型で規則的であり、最終月経開始日が確実であることを前提とします。

月経周期が長い女性は排卵が遅い可能性があり、短い女性は排卵が早い可能性があります。また、授乳中、経口避妊薬中止直後、不規則月経などでは、最終月経だけから妊娠週数を決めると誤差が大きくなります。

実際の予定日決定では、妊娠初期の超音波検査による胎児計測を用いて修正することがあります。

出題予想の理由

2026年度は次回月経予定日を求めました。次年度は、同じ月経歴から分娩予定日を計算する問題へ発展する可能性があります。


予想問題17 月経周期を考慮した予定日の補正

最終月経開始日が2026年7月10日で、月経周期は35日型で規則的である。28日型として求めた分娩予定日を、月経周期に応じて補正した場合の予定日はいつか。

解答

2027年4月23日

計算方法

28日型として計算した予定日は、2027年4月16日です。

月経周期は35日で、標準の28日より7日長いため、排卵も標準より約7日遅いと仮定します。

2027年4月16日+7日
=2027年4月23日

詳細解説

月経周期の長さの違いは、主として排卵までの卵胞期の長さに反映されます。35日型で規則的な場合、28日型より排卵が約7日遅いと推定し、予定日も7日後へ補正します。

ただし、これは計算上の推定です。月経周期が35日であっても毎回同じ日に排卵するとは限りません。臨床では、妊娠初期の超音波検査による頭殿長などを用いて妊娠週数を評価します。

書いてはいけない考え方

「月経周期が7日長いから、妊娠期間も287日になる」とだけ覚えるのは不十分です。

補正の根拠は、妊娠成立後の胎児発育が遅いからではなく、排卵・受精の時期が標準より遅かった可能性があるためです。

出題予想の理由

公式事例では「28日周期で規則的」という条件がわざわざ示されていました。次は、その条件を変え、月経周期の違いを計算へ反映できるかが問われる可能性があります。


予想問題18 新生児の生理的体重減少率

出生体重3,100gの新生児が、生後3日目に2,852gとなった。体重減少率を答えなさい。

解答

8.0%

計算方法

体重減少量を求めます。

3,100-2,852=248g

次に、出生体重に対する割合を計算します。

248÷3,100×100=8.0%

詳細解説

出生後の新生児は、尿・胎便の排泄、不感蒸泄、哺乳量がまだ十分でないことなどによって、一時的に体重が減少します。

体重減少率は、必ず出生体重を分母にします。現在体重を分母にしてはいけません。

(出生体重-現在体重)÷出生体重×100

体重減少は生後2~3日頃に最も大きくなり、その後、哺乳量が増えるにつれて体重増加へ転じます。

数字だけで評価しない

体重減少率8.0%という数字だけで、正常・異常を確定することはできません。

次の所見を統合します。

  • 吸着と吸啜

  • 嚥下音

  • 授乳回数

  • 排尿・排便

  • 活気

  • 口腔粘膜や皮膚の乾燥

  • 黄疸

  • 母乳分泌

  • 出生週数と出生体重

体重減少が大きく、哺乳不良、尿量減少、活気低下、黄疸増強などを伴う場合には、摂取不足や脱水を考えます。

出題予想の理由

2026年度は母体のBMI計算が出題されました。次年度は新生児看護へ移し、体重減少率を計算して全身状態を評価する問題が考えられます。


予想問題19 ショックインデックス

産後出血を認める褥婦の脈拍数が126回/分、収縮期血圧が90mmHgであった。ショックインデックスを小数第1位まで答えなさい。

解答

1.4

計算方法

ショックインデックスは、

脈拍数÷収縮期血圧

で求めます。

126÷90=1.4

詳細解説

ショックインデックスは、循環血液量減少を簡便に把握する補助指標です。

妊娠中は循環血液量が増加しているため、相当量を出血していても、初期には血圧が維持されることがあります。そのため、血圧低下を待つのではなく、頻脈、顔面蒼白、冷汗、四肢冷感、尿量低下、意識変化などを早期に捉える必要があります。

本問では脈拍126回/分、収縮期血圧90mmHgであり、ショックインデックスは1.4です。正常から大きく逸脱しており、出血性ショックを強く疑って緊急対応する状況です。

ショックインデックスだけで判断しない

疼痛、発熱、不安、薬剤などでも脈拍は増加します。また、妊娠高血圧症候群の妊婦では、出血していても血圧が相対的に高く保たれる場合があります。

したがって、ショックインデックスは診断を確定する数字ではなく、出血量、バイタルサイン、子宮収縮、意識、尿量などと組み合わせて使用します。

予想される対応

産後出血と循環不全が疑われる場合は、応援を要請し、出血原因を評価しながら、静脈路、採血、輸液・輸血準備、酸素化、子宮収縮への対応などを同時に進めます。

「血圧が90mmHgあるから経過観察」としてはなりません。

出題予想の理由

2026年度の帝王切開事例では、出血量、輸液量、尿量、子宮の硬さが示されました。次は、これらの情報から循環不全の程度を数値化する問題が考えられます。


予想問題20 分娩所要時間

初産婦に午前2時20分から規則的な陣痛が始まり、午前11時50分に子宮口が全開大した。午後0時35分に児が娩出され、午後0時43分に胎盤が娩出された。

分娩第1期、第2期、第3期および分娩所要時間を答えなさい。

解答

分娩第1期:9時間30分
分娩第2期:45分
分娩第3期:8分
分娩所要時間:10時間23分

計算方法

分娩第1期

規則的な陣痛開始から子宮口全開大までです。

2時20分~11時50分
=9時間30分

分娩第2期

子宮口全開大から児娩出までです。

11時50分~12時35分
=45分

分娩第3期

児娩出から胎盤娩出までです。

12時35分~12時43分
=8分

分娩所要時間

規則的な陣痛開始から胎盤娩出までです。

2時20分~12時43分
=10時間23分

詳細解説

分娩所要時間は、児が出生するまでの時間ではありません。規則的な陣痛が始まってから、胎盤が娩出されるまでの時間です。

分娩第1期
→ 分娩開始から子宮口全開大まで

分娩第2期
→ 子宮口全開大から児娩出まで

分娩第3期
→ 児娩出から胎盤・卵膜娩出まで

この区分を理解していないと、時刻の引き算が正しくても、どの時間を計算すべきかを間違えます。

分娩開始時刻の判断

本人が「少しお腹が痛み始めた時刻」と、医学的な分娩開始時刻が一致するとは限りません。

分娩開始は、規則的な子宮収縮が一定間隔で反復し、子宮頸管の開大・展退を伴って分娩が進行し始めた時点として判断します。前駆陣痛の開始時刻をそのまま分娩開始にしてはいけません。

第3期が重要な理由

児が出生すると、周囲の注意が新生児へ向きやすくなります。しかし、母体では胎盤剝離と胎盤付着部からの止血が進む重要な時間です。

胎盤娩出が遅れる、子宮が軟らかい、出血が増える場合には、胎盤遺残や子宮弛緩などを考えます。児娩出後も、母体の子宮収縮、出血、バイタルサインを継続して観察する必要があります。

出題予想の理由

東京都立大学は、文章中の複数の時刻・週数・数値を整理する問題を出しています。分娩所要時間は、計算力だけでなく、分娩各期の定義を理解しているかを同時に評価できます。


第11~20問の最終整理

法律・制度の問題では、法律名だけでなく、誰が、何を、いつまでに、どこへ届けるかまで確認します。

妊娠の届出
→ 母子保健法
→ 妊娠した者が速やかに市町村長へ届け出る

低出生体重児の届出
→ 母子保健法
→ 2,500g未満の児について保護者が速やかに届け出る

産後ケア事業
→ 母子保健法
→ 出産後1年以内の母子を支援する

出生届
→ 戸籍法
→ 国内出生では出生の日から14日以内

死産届
→ 死産の届出に関する規程
→ 妊娠第4月以後の死産について7日以内

計算問題では、公式だけを暗記せず、分母、起点、期間の定義を確認します。

分娩予定日
→ 最終月経開始日から280日後

新生児体重減少率
→ 減少量÷出生体重×100

ショックインデックス
→ 脈拍数÷収縮期血圧

分娩所要時間
→ 規則的陣痛開始から胎盤娩出まで

東京都立大学助産学専攻科

出題傾向から作成した次年度予想問題30問

第4部 短文記述問題(第21~25問)

第5部 総合事例問題(第26~30問)

以下は公式問題ではなく、2026年度試験で示された「定義を説明する」「具体的な臨床場面へ置き換える」「生理学的根拠から看護を考える」「母児の問題へ優先順位を付ける」という出題傾向から作成したオリジナル予想問題です。

公式資料でも、基礎知識だけでなく、文章読解力、説明力、個別性に応じた看護目標の設定、具体的かつ系統的な看護計画の立案が評価対象として示されています。


予想問題21 蒸散による熱喪失

次の問いに答えなさい。

1.新生児の熱喪失経路である「蒸散」とは何か。
2.分娩室で蒸散による熱喪失が起こる具体的な場面を一つ示しなさい。
3.蒸散による熱喪失を防ぐためのケアを説明しなさい。

解答例

1.蒸散とは何か

蒸散とは、新生児の皮膚表面に付着した水分が水蒸気へ変化する際に、気化熱として新生児の体熱が奪われる現象である。

2.具体的な場面

出生直後、羊水で濡れた新生児の身体を乾燥させず、濡れたタオルの上に寝かせたまま観察した場合に、蒸散による熱喪失が起こる。

3.予防ケア

出生直後に温めた乾いたタオルで全身を速やかに拭き、濡れたタオルを取り除く。乾いたリネンで身体と頭部を覆い、母児の状態が安定していれば早期母子接触を行う。ケア後も体温、呼吸、皮膚色、活気を観察する。

詳細解説

水分が液体から気体へ変わるためにはエネルギーが必要です。このエネルギーが新生児の皮膚表面から奪われるため、身体が濡れているだけで体温が低下します。

出生直後の新生児は羊水で全身が濡れています。特に頭部は体表面積に占める割合が大きいため、身体を拭いた後も頭髪が濡れていると熱を失いやすくなります。

重要なのは、「身体を拭いた」という行為の実施ではありません。濡れたタオルをそのまま児の下へ残すと、再び身体が濡れ、蒸散と伝導の両方による熱喪失が続きます。

類似概念との違い

濡れた皮膚から水分が蒸発する
→ 蒸散

冷たいタオルへ身体が直接触れる
→ 伝導

エアコンの風が身体へ当たる
→ 対流

冷たい窓ガラスの近くに寝かせる
→ 輻射

一つの場面で複数の熱喪失経路が同時に起こることがあります。その中で、設問が何を問うているのかを明確にして答案を作ります。

出題予想の理由

2026年度は輻射の定義、具体的場面、予防ケアが問われました。次年度は同じ形式で、蒸散・伝導・対流のいずれかへ置き換えて出題する可能性があります。


予想問題22 仰臥位低血圧症候群

妊娠38週の妊婦が仰臥位でNSTを受けていたところ、悪心、冷汗、顔面蒼白、血圧低下を認めた。

1.この状態の名称を答えなさい。
2.発症機序を説明しなさい。
3.直ちに行う援助を答えなさい。

解答

1.仰臥位低血圧症候群

2.増大した妊娠子宮が下大静脈を圧迫し、下半身から心臓へ戻る静脈還流量が減少したことで、心拍出量と血圧が低下した。

3.左側臥位へ体位変換する。

記述答案例

妊娠後期に仰臥位をとったことで、増大した子宮が下大静脈を圧迫し、静脈還流量、心拍出量、血圧が低下したと考える。直ちに左側臥位へ体位変換し、血圧、脈拍、意識、症状、胎児心拍数の回復を確認する。

詳細解説

下大静脈は脊柱の右側寄りを走行しています。妊娠後期に仰臥位をとると、増大した子宮と脊柱の間で下大静脈が圧迫されます。

その結果、心臓へ戻る血液量が減少し、心拍出量が低下します。母体血圧が低下すれば子宮胎盤血流も減少するため、胎児心拍数の低下を伴うことがあります。

体位変換後は、「妊婦の気分が良くなった」という主観的情報だけで終了せず、血圧、脈拍、意識状態、皮膚色、胎児心拍数が回復したかを確認します。

書いてはいけない答案

妊婦が緊張したため、気分が悪くなった。

心理的緊張だけでは、妊娠後期の仰臥位、冷汗、血圧低下という情報を説明できません。

枕を入れて安静にする。

枕の位置が不明確です。下大静脈圧迫を解除するため、左側臥位、または右腰部へ枕を入れて身体を左方へ傾ける必要があります。


予想問題23 糖尿病母体児の低血糖

妊娠糖尿病の母親から出生した児に、生後1時間で振戦、活気低下、哺乳不良がみられた。

1.最も疑う代謝異常を答えなさい。
2.その発症機序を説明しなさい。
3.必要な観察と援助を述べなさい。

解答

1.新生児低血糖

2.胎内で母体高血糖の影響を受けた胎児がインスリンを多量に分泌しており、出生によって胎盤からのブドウ糖供給が途絶えた後も高インスリン状態が続くため。

記述答案例

母体高血糖によって胎児も高血糖となり、胎児膵臓からインスリンが多量に分泌されていたと考える。出生後は胎盤からのブドウ糖供給が途絶える一方、高インスリン状態が残るため血糖が低下する。血糖値、活気、筋緊張、振戦、呼吸、体温、哺乳力を確認し、状態に応じて早期授乳や指示されたブドウ糖投与を行う。

詳細解説

ブドウ糖は胎盤を通過しますが、母体のインスリンは通常、胎盤をほとんど通過しません。したがって、母体血糖が高いと胎児血糖も高くなり、胎児は自分の膵臓からインスリンを多量に分泌します。

出生時に臍帯が切断されると、母体からのブドウ糖供給は突然終了します。しかし、児のインスリン濃度は直ちには低下しないため、血液中のブドウ糖が急速に細胞へ取り込まれて低血糖となります。

低血糖では、振戦、活気低下、哺乳不良、筋緊張低下、頻呼吸、無呼吸、チアノーゼ、体温不安定、けいれんなどがみられます。症状が明確でない場合もあるため、リスク児では血糖値を実測して評価します。

周辺知識

胎児インスリンには成長促進作用があるため、糖尿病母体児はLGA児・巨大児となることがあります。しかし、糖尿病に血管障害や胎盤機能不全を合併した場合には、胎児発育不全となる可能性もあります。

したがって、「糖尿病母体児は必ず巨大児」と固定してはいけません。

妊娠糖尿病の診断、血糖管理、胎児発育、新生児低血糖は一つの流れとして理解します。日本産科婦人科学会のガイドラインでは、妊娠中の糖代謝異常のスクリーニング、診断、血糖管理が独立した重要項目として位置付けられています。


予想問題24 前期破水と感染

妊娠33週の妊婦が破水した。前期破水後に子宮内感染の危険が高くなる理由と、感染を疑う観察項目を説明しなさい。

解答例

破水によって卵膜による外界との物理的な遮断が失われ、腟内の細菌が子宮内へ上行しやすくなるため、絨毛膜羊膜炎の危険が高まる。母体の体温、脈拍、子宮圧痛、羊水の色・臭い、白血球数、CRP、胎児心拍数基線などを観察する。

詳細解説

正常な妊娠では、卵膜と頸管粘液が腟内細菌の上行を防ぐ役割を担っています。破水すると子宮内と外界が交通し、時間の経過とともに上行性感染の危険が高くなります。

臨床的絨毛膜羊膜炎を疑う所見には、母体発熱、母体頻脈、子宮圧痛、悪臭のある羊水・腟分泌物、白血球増多、胎児頻脈などがあります。血液検査がまだ大きく変化していなくても感染が進行している場合があるため、単一の検査値だけで否定してはいけません。

なぜ指による内診を避けるのか

指による内診を繰り返すと、腟内細菌を子宮内へ押し上げる可能性があります。陣痛が始まっていない前期破水では、必要性の乏しい指による内診を避け、腟鏡診を中心に評価します。

ただし、臍帯脱出、急速な分娩進行など、緊急に確認しなければならない状況では、臨床上の必要性を判断して診察が行われます。「前期破水では絶対に内診しない」と機械的に覚えるのも誤りです。

胎児頻脈が重要な理由

子宮内感染によって胎児体温や代謝が上昇すると、胎児心拍数基線が上昇することがあります。胎児頻脈は母体発熱、薬剤、胎児低酸素などでも起こるため、感染だけに限定せず、母体・胎児の情報を統合します。


予想問題25 早期母子接触の安全管理

出生直後の早期母子接触を行う際、事故を防止するために必要な観察と援助を説明しなさい。

解答例

母児双方の全身状態が安定していることを確認し、新生児の顔色、呼吸数、呼吸様式、筋緊張、活気、体温を継続して観察する。児の頸部を軽度伸展させて気道を確保し、鼻口部が母親の乳房や寝具で覆われない体位とする。母親の意識、疲労、出血、麻酔の影響も確認し、医療者が直接観察できる環境で実施する。

詳細解説

早期母子接触には、保温、授乳開始、母児関係の形成を支える意義があります。しかし、「自然なケアだから安全」と考えて観察を弱めてはいけません。

出生直後は、胎外呼吸・循環への移行が続いています。母親にも分娩直後の疲労、出血、鎮痛薬・麻酔薬の影響があり、自分だけで児の気道や全身状態を監視できない場合があります。

特に注意するのは、児の顔が乳房へ押し付けられる、頸部が強く屈曲する、鼻口部がタオルで覆われる、児が母親の身体から滑り落ちるといった状態です。

産科診療ガイドラインでは、出生直後から児の状態が落ち着くまでの時間帯は新生児の状態を十分に観察し、母児の状態に問題がないことを確認したうえで母子同室や母乳育児支援を行うことが重要とされています。

書いてはいけない答案

母親が抱いているので、児の観察は母親に任せる。

分娩直後の母親は、疲労や麻酔の影響により観察能力が低下している可能性があります。

母子の絆を深めるため、できる限り中断しない。

呼吸障害、体温低下、母体出血などがあれば、安全を優先して中断または方法を変更します。


予想問題26 妊娠高血圧腎症の総合事例

Aさん、35歳、初産婦。妊娠37週2日。妊婦健康診査で血圧168/112mmHg、尿蛋白3+を認めた。Aさんは「朝から強い頭痛があり、目の前が光る感じがする。みぞおちも痛い」と話している。顔面と手指に浮腫がみられる。胎児心拍数基線は150bpm、基線細変動は中等度である。

次の問いに答えなさい。

1.最も考えられる病態を答えなさい。
2.母体に切迫している重大な合併症を二つ答えなさい。
3.優先する観察と看護を説明しなさい。

解答

1.重症域高血圧を伴う妊娠高血圧腎症

2.例
子癇、脳出血、HELLP症候群、常位胎盤早期剝離、肺水腫

アセスメント

収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧110mmHg以上は重症域高血圧です。Aさんには強い頭痛、視覚異常、心窩部痛があり、子癇、脳出血、肝障害・HELLP症候群などの前駆症状を疑います。単に「血圧が高い妊婦」ではなく、母体の生命に直結する状態として迅速に対応する必要があります。

看護目標

Aさんはけいれん、脳血管障害、呼吸・循環障害を起こすことなく、母体状態と胎児状態を安定して維持しながら分娩へ移行できる。

観察計画

血圧、脈拍、呼吸数、経皮的酸素飽和度、意識状態、頭痛、視覚異常、心窩部痛・右季肋部痛、悪心、腱反射、尿量を継続して確認します。

血液検査では、血小板数、AST・ALT、LDH、ビリルビン、クレアチニン、凝固系を確認します。胎児については、胎児心拍数基線、基線細変動、一過性徐脈、胎動、子宮収縮を評価します。

援助計画

刺激を減らした環境を整え、ベッド柵や酸素・吸引の準備を行います。静脈路を確保し、医師・産科チームへ速やかに報告します。

硫酸マグネシウムが投与される場合は、膝蓋腱反射、呼吸数、意識、筋緊張、尿量を観察します。硫酸マグネシウムは腎臓から排泄されるため、尿量低下時には高マグネシウム血症の危険が高まります。呼吸数低下、腱反射消失、筋力低下などは中毒を疑う所見です。

記述答案例

Aさんは重症域高血圧を伴う妊娠高血圧腎症であり、頭痛、視覚異常、心窩部痛から子癇、脳出血、HELLP症候群が切迫していると考える。血圧、意識、神経症状、呼吸、尿量、血液検査、胎児心拍数を継続観察する。刺激を減らし、けいれん時に備えて安全を確保し、静脈路、酸素、吸引、緊急分娩の準備を行う。


予想問題27 子宮弛緩による産後出血

Bさん、29歳、初産婦。3,850gの児を経腟分娩した。胎盤娩出20分後、性器出血が急に増加した。子宮底は臍上2横指、右側へ偏位し、軟らかく触れる。Bさんは「尿が出そうだが、起き上がれない」と話している。脈拍112回/分、血圧98/62mmHgである。

次の問いに答えなさい。

1.最も考えられる出血原因を答えなさい。
2.膀胱充満が出血を増加させる理由を説明しなさい。
3.優先する看護を説明しなさい。

解答

1.子宮弛緩による分娩後異常出血

2.膀胱充満によって子宮が上方・側方へ押し上げられ、子宮筋の効果的な収縮が妨げられるため。

アセスメント

子宮底が高く、右側へ偏位し、軟らかいことから、膀胱充満を伴う子宮弛緩が考えられます。巨大児は子宮筋の過伸展を起こし、子宮弛緩の危険因子となります。

胎盤娩出後は、子宮筋が収縮して胎盤剝離面の血管を圧迫することで止血します。子宮が弛緩すると、この「生理的結紮」が機能せず、出血が持続します。

優先する看護

直ちに応援を要請し、出血量を測定・記録します。子宮底の高さ、硬さ、位置を確認し、施設の手順と指示に基づいて子宮収縮を促す援助を行います。

膀胱充満が疑われるため、排尿可能であれば排尿を援助し、困難な場合は導尿の準備・介助を行います。同時にバイタルサイン、意識、皮膚色、冷汗、尿量、ショックインデックスを確認し、静脈路、輸液・輸血、採血、子宮収縮薬などの準備を進めます。

ショックインデックスは112÷98≒1.14です。産科出血では血圧低下を待たず、頻脈と全身状態の変化を捉える必要があります。産科診療ガイドラインでも、出血量とともに血圧、心拍数、酸素化、尿量を確認し、SIが1以上の場合には輸血準備や高次対応を検討する流れが示されています。

4つの出血原因

産後出血の原因は、4Tで整理できます。

Tone
子宮弛緩

Trauma
産道裂傷、子宮破裂、血腫

Tissue
胎盤・卵膜遺残

Thrombin
凝固異常

本事例では子宮弛緩が最も疑われますが、処置後も出血が続く場合には、産道裂傷、胎盤遺残、凝固異常なども検索します。


予想問題28 前期破水と絨毛膜羊膜炎

Cさん、妊娠33週5日。前日の22時から水様性帯下が続き、翌朝入院した。体温38.2℃、脈拍108回/分、子宮に圧痛があり、羊水には悪臭を認める。胎児心拍数基線は172bpmである。

1.最も疑われる病態を答えなさい。
2.母体と胎児に必要な観察を答えなさい。
3.今後の管理について説明しなさい。

解答

1.臨床的絨毛膜羊膜炎

アセスメント

母体38℃以上の発熱に加え、母体頻脈、子宮圧痛、羊水悪臭、胎児頻脈が認められています。前期破水後の上行性感染による臨床的絨毛膜羊膜炎を強く疑います。

母体発熱だけでなく、子宮圧痛、羊水の臭い、母体・胎児の頻脈を関連付けて判断することが重要です。

観察

母体では、体温、脈拍、血圧、呼吸数、意識、子宮圧痛、羊水の色・臭い、子宮収縮、白血球数、CRP、乳酸、尿量などを観察します。感染が進行すれば、敗血症、循環不全、DICへ進む可能性があります。

胎児では、胎児心拍数基線、基線細変動、一過性徐脈、胎動を確認します。出生後の児については、呼吸障害、体温不安定、活気低下、哺乳不良など、新生児感染症の兆候を観察します。

管理

臨床的絨毛膜羊膜炎が疑われる場合は、抗菌薬治療とともに分娩を進める方向で検討されます。感染があるのに「33週だから、できるだけ長く妊娠を継続する」と考えるのは危険です。

帝王切開は感染そのものだけを理由に必ず行われるわけではなく、胎児状態、胎位、分娩進行などから分娩方法を決定します。ガイドラインでは、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断した場合、感染増悪と分娩進行を予測し、分娩誘発または帝王切開による娩出を検討するとされています。

記述答案例

前期破水後に母体発熱、頻脈、子宮圧痛、羊水悪臭、胎児頻脈を認めることから、臨床的絨毛膜羊膜炎を疑う。母体の敗血症と胎児機能不全に注意して、バイタルサイン、意識、尿量、血液検査、子宮収縮、胎児心拍数を継続観察する。抗菌薬投与と分娩準備を進め、出生後は新生児感染症の徴候を観察する。


予想問題29 妊娠糖尿病母体と新生児低血糖

Dさんは妊娠糖尿病に対してインスリン療法を受けていた。妊娠39週1日に4,180gの男児を経腟分娩した。児は生後40分から振戦と活気低下を認め、血糖値は32mg/dLであった。

1.児の状態を説明しなさい。
2.発症機序を説明しなさい。
3.必要な看護を述べなさい。

解答

1.糖尿病母体児に生じた症候性新生児低血糖

発症機序

胎内で母体高血糖にさらされたため胎児膵臓からのインスリン分泌が亢進していた。出生後に胎盤からのブドウ糖供給が途絶えた後も高インスリン状態が続き、血糖が低下した。

看護

まず血糖値と全身状態を速やかに再評価し、小児科医へ報告します。意識、振戦、筋緊張、呼吸、皮膚色、体温、哺乳力、けいれんの有無を確認します。

児が安全に経口摂取できる状態かを判断し、指示に基づいて授乳またはブドウ糖投与を行います。治療後は血糖値を再測定し、症状が消失したかを確認します。

低体温では糖消費が増加するため、適切な保温も重要です。ただし、「母乳を飲ませればよい」と授乳だけで終了せず、症候性で血糖32mg/dLという情報から、迅速な医学的対応が必要な状態と判断します。

巨大児に伴う周辺リスク

4,180gは巨大児に該当します。経腟分娩では肩甲難産、上腕神経叢損傷、鎖骨骨折などの分娩外傷も起こり得るため、上肢の動き、左右差、Moro反射、疼痛反応を観察します。

また、糖尿病母体児では低血糖以外に、呼吸障害、多血症、黄疸、低カルシウム血症などにも注意します。すべての異常が必ず発生するわけではありませんが、母体の糖代謝異常と出生後の児の適応を関連付けて観察します。


予想問題30 産後うつ病と自殺リスク

Eさん、32歳、初産婦。産後12日。夫は仕事で帰宅が遅く、実母は遠方に住んでいる。Eさんは「眠れる時間があっても眠れない。何をしても楽しくない。母親失格だと思う。私がいない方が、この子は幸せかもしれない」と話した。EPDSは14点で、自傷念慮に関する項目にも回答があった。

1.マタニティ・ブルーズとして経過観察してよいか。
2.優先するアセスメントを答えなさい。
3.必要な支援を説明しなさい。

解答

1.マタニティ・ブルーズとして経過観察してはならない。産後うつ病および自殺リスクを疑い、直ちに評価と支援が必要である。

アセスメント

産後12日で、不眠、興味・喜びの喪失、自責感、「自分がいない方がよい」という発言がみられています。単なる涙もろさや気分変動ではなく、産後うつ病と自殺念慮を疑います。

最優先は、自傷・自殺の危険性を直接確認することです。

  • 死にたい気持ちがあるか

  • 具体的な方法を考えているか

  • 実行する予定や準備があるか

  • 過去の自傷・自殺企図があるか

  • 児へ危害を加える考えがあるか

  • 幻覚、妄想、極端な興奮や混乱があるか

  • 現在そばに支援者がいるか

「自殺について聞くと実行を促す」と考えて曖昧にしてはいけません。具体的かつ落ち着いて確認します。

EPDSの位置付け

EPDSは産後うつ病を確定診断する検査ではなく、支援が必要な母親を抽出するスクリーニングツールです。総得点だけでなく、自傷念慮に関する項目への回答を重視します。

日本では産後2週間・1か月頃にEPDSなどを用いた評価が推奨されていますが、点数だけで「産後うつではない」と否定したり、「産後うつである」と確定したりしてはなりません。

必要な支援

自殺の具体的計画や切迫性がある場合は、一人にせず、安全を確保し、直ちに医師・精神科・救急対応へつなぎます。児の安全も同時に確保します。

危険が切迫していない場合でも、当日中に産科医、精神科医、助産師、保健師などへ情報を共有し、継続支援を調整します。本人へ「頑張って」「赤ちゃんはかわいいでしょう」と励ますだけでは不十分です。

睡眠、食事、授乳の負担、夫・家族の支援、経済状態、既往歴、妊娠中からの不安、出産体験を確認します。母親が休息を取れるよう、夜間授乳や家事を誰が担うかまで具体化します。

マタニティ・ブルーズとの違い

マタニティ・ブルーズは産褥早期にみられる一過性の気分変動、涙もろさ、不安、易刺激性などで、多くは短期間で軽快します。

一方、症状が強い、長引く、生活や育児が困難、自責感や希死念慮がある場合は、産後うつ病などを考えます。

幻覚、妄想、著しい混乱、興奮、児を害する指示を受けるといった症状があれば、産褥精神病の可能性があり、緊急対応が必要です。

記述答案例

産後12日で不眠、興味の喪失、強い自責感、希死念慮があり、EPDSの自傷項目にも回答があるため、マタニティ・ブルーズとして経過観察してはならない。自殺の具体的方法、計画、実行可能性、児への危害、幻覚・妄想、支援者の有無を確認する。切迫性があれば一人にせず母児の安全を確保し、直ちに医師・精神科へつなぐ。家族、保健師、地域支援者と連携し、休息と育児支援を具体化する。


予想問題21~30の最終整理

第21~25問では、単語を知っているだけでなく、定義・具体的場面・原因・援助を一つの文章にする力を問いました。

第26~30問では、母児の複数の情報を関連付け、生命に直結する問題から優先順位を決定する力を問いました。

今回の10問で特に覚えるべき臨床判断は、次の内容です。

新生児の蒸散
→ 濡れた皮膚から水分が蒸発し、気化熱として体熱を失う

仰臥位低血圧症候群
→ 妊娠子宮による下大静脈圧迫
→ 左側臥位へ体位変換

糖尿病母体児
→ 胎児高インスリン血症
→ 出生後の低血糖

前期破水
→ 上行性感染
→ 母体発熱、子宮圧痛、羊水悪臭、母児頻脈

妊娠高血圧腎症
→ 頭痛、視覚異常、心窩部痛は重症化の警告所見

子宮弛緩
→ 軟らかく高い子宮底、出血増加
→ 膀胱充満も確認

産後メンタルヘルス
→ EPDSは診断ではなくスクリーニング
→ 希死念慮があれば点数にかかわらず安全確認を優先


予想問題30問を収録する意義

この30問は、2026年度問題を単純に言い換えたものではありません。

公式問題で問われた知識から、

  • 次に隣接して問われやすい生理学

  • 助産師国家試験にもつながる正常値と基準

  • 母児の異常を早期に捉える観察

  • 病態生理に基づく看護判断

  • 具体性のある記述答案

  • 優先順位を付けた看護計画

へ発展させています。

公式問題の解説を読んで終わるのではなく、予想問題を自力で解き、記述した後に解説を確認することで、初見の事例へ対応する力を養う構成です。


参考資料・根拠

  • 2026年度東京都立大学助産学専攻科 筆記試験問題・問題Ⅳ

  • 2026年度東京都立大学助産学専攻科 模範解答・出題の意図

  • 日本産科婦人科学会「前置胎盤」

  • 日本産婦人科医会「胎児心拍数陣痛図の判読」

  • 日本蘇生協議会「新生児の蘇生」

  • American Academy of Pediatrics/American College of Obstetricians and Gynecologists「The Apgar Score」

  • WHO「母体・新生児の産後ケアに関する勧告」

  • WHO「出生直後の新生児ケア」

  • ACOG「Postpartum Hemorrhage」

  • Society for Maternal-Fetal Medicine「帝王切開後の血栓塞栓症予防」

  • こども家庭庁「産後ケア事業ガイドライン」

  • 法務省「出生届」

  • こども家庭庁「流産・死産等を経験された方への支援」